2024年の外国人政策展望_20240131
1:特定技能外国人の更なる増加
まず1つ目のトピックは、特定技能外国人の増加が更に加速することです。2019年4月に始まった特定技能制度は、制度開始から4年が経ち、この制度を使う企業が増えたため、外国人が日本で働く際の在留資格(就労系の在留資格)の中で最も人数が増えました。
具体的な数字を挙げると、特定技能の在留資格を持つ外国人は、2019年6月末の時点では僅か20人でしたが、2023年6月末には173,089人と実に8,600倍以上に急増しました。
一方で、すでに外国人が多く働いている技能実習制度は大幅に見直されることが決定しました。
この見直しは、多くの企業にとって、技能実習制度から特定技能制度へのシフトチェンジを促す要因となり、2024年は従来よりもさらに急速なペースで特定技能外国人が増加することが予想されます。
このため、今後は特定技能制度を活用することが、多くの企業にとって重要な経営課題になるでしょう。
2:特定技能の業種追加
2つ目は、上記のトピックとも関連しますが、特定技能制度に新たな分野の追加が検討されていることです。
報道によると、政府は現行の産業分野を拡大し、新たに自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野を特定技能1号の対象に追加するようです。現行の特定技能制度では、介護や建設業など12分野が対象となっていますが、人手不足に対応するために特定技能の解禁を要望する声は様々な業界から上がっています。
この改正案について、政府は年度内の閣議決定を目指すと報道されています。上記に該当する企業では特定技能制度による外国人労働者の受け入れについて、本格的に検討する時期に来たと言えるでしょう。
メリットばかりではなく、特定技能は数ある就労系の在留資格の中でも最も手続きが「面倒くさい」在留資格でもあります。
正直なところ、入管法や労働法についての知識が無ければ、ビザの申請書を完成させることも困難だと思います。
その一方で、特定技能はまだ発展途上の制度ですので、人材確保の手段として導入するのであれば早く動いた方が得策であることも事実です。
今後リリースされる最新情報については、随時このnoteで取り上げる予定です。
3 :経営管理ビザの要件緩和
3つ目のトピックは、外国人起業家のための「経営・管理ビザ」の許可要件が大幅に緩和されることで、個人的には非常に良いことだと思います。
この問題は以前から指摘されていたことですが、日本では外国人が起業するために取得しなければならない在留資格「経営・管理」の取得要件が厳しく、外国人起業家にとって使い勝手が悪いものとなっています。
日経の記事でも指摘されていますが、弊所で「経営・管理」のビザについてのご相談を頂く際も、事業所の確保や出資金の問題がネックとなり日本での起業を断念される方が少なくありません。
現行の基準では、外国人起業家は在留資格(ビザ)が許可される前から事務所を確保する(賃貸契約している)必要がありますが、事務所物件の賃料を負担しているのに事業活動はできないという、半ば嫌がらせのような状況となっています。
また、日本人や永住者の常勤社員を2名以上雇用するか500万円以上を出資するという条件についても、スタートアップ企業にとっては非常に厳しい要件です。
更に、在留資格の問題以外にも、日本で新しく会社(株式会社)を始めるためには、公証役場での定款認証に始まり、法務局での法人登記、税務署への開業届や給与支払事務所等の開設届、年金事務所への健康保険・厚生年金保険新規適用届など「面倒くさい」手続きが山のようにあります。
また、これは当たり前の話かもしれませんが、外国人起業家にとって最大の壁は日本語です。
特に大変なのは、金融機関で法人名義の口座を開設する際で、会社代表者の日本語能力に不安があると、ほとんどの銀行では口座開設を断られます。
日本人の事務員などが常勤で雇用されていれば開設してもらえるケースもありますが、代表者の日本語能力は厳しく見られていると感じます。
現時点では、入管の就労審査部門も具体的な情報を持っていないようですが、この緩和策により少しでも外国人起業家が増えることを期待しています。
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