入管法の刑罰について_20231105
1:在留資格・在留期間に関するもの
①入管法の罰則規定
入管法には70条以下に罰則規定が定められていますが、よくあるケースは不法残留(70条1項5号)と不法在留(70条2項)です。
(1)不法残留罪(70条1項5号)
在留期間の更新や変更を受けずに在留期間を経過して本邦に在留する者(オーバステイ)は、3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金となり、懲役刑等と罰金刑は併科されることがあります。
(2)不法在留罪(70条2項)
本邦に不法入国または不法上陸した者が、上陸後に不法に在留する場合も3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金となり、懲役刑等と罰金刑は併科されることがあります。
②偽装滞在者に対する罰則
2016年入管法改正により、偽装滞在者への取り締まりが強化されました。
この罰則により、偽りその他不正の手段により上陸許可を受けて上陸したり、在留資格の変更許可を受けたり、在留期間の更新許可を受けた場合等は3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金となり、懲役刑等と罰金刑は併科されることがあります(70条1項2の2号等)。
2:労働に関するもの
入管法の別表第1に記載された在留資格は、その外国人が行おうとする活動に基づいて許可されたものです。これらの在留資格で日本に在留する外国人は、許可された在留資格に対応する活動(例:在留資格「医療」の場合は、「医師、歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動」)以外の就労活動を行うことは認められていません(19条1項)。
この為、その活動(例:在留資格「医療」で在留する外国人が製薬会社の取締役に就任する等)は資格外活動(不法就労)とされ、処罰の対象となる可能性があります。
(1)不法就労罪(70条1項4号、73条)
主たる活動として資格外活動を行なっていると明らかに認められる者については、3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金に処せられます。また、主たる活動として行なっていると明らかに認められる場合でなくても資格外活動を行なった者は、1年以下の懲役もしくは禁錮または200万円以下の罰金に処せられます。懲役または禁錮と罰金が両方とも科せられることがあります。
(2)不法就労助長罪(73条の2第1項)
下記の①〜③に該当する者は、3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金に処せられます。懲役または禁錮と罰金が両方とも科せられることがあります。
①事業活動に関し、外国人に不法就労をさせた者
②外国人に不法就労をさせるために、外国人を自己の支配下に置いた者
③業として外国人に不法就労をさせる行為または②の行為を斡旋した者
法人の代表者または従業員などが73条の2の罪を犯したときは、その行為者を罰するほか、その法人についても300万円以下の罰金を科すことができると両罰規定となっています(76条の2)。
つまり会社の担当者だけではなく会社も合わせて罰金を科せられることがあります。
外国人の行っている活動が資格外活動であることについて知らなかった場合でも刑罰の対象となりますので要注意です(73条の2第2項)。
3:不法就労助長罪による検挙事例
京都新聞
ベトナム人3人を工場で働かせた男3人逮捕 入管難民法違反の疑い(2023年7月18日)
上毛新聞
不法就労助長、女に有罪判決 前橋地裁(2023年3月25日)
読売新聞
留学生らの不法就労助長か、ラーメンチェーン運営社長を逮捕…タイムカード使い分け(2022年11月17日)
日本経済新聞
ウーバーイーツ日本法人を書類送検 不法就労助長疑い(2021年6月22日)
埼玉新聞
川口の解体会社を摘発、不法就労助長の疑い クルド人の代表取締役、従業員ら逮捕/県警(2020年6月17日)