もともと特別なオンリーワン
幼稚園バス停は、乗車園児が長女含め三名。
誰が何番にバスに乗り込むか、というのが彼らにとって重要事項だったシーズンがあった。
そんな事で、と思うが当の本人たちにとっちゃ大問題、朝っぱらから大号泣かまされ登園拒否沙汰になる状況。特にうちの長女はこだわりが強く、親としてはウンザリだし、何より他の子に申し訳ない。
園の先生に相談したところ、そういった場面は教室でも見られるそうだ。この年齢あるあるなので、根気よく意識づけする事に。
(因みにだが、この「乗車順揉め」、先に降りたいがためあえて通路側に座りたいだの、対応についてお母さん同士で話し合いだの、場合によっては結構憂慮する事案であるらしい。保育の世界は恐ろしいもんだ。)
とにかく、彼女が同様の理由でぐずった際には、「順番は関係ない、一番じゃなくていい」と繰り返す事に。これが正しいのかはさておき、うぅむこれだから育児は難しい。
それから半年ほど経ち、かなり順番へのこだわりも薄れてきた模様。多少の我慢も覚えてきたらしい。子育てにおける悩みの解決手段は「時間」、という場合が多分にある。
そんな長女と、次女と、お風呂に入った際のこと。
その場の状況で洗う順番はいつも変わるが、湯船に一番に入るのはいつも決まって長女から。
しかしこの日は何となくの勢いで、わたしがそそくさと湯船に飛び込んだ。
体をざんぶとお湯に沈めながら
「ウェーーーイ
一番風呂〜〜
ウェ〜〜〜〜イ!」
ヘラヘラするわたしに、長女は間髪入れずに
「順番とか関係ない!!一番じゃなくていい!!」
と、叱咤。
真剣な声色に、思わず言葉を失う。
「そうだよねゴメン…。関係ないよね…。」
我が子に叱られ、シュン、とした33歳の母なのであった。
…ちゃんと我が子は成長している。
夫にこの事を笑い話として伝える。
「あれじゃん、ナンバーワンにならなくてもいい、特別なオンリーワン、みたいじゃん」
ひとしきり笑った後に、彼は長女に言う。
「でもね長女ちゃん、世の中には、順番が大事な時もある。
…一番にならなきゃいかん時もあるんだよ」
またこの人は。どこまで本気か分からない発言に、わたしは思わず
「まぁそうね、一番じゃなきゃ、て事はないかもしれんけど、
順番も大事だね、頑張らなきゃいかんとこで、ちゃんと頑張れる事が大事」と、適当に添えておいた。
そんな事があった翌朝の、登園バスに乗り込む直前。
長女と、同級生の男の子が揃って「一番に乗りたい」と言い出した。正々堂々とじゃんけんで決定。
結果、一番を逃した長女は大泣き、バスに乗らないイヤだお母さんと一緒がいいウワァアア。
皆さんを待たせた末、どうにかバスは出発した。ほんと、朝の時間ないときに、お手数をおかけしてすんません。