わたしは元気です
先日、よく聴くラジオ「zipfm」で「ジブリデー」と称し開園2周年のジブリパークとコラボ放送をしていた。丸1日、ジブリ作品をフィーチャーし、その楽曲を数多く放送する素敵な企画。
言わずと知れた「トトロ」の「さんぽ」も1日を通し何度もオンエアされた。この曲、作詞を担当されているのは、先日ご逝去された中川李枝子さんであることをご存知だろうか。絵本「ぐりとぐら」の作者である。
個人的に敬愛している中川先生が作詞されたと知ったのは、割と最近だ。わたしも子どもの頃から当たり前に口ずさんでいたこの曲、中川先生が生みの親であることを思えば、時代を超え愛され続けるのも大きく頷ける。
最近は5歳の長女もこの曲を熱唱している。
「でこぼこーじゃーみみーちー!
くものす、たっくさんーー!うれしっみっなーー!!」
曲の全体像を捉えているというか、まぁ雰囲気分からんじゃなく、諸々思うところはあれど、気持ちよく歌っているので良しとしよう。
大人になってこの曲を聴くと、歌詞の語呂が心地よく、具体的な情景描写の美しさから懐旧の情に駆られる。
ただ個人的に特に凄いな、と思うのは
「歩こう歩こう わたしは元気
歩くの大好き どんどん行こう」
この出だしである。
何というか、この世の真髄みたいなものを感じる。究極というか、悟りというか。
人生そのものを表している気がする。
健やかに歩みを進めていくこと、つまり生きていくこと。これが人生における、最高の状態ではなかろうか。
この曲が、人生の讃歌に聴こえてきた。
同じラインで、大人になって感じた名言。
「元気があれば何でもできる!!」
アントニオ猪木さんの言葉。
あまりに単純明快で、ともすると安直で短絡的な、考えるまでもない言葉だと思っていた。
人によってはひねくれて捉え、いや何でも出来るわけねーだろ、と受け取るかもしれない。
しかしこれを逆説的に
「元気がないと、何にも出来ない」
と捉えてみる。すると、納得なのだ。
生活は、最低限の健康の上で成り立つ。元気、気力がなければ、何も出来ないのだ。これはもう、その通り。
そして実は、心身共に健康でいられるのは決して当たり前ではない。
それは、とても恵まれていることなのだ。若い時はそれを財産として自覚できていなかった。わたし自身、様々な出会いや経験を重ねたからこそ至った境地。
だから、そういう意味でもう一度言おう。
「元気があれば、何でもできる!」
アントニオ猪木がどういう意図でおっしゃっていたか、まぁ少なくともここまで弱腰ではなかろうし、いや猪木ならすこぶる強気で豪快であれよというのが人々の思うところであろうが、それはさておきわたし個人として、この言葉は深みのある、人間生活の本質を突くものだと確信している。
(せっかくなので調べてみたら、猪木さんの壮絶な経験による死生観が影響しているらしい)
改めて「元気」というシンプルなところに立ち返ってみる。元気ってのは何も、ハツラツとかパワフルとかじゃなくて、「自分なりに前向きに生きている」と言ってしまえる気がしてくる。向上心を持つとか何か成し遂げるとかではない、普段通りでいい。それぞれでいい。
何でもできるって、ほんと「何でも」、よ。言うなれば、とりあえず生きていける。
元気がなかったらまじで何にもできんけど、少しでも気力があれば、どうにかなるよ、くらいに捉えてみるのだ。
微々たる気力を糧に、今日も生きている。だからわたしは元気。それで良いのではないか。
「さんぽ」に関し、元気に歩むのは最高の状態、と書いたが、それと同時に、「最低限、それでいいんだよ」とも思えてくる。
そういう意味でわたしは、「さんぽ」にしても猪木にしても、これら「元気」を語る言葉に、人生の真理を感じずにはいられない。