【A Pinch of Psychology】1:Handness-Lefty 左利きの心理学
今でこそただの飲んだくれオタクBBAの私ではあるが、紹介文にあるように一応はかつて心理学の研究者の端くれであり、幼き頃から心理学という学問に憑りつかれてきたような女であるので、時々はこうして心理学の話なぞをNoteにしていこうと唐突に思いついた。
A Pinch of Psychology と題して心理学ネタのNoteシリーズにしていきたい。「ひとつまみの心理学」(タイトル)ってな感じ。心理学関連のNote記事はいっぱいあるので、自分の経験や生活などをもとに気軽に読める心理学の話が書けるといいなぁと思っている。欲を言えば、オモシロおかしく書けるといいなぁとも思う。
で、第一弾。利き手の話。
タイトル、Handenessは、利き手のこと。Leftyは左利き。Left-Handedとも言うけれど、あ、左利きなのね!なんて言う時は You are lefty! とかYou are a lefty person!と言われることが多い。
ちょっと前に何故か3Note 記事、続けて左利きに関する記事を読んだ。多分、おすすめ!とかそういうので自動的に出てきたのだろうけど。私も左利きなのだ。なので左利きネタに迅速に反応してしまう。
イマドキはどうだか知らないが、私が子供の頃は左利きはかなりの割合で矯正されたものだ。ちなみに私は40代後半であるが小学1年生の頃。教師のすぐ横に机を特別設置され、左手を使おうとすると長い定規でバシッと叩かれた。恐ろしや。現代であれば大問題になる所業である。まぁそんな子供の頃のトラウマ経験は置いておいて。
利き手と心理学
何で利き手と心理学よ?と思われるかもしれない。心理学を専門的に学ぶと感情の動きだけではなく、心に影響するものに関しての知識を広げなくてはならないため、様々な分野の基礎知識を学ばなくてはならない。何といっても人間の心なんて複雑怪奇なものなのである。Sensory(感覚)、Perception(感知)、Motor Behavior(運動行動)、言語、脳の構造、オーガニックケミストリーや遺伝学、行動原理、学習と記憶、認知能力、などなど心理学といっても細かに分野分けされている。因みに私がかつて専門としていたのは、バイオニューロサイコロジーという分野である。である。日本語にすると大脳生理学とかそういう分野。
というわけで、なんで左利きの人がいるのか?両手利きの人は?どうして矯正できる人とできない人がいるの?遺伝的要因は?脳の機能や働きはどう関係しているの?利き手の違いで認知スキルや言語能力に差はでる?などなど心理学研究ネタには事欠かない事象なのである。
だがこんなにも色んな角度から研究されているトピックであるというのに、なんで左利きになるのか?という原因や理由ははっきりとは解明されていない。これからご紹介するように、いくつかの論説は存在するのだが、決定的理由というものは存在しないのである。人間とは複雑怪奇なものなのである(再)。
ちなみに最近の研究の主流な論調は、左利きは、遺伝学、生物学、環境の組み合わせがあることであると認識されている。
数字で見てみる利き手
心理学とは基本、数字の世界であるのでまずは統計からみてみたい。驚きの事実であるが、基本的に利き手の人口比というのは全世界、ほぼ同じくらいの確率で現れるのだという。全体の10%~12%。性差を見ると男性の方が20%ほど多いという統計がある。
お気づきであろうが、アジア圏の国は少ない。論説では、国の文化、特に礼儀作法に厳しい国ほど、左利きが少ない傾向にあるとある。多分、矯正されるからかなぁなんて思う。思うに、利き手矯正をした人だけに限った調査なぞしたら面白いのではなかろうか。もうあるのかもしれないけど。ストレスレベルとか、矯正由来の心的状況とか。
ただ、ここで強調しておきたいのは。この左利きのパーセンテージというのがほぼほぼ、全世界(色んな国々において)共通で同じくらいの発生率でること。つまりユニバーサルな現象なのである。
と、すると。Evolutional psychology。つまり、進化論に則った心理学において、利き手の研究というのは、文化、環境にとらわれない、進化論な何かがあるのでは?という新たな疑問が浮かんでくるのだ。どこの国でも、一定した数の現象が起こる、というのは非常に意味深いことなのだ。
ちなみに、ユニバーサルな傾向として有名なのは、世界的に見て、色んな国のデータを比較した時、鬱病患者というのは、北国に多い、寒い国に多いなどという事象があり。その研究ゆえに、季節性の鬱だとか、セロトニンの重要性などが発見されている。
つまりは、原因はわからんけど、なんか文化、慣習関係なく、一定の割合で特殊な状況が生み出されている、ということである。なんという奥の深さであろうか。
個人的なオモシロ話は、オフィスに7人スタッフがいた時、左利きが4人で右利きが3人という逆転現象がおこり、そんなこともあるんだなぁと思った。
ガクジュツ的に利き手の研究をする折に使われる手段は、行動観察(利き手を使う実験)やアンケートに答える方式の調査などが主流。1971年には利き手研究で有名なThe Edinburgh Handedness Inventoryなるものが作られ、とてもよくつかわれている。このテストは、日常の活動における人の右手または左手の優位性を評価するために使用される測定するもので、観察者が測定するものと、自己報告するものがあるのだけど、やはり観察者がいるものの方が精度が高いと言われている。
話を数字のことに戻そう。数字的にみると、左利きは早死にする人が多い、という私のような左利き人間にはちっともありがたくない説があるのだけど。これは、大多数の国で、大多数の人口が右利きであるので、街の作り(道路とか)だとか右利き視点により、作られているので、事故率が上がってしまうのだという。左利きあるある、で言えば、自動改札でもたついてしまう、というのもその例だ。これらのことは人間行動学、Psychology in Architectural Design/Architectural Psychologyなどという分野でよく研究されている。
左利きの人はストレスレベルが高いなどという研究もあるが、この「町の作りがそもそも右利き用」で作られていることを考えると、そらそうだ、と思える。
Left Is Right: The Survival Guide for Living Lefty in a Right-Handed Worldなる本があるのだが、これがなかなかに面白かった。右利きの世界に生きる左利きへのサバイバルガイド。1996年に発行された本であるので情報は古めではあるのだが、レビューを読んだりするに左利きの人に大絶賛されていた。
利き手の分類
数字の話をしたので次は、分類について。
右、左の2種類だけではないのである。まずは、右利き、左利き、両手利き1、両手利き2.の4種になる。ここでは便宜的に1と2を使ったのだけど、両手利き1は、Mixed-handedness or cross-dominance。つまり好みで右手左手を使い分けるタイプの両利き。例えばお箸は右、鉛筆は左とか。そして両利き2は、右も左もまったく同じように使える場合の両利き。
驚いたことに、両手利きはどっちの場合でも人口の約1%だそうなのだけど。思うに日本やアジア圏では、利き手を使い分けるタイプの両利きさんはかなりの数になるのではなかろうか。矯正の結果として。
更にはそこから文字の書き方によって2種類に分けられる。Inverted Writing。逆書きとでもいうのか、左利きの人によく見かける文字を書くとき『ペンを持った手を内側にして、紙を斜めにして書く』とでもいえばいいのか。↓こういう書き方。
このInvertedの反対は、Non-Inverted writingというのだけどざざっと分けるとこんな具合。
なんということでしょう。利き手なんてひと言で済ませがちだけれど、こんなにも種類があり、この違いにも注目して様々な研究が行われているわけだから、そりゃぁ原因だってやすやすとは見つからないはずである。なんせ、4タイプ、4バージョン。4x4で16種類!ほえ~。
ちなみに私はNoninvertな左利き。なので、ぱっと見で左利き?と聞かれることはなく、しばらくたってから、あ、左利きなんだ?と言われることが多い。まっすぐにペンをもって書くタイプなので紙を傾けて書いたりすることはない。英語、特に筆記体は右利き用に作られたものなのでInvinverted な左利きの人は紙を斜めにしたり、ペンの角度を変えて文字を書くことが多いらしい。
Inverted Writingって言葉をうまく説明できなくて、画像検索をして上の写真を見つけたのだけど、最初に出たのがこのオバマ氏写真。で、気になって他の写真やサイトをちょろちょろ見たらこんな一文があった。
ほ~ん。アメリカでも昔は左利き、矯正されていたのねぇ。と新たな事実を知った次第。
というわけでその(2)に続く。