読書手帖「星がひとつほしいとの祈り」原田マハ
2021年最初に読了した本は、2013年発行された原田マハさんの小説「星がひとつほしいとの祈り」
「椿姫」、「夜明けまで」、「星がひとつほしいとの祈り」、「寄り道」、「斉唱」、「長良川」、「沈下橋」の7編が綴られている。
それぞれに登場する女性たちはみな、特別な人たちではなくごくごく普通の身の回りに誰か当てはまりそうな、そんな人物たちばかり。かと言って、再度読み返すと、「椿姫」の香澄も、「夜明けまで」のあかりもひかりも、「斉唱」の梓も、「沈下橋」の多恵も由愛も身近にはいなかった・・
それでも、それぞれに登場する女性たちは自分のどこか身近な所に本当に実在するのではないかと思えるほどリアリティがあり、1.2ページめくるだけですっかり各物語の世界にワープしている自分がいた。
各物語の舞台は、大分県の小鹿田、愛媛県の松山、秋田の男鹿半島、新潟県の佐渡ヶ島、など東京以外にも登場するのだが、旅好きなマハさんらしいなぁと思う舞台ばかり。私も実際に訪れた場所もあれば、未訪の地もあるのに、不思議と全て自分にとても馴染深い土地に思える細かい描写が好きだ。知っているマイナーな駅名「夜明け」が出て来た瞬間、わぁ!と心の中で叫ぶ感じ。こんなに方言を使うと読みにくいよ!って思うくらいに土地の言葉をふんだんに使用し、途中からは自分もそこの土地の方言のイントネーションをイメージしながら読んでいるから、これはもうこの本にハマっている証。
仕事柄、マハさんが各地域を旅した際に色々と気になる言葉をメモしたり、地元の方に話しを聞いたり、情報集めしたのかな?と勝手な妄想をするのも楽しい。
書評家 藤田香織さんの解説の最後に書かれた言葉がすごく分かりやすくて、スンと落ちたので、一部記載します。
「私」であることを肯定していく姿を心強く思う。なにがあっても、どんなことがあっても、私は私を諦めたりしない。彼女たちを包む柔らかな光は、私の、そしてあなたの行く道をも照らしてくれると信じている。