自分で選ぶ権利|『にげて さがして』
『にげて さがして』ヨシタケ シンスケ 著
私たちが生きる世界にはいろいろな人がいて、それぞれが違う感情や言葉をもっています。それらは自分だけのものなのに、大きな流れや「みんな」に飲み込まれて、自分を大切にできなくなってしまう。
「逃げちゃダメ」と言われることが多い世の中ですが、どうするかは自分で決めていいし、自分で決めること。
「逃げずに戦うことの大事さを説くお話」がある一方で、「逃げることで新しい可能性に出会うお話」があってもよいのではないか。著者のそんな思いが込められた絵本です。
にげて さがして、うごいて うごいて――
ラストは、あなただけの物語に続きます。
「やさしいひとがやさしいままいられる」ために、「にげる」ことを教えてくれるということはとても大切なことなのではないだろうか?
わたしが大好きなヨシタケシンスケの新刊を、寝かしつけの時に4歳に読み聞かせた。
少しむずしいかなと思ったけれども、4歳は黙って聞いどんなていた。
翌日も、その翌日も、寝かしつけの本にこれをリクエストしてきた。
どんな気持ちで聞いているのだろう?
どんなふうに理解しているのだろう?
それは、案外早く、わたしの知ることになった。
ある日、夫が4歳に「相手がどんな気持ちになるか考えてみて」と言ったときだ。
4歳は「そうぞうする、ってこと?」と聞き返した。
自分のボキャブラリーになかった言葉を、自分なりに咀嚼して、自分のものにしていた。
本の力を感じた瞬間だった。
4歳が、この本から、「自分がどうするかは自分で決めることができる」というメッセージを受け取る日もそう遠くはないのだろう。
自分の身に起こることは、ほとんど選ぶことができない。
でも、自分の身に起きたことを踏まえて、その後の行動は、自分で決めることができる。
自分がどうありたいかは、自分で決めることができる。
ただ、「にげろ」と言うのではなく「さがしつづけよう」と呼びかけるこの本の、ほどよい優しさと、心地よいきびしさが、わたしはとても好きだ。
― 2021年4月8日 読了
《処方》
💊 逃げずに戦わないといけないと思っている
💊 すべての原因は「自分にある」と思っている
💊 自分には信頼できる人がいない
《印象的な言葉》
じぶんがかわるためにうごいてもいいし
かわらないためにうごいてもいい
そのひとは ほんのなかにいるかもしれない
《蛇足》
わたしはこの本を読んでもらいたかった人がもう一人いる。
夫だ。
4歳とこの本を読む機会があったらしく、とても気に入ったようだ。
よかった。
「にげて」だけでなく「さがして」という部分も夫に伝わることを願っているし、この絵本がすべて主体的に動いていることが伝わるといいな、そう思っている。