ペイシェントボイスカフェ(小腸がんステージ4)
日時
2024.6.2
ゲスト
野村 洋介さん
【イベント紹介】
患者と医療を繋ぐ活動の一環である。
薬剤師他、医療関係者が患者さんの実際のお話しを聴くことで、患者視点や想いを知り、臨床における薬剤師の発想を広げてコミュニケーション能力向上へ繋げていただくことを目的にしている。
また、参加者同士の交流の場としても機能している。
【自己紹介】
趣味:ランニング、犬の散歩
○病気になる前
ランナーとしての思い出
月間走行距離530km
自己ベストは2時間32分00秒
(結構一生懸命やっていた)
薬剤師として
糖尿病エンパワーメント(研修)
行動経済学を研究していた(公衆衛生修士)
家族:妻と愛犬トイプードル(写真を撮るとき、笑わせるのが大変だった)
○疾患発覚までの時系列
8月16日
がんが発覚
▼
生検後、9/27告知
▼(化学療法も挟みながら)
現在に至る
○発覚のきっかけ
2泊3日の韓国旅行
3日目までは楽しんでいたが・・・
8月14日の朝、ジョギングしてホテルに戻り、シャワー浴びて
そしたら胃が痛んだ
3-4時間後、体調良くなった
旅行中も腹痛が酷かった
>前日のチゲが原因か?(胃薬でも良くならず)
飛行機を待っている間、ベンチに横たわっていた
苦しい状況の中で飛行機2時間半も耐えた
▼
羽田着いた時には、手足も痺れていて顔面蒼白で動けない状態
>車椅子に乗って入国
>迅速に救急搬送
>東京にある労災病院に搬送
>チゲに当たって胃が痛いと伝えたが、医師は検査をしよう、と
▼
アセリオを注射して帰宅(8月15日の朝2時)
▼
4時頃激しい痛み
>タクシー
>労災病院へ(違うところ)
▼
すぐに入院勧告
▼
朝6時、研修医
腹水がある
>これはまずい?
▼
入院した
○血液検査:
深刻であることが分かった
>CEA-S,CA19-9基準値を大幅に超えていた
>レントゲンにて小腸に腫瘍があるのではないか?(小腸がんの疑い)
▼
薬剤師になってから小腸がんを聞いたことがなかった
>自覚症状がなく深刻になるケース、5年生存率20%
>自分は死ぬんだと思った
医師に泣きついた
「ここで死ねない!」
兄が医者
>電話をした
>冷静に判断をしてくれた
>親しい消化器外科に相談してくれた
>小腸癌の症例をもつ病院へ
▼
転院することになった
素晴らしい病院だった
兄と妻でセカンドオピニオン
▼
帰りの車で連絡:すぐに手術受けますよ
8月25日に転院をした
イレウス管
>チューブが苦しい(腹圧を下げる)
>のどにへばりつく
>30分おきに起きて、物理的に苦しい
▼
兄に紹介状を書いてもらって
PET-CTを撮った
>赤く光っているところが小腸限局しているところ
>画像を見る限り、転移はなさそう
>摘出しておしまい?
○8月25日転院
病院のホスピタリティに感動した
スタッフの一人一人、温かみがある
全ての職種のみんなに言える
病院が明るい
>以前の病院がひどかった
>そこに比べると天国
写真と詩があった
あと数ヶ月の命かもしれない
ただ廊下を歩くだけ
「好きなものがあるって幸せ 会いたい人がいるって幸せ 当たり前にやってきたことは ほんとは幸せのかたまり」
中庭が整理されていて
私にとって唯一の外界
四季を感じられるって素晴らしいことだと感じた
○8月29日に手術
医師から説明
>腹腔鏡下回盲部切除術
>小腸癌の疑い、ステージ3
>摘出して、大腸のところにがんがある
>摘出すると排泄が難しくなるから残した
>化学療法してから取りにいきましょう
▼
後は退院を待つだけだ
▼
9月5日に夕飯後
看護師さんが来て、退院の話し
しかし、高熱が出た
>縫合不全があった(大腸手術で縫合不全が起こる確率は1%程度のはずが)
小腸癌の発症リスク
2/10万の確率
○縫合不全
1週間程度たち、CRP改善
▼
退院の目処がたった
▽
9月20日退院
体重がとても落ちた
○退院後
化学療法を続けていく
9月27日確定診断(告知)
生検の結果
>転移の確率が高い
>小腸癌ステージ4
>心の準備をしていたが、いざ言われると本当にきついものがあった
*標準治療法がない
>大腸がんに準じた化学療法をやっていく
▼
私にはやるしか選択肢がない
>医師に聞いた「何年生きられますか?」
>「どのくらいの%で効きますか?」
>「20%くらいですかね(小声)」
化学療法の先生から
様々な説明があった
外科医の先生
>事実に基づいて冷静に話す
化学療法の先生
>すごくラフ、「気持ちが落ち着いていない感じですかね?」
>「でもノムラさん、根治を目指せる可能性があるんですよ」
>すごく救われた。ようやく耳が聞こえる感じ
○10月5日~化学療法開始
いろんな後悔をした
>やるべきことは今すぐやると決めて生活をしてきた
マギーズ東京:
薬局がこんな存在になれたら、と思った
ただ気持ちを吐き出させてくれる
本当に勉強になった
【外来化学療法】
XELOX療法+ベバシズマブ
オキサリプラチンとカペシタビンとベバシズマブ
8クール(1クール当たり3週間)
オキサリプラチン:末梢神経障害
とにかく痺れる、倦怠感もすさまじい。1週間立つのがやっと
>冷たいと痺れる
>午車腎気丸効果なかった
>点滴左腕、点滴打ったあと使い物にならないくらい
>副作用はあまりに酷く外出ができない
>しゃっくりが苦しい、2-3日ずっと(柿のへた煎じてもダメだった)
ベバシズマブ
>血栓症を起こしやすいので運動は続けないと行けない
>スピンバイクを購入(音がしないので、騒音はない)
▽
化学療法は上手く行った
CEA、CA19-9
>効果を実感したのは3回目の化学療法
>手術直後から化学療法受けて顕著に減少した
>急激に下がった方が効果が良い
▽
結果聞いて、嬉しくて病院の外に出た
>親に電話した
>生きられるかどうかにかかっていた
>このまま上手く行けば生きられるのではないかと希望が持てた
>最終的には4月には基準値内になった
>未だに信じられない
【病を経験してからの出会い・挑戦】
闘病生活の中で助かったのは周りからの支援
>闘病生活中facebookで全て伝わった
>職場の理解もあった
自分が挑戦したこと
>他の医療者に知ってもらいたい
▽
これまでと景色が違う
>患者にならないと分からない
>講演を通じてできることがあると良いなと思った
○2019年修士課程を出た
博士課程にいく予定だったが、仕事の両立が難しく迷惑も掛けられないため断念
化学療法中、和歌山県立医科大学の募集があって行くしかないと思った
▽
2月に受けて合格
>一番大きな挑戦だった
講演活動として
母校で講演
執筆についても連載
▽
療養生活の助けになった
自分の“居場所が”がなくなる感覚
できなくなっていく感覚もあったからできることがあると嬉しい
○4月23日化学療法終わり直腸にあるがんを摘出
開けてみるまで分からない
低位前方切除術
>無事に切除できた
*最初のがんから7%小さくなった
▽
生検でも、抗がん剤でがんが押さえられていたことが分かった
【薬剤師に期待すること】
病を乗り越える上で大切なことは「気持ち」の部分が大きかった
データやエビデンス、5年生存率20%と言われて嬉しい人は居ない
医療者は“高みの見物”に見えてしまう
>抗がん剤1クール目1週間程度入院した
>薬剤師が淡々の副作用の説明をしていく(患者としては辛い)、末梢神経障害が起きたら運転できないかも、あなたの足はルンバのようになってしまうかもしれません(紛れもない事実かもしれないが)
>これから始まる治療に対してその説明を受けて患者はどう思う?
>できればあなたになりたい、という気持ちだった。これから先運転できなくなったらどうしよう?など不安を抱えながら治療をしていく
▽
そのとき薬剤師がとるべき行動・言動は?
患者の気持ちに100%寄り添って欲しいなんて思っていない
>100%無理、その人にはなれない
▼
直腸のがんを摘出するために入院している最中
一人ハートフルな看護師さんがいた
>やることは他の人と同じ
かけてくれる「言葉」が違う
>がん患者さんを相手にするときに、大切にしていることは何ですか
>(即答)がん患者さんにとって、「完治」がない。目の前の人にせめて寄り添ってあげたい。そういう姿勢・言動に乗っているから伝わる。100%寄り添えないかもしれないけれど“姿勢”にリスペクトする
▽
薬剤師にも同じことが言える
>言葉の掛け方とか姿勢とか、そうして、そういう気持ちを醸成していくことが大切だと思う
【質疑応答】
小腸癌のお話しを聞いたのは初めてだった。突然の腹痛というのも驚いたというところだったが、思い返せば、という自覚症状はあった?
▽
まったくなかった。マラソンとかでお腹が冷えると似たような症状を繰り返していた。腸閉塞の様な。
仕事と患者会の両立はどうしていた?
▽
薬剤師現場からは離れているが、患者会とタッグを組むのはこれから先、進めていかなければならない。PPIにおいて、患者の声を拾って取り組んで行くのは今後していかなければいけない。医療制度が患者の声を拾わないと行けない。病院薬剤師と薬局薬剤師が同じことをしていて良いのか?調剤薬局の薬剤師は違う手法が必要では?と思う
がんの患者さんとして、一番どういう接し方されたら良い感じ方をされるのか?
▽
心の障壁が思った以上に大きいように思う。深いところにつっこむと地雷を踏むのでは?と思っている人が多い。薬局薬剤師が尋ねてくれた方が嬉しい。手足の方はいかがですか?塗るとき辛くないですか?と質問をしてくれた方が話しやすい。オキサリプラチンの痺れはどうやって乗り越えているのですか?と。
知ったかをするのではなく、“聞く”方が良い。
患者さんの気持ちに寄り添うことに、1つの正解ではなく繰り返し考えていくのを続けていくしかないと思うが、製薬企業が何をできるのかと思うが・・・
▽
RMP資材において、患者さんとの話し言葉例やチェックリストなどになっていると、ハートフルな例だったりすると良いのかなと思いました。
病院薬剤師と薬局薬剤師では向き合うフェーズも違うし、と気付いたが、抗がん剤における棲み分けは?
▽
病院では薬剤師外来が設けられている。その後診察となっている。フォローしてもらえるのは、薬剤師外来の先生になる。
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