ドラマー巡礼⑨: スティーブ・ガッド「The Gadd Solo」
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ドラマー名: スティーブ・ガッド
曲名: 「The Gadd Solo」(Live)
グループ名: スタッフ「Live at Montreux 1976」
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まず、個人的にドラマーのドラムソロは好きではありません。ドラムはあくまでも伴奏楽器。表に出すぎるのはカッコ悪い。でも、ドラマー界の生きる伝説、ドラムの神と崇められる半世紀もプロドラマーをされているスティーブ・ガッド様は別です。
7歳からドラムに触れて、軍楽隊をルーツに持つというガッドの土台にはルーディメンツ(マーチングバンドの小太鼓=スネアの基礎技術集)と呼ばれるスティック捌きの猛特訓があるはず。プレイのそこかしこにルーディメンツの応用があります。
1970年ぐらいにプロドラマーとして活動しはじめて、今2022年もバリバリのセッションドラマーとして現役で世界を回っているガッド。ドラマー界には早死にしてしまう神々もたくさんいるのに、何食べてどうやって健康管理しているんだろう。それが1番気になる。朝晩に味噌玉お湯に溶かしてお味噌汁飲んでるとかだといいのに。
さて、僕が選ぶ一曲は、迷いに迷って「スタッフ」というガッドが活躍した初期のバンドのソロプレイ。ここに既にガッドらしさも、曲を支える職人芸も全部詰まってます。
その後の、チックコリアとの「Samba Song」での演奏やスティーリー・ダンの「Aja」でも超絶テクニックも既にスタッフ時代にある。ポールマッカートニーやポールサイモン、クラプトンなど歌物の無数の共演で曲に寄り添う職人技もスタッフの演奏の中に既にあるのです。
ガッドは、ドラムマガジン1990年9月号にこんなことを言っている。「俺はこういう風に叩くんだ、なんて最初から決めつけていいアンサンブルはできない。ちゃんと周りを聴けば、誰だってフレキシブルになれる。オープンであることが何よりだよ、変な主張をするよりずっといい」(スティーブ・ガッド)
これは、あらゆる伝統や型を否定したインドの宗教哲学者のクリシュナムルティさんの言うことと酷似。
「知恵は本の中に見出すことはできません。それは蓄積したり、記憶したり、貯めこむことができないものです。知恵は自己の放棄とともにやってきます。オープンな精神を持つことは学習より重要です。」(クリシュナムルティ)
一度、大阪のビルボードに来ていたガッドの演奏を見た事がありますが、椅子から飛び跳ねるようにしてシンバルを叩くシーンや、手首を竹のようにしなやらに動かしながらライドシンバルを撫でように叩くシーンなど、動画で見たままのガッド印がとてもカッコよかった。そして、ガッドは観客よりも、一緒に演奏している人たちを常に凝視している。自分の役割を完璧に理解しているプロフェショナル。
ガッドのプレイは最高潮にまで「沸き立つお湯」です。ボコボコボコと。そして、沸いたお湯が冷めて、どんな人にもスッと喉を通る湯冷しの側面もあり、つまり「水」のようなドラマーだと思う。なので神です。
動画の中ほどはGadd Soloのリアル動画。古代ギリシャとかにいそうな趣きがあるかも。