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もし教室に、宗教2世問題を抱えた子がいたら?

宗教2世問題について考え始め、妻に「無知は罪なんだよ。」と言われたかもしかの前回記事はこちらです。

まずは、学校と宗教2世問題について調べてみることにしました。
色々と情報を集めてみたら、文科省よりも厚労省の方がわかりやすい指針を出してくれていました。

■わかりづらい文科省の通知(2022.11.10)

学校においては、宗教に関係することのみを理由として消極的な対応をすることなく、課題を抱える児童生徒の早期発見、早期支援・対応等に努めるとともに、人権擁護局通知に基づき法務省の人権擁護機関から情報提供を受けた場合も含めて児童生徒の心のケアを図る必要があると考えられる事案があった場合には、 学校内の関係者が情報を共有し、SCやSSWと共にチーム学校として、教育相談に取り組むこと。また、児童相談所等の関係機関と緊密に連携し、必要な支援を行うこと。
「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議の結果を踏まえた児童生徒の教育相談の取組について(通知)より

文科省から、各自治体の教育委員会への通知です。
要するに、教育相談で適切に対応してね。
スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)と協力してね。
児童相談所とも連携してね。
という趣旨です。

正直、この通知を出されたところで具体的に何をどうしたら・・・という疑問は解消されません。

適切にって、具体的に気をつけることは?
SCやSSWとの連携で、今までと違うことは?
そもそも、宗教関連の問題があったときって、連携先は児相だったんですね・・・。

恥ずかしながら、この問題が起きた時につなげさせていただく外部機関は一体どこになるのだろう?となかなかイメージがついていませんでした。

大阪府のサイトに原文が載っていましたので、詳しくはそちらから。


また、11月30日の「みんなの教育技術」でも宗教2世が記事になっていました。

この記事のポイントは、政府の設置した関係省庁連絡会議のまとめとして、教育委員会や教員にはこれから研修をして必要な知識と技能を身に付けてもらいましょう!ということです。

また研修が増えるようです。
しかも、その研修の方向性がいまいちこれらの通知やニュースからはわかりませんでした。

■厚労省が明確化「要するに、“虐待”かどうか」

さて、これらを受けて12月27日に厚労省から出された「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」は、非常にわかりやすいものでした。

保護者が信仰を理由に「児童虐待の定義に該当する」行為をしたら、一時保護等の措置をとる必要がありますよ、でも定義に該当するかは機械的に考えずに児童の側に立って判断しましょう、とあります。

その行為を保護者以外の者(教団関係者を想定しているのでしょうか)が教唆していたら、躊躇なく警察に告発を、と強い口調で書かれています。

要は「宗教問題に対峙する」というよりも「虐待問題として扱おう」という方針です。

そういうことであれば、どういうスタンスで見たらいいのかが非常にわかりやすくなります。

虐待問題だからこそ、つなぐ先は児童相談所なのでしょう。
SCやSSWは、児相につながる前後や、日常的なケアを一緒にやっていただくイメージでしょうか。

とはいえ、案件が膨らむ一方の児相さんに、さらに宗教2世の問題も対応してもらうというのは、業務が大変なことになるのでは・・・。
政府も体制強化をするそうですが、その内情をいつかもうちょっと知りたいものです。

■どんな事例が虐待?

厚労省のQ&Aでは主に4つ、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトが取り上げられていました。

これは、通常の児童虐待のカテゴライズと同じですね。内容の違いを見るために、資料から一部を抜粋します。

身体的虐待
・宗教活動へ参加することを体罰により強制する。
・宗教的行事に参加している中で、真面目に話を聞いていなかったなどの理由で叩く、鞭で打つ。

心理的虐待
・言葉や映像、資料により恐怖を煽る・脅す、無視する、嫌がらせする、児童本人の自由な意思決定を阻害する。
・童話、アニメ、漫画、ゲーム娯楽を一切禁止する、宗教団体等が認めたもののみに限る。

性的虐待
・教育と称し、年齢に合わない性的な表現を含んだ資料を見せる・口頭で伝える。

ネグレクト
・医療機関を受診させない、医師が必要と判断した治療行為(輸血等)を行わせない。
・奉仕活動や宣教活動等の活動(修練会、セミナー、聖地巡礼等)への参加のために養育を著しく怠る。
「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」より一部抜粋

宗教を理由にしていますが、やはり内容的には、教員がイメージする「児童虐待」からそう遠くはないように思います。

もちろん、実際の事例を踏まえた例になっているようで、ネグレクトの「治療行為」のくだりは、エホバの証人の輸血事件を踏まえたものでしょう。

■教員ができること

さて、となると教員としてすべきことは、背景に信仰があろうがなかろうが、児童虐待にあたる事例に気づいたときは、養護教諭やコーデネーターと連携して実態把握をし、管理職判断で児相に連絡してもらう、という形になるのでしょう。
流れとしては、他の虐待発見時と同じです。

その体制としての動きの中で、やはり子どものことを一番に考えるのが、子どもにとって一番近い大人である担任の仕事なのだと思います。

他の虐待案件でも子どもがそれを虐待と捉えていないことがあり(むしろ親を庇う言動をしたり…)、そこが難しいところなのですが、信仰が絡んでくるとより一層自覚しづらいように思います。

このあたりのケアについては、やはりSCさんのような心理の専門家と一緒に考えねばなりません。

また案件によっては、教員がそのご家族(あるいは本人)から「敵(サタン等)」と思われている可能性もあります。
「寄り添う」といっても、他の子たちとは違った気配りも必要でしょう。
確かに、このあたりは研修がないと厳しいです。

さて、この問題に取り組んでいる間にもクラスには当然他の子達もいるわけで・・・。定型の子も発達障害の子も、家庭に別の問題を抱えている子も、LGBTQの子もいて、当然膨大なカリキュラムもこなさなくてはならなくて・・・。

・・・やっぱり、どう考えても、人手が足りません!

毎回その結論になるのはどうかと思いますが、やっぱり最低限のマンパワーしかないと、トラブル時にはどうしても手が回らないですね…。

本当に、
文科省さん、
通知もいいのですが、
人を下さい。


できたら、教育相談ができて担任のフォローにもまわれる、コーディネーター的な人材を複数、常勤で配置してください。

どうか、おねがいします。