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いざという時の徹底ガイド。もし明日から働けなくなったら、どうする?

「ねえ、もし私が急に働けなくなったら、私たちどうなるの?」
蓮(れん)の友だちのお父さんが長期療養に入ったという話を、妻がママ友から聞いてきた。昔から心配性の彼女だけれど、このところ不確実な未来のことを思うと、余計に胸がざわつくらしい。

午後の日差しが和室の障子を薄く照らしながら、僕たちはいつものように卓袱台テーブルを挟んで向かい合って座った。蓮は外で遊んでいるので、今のうちに妻の不安を解消しないといけない。僕は台所から淹れたてのお茶を持ってきて、妻の前に静かに置いた。

「不確実なのは誰だって怖い。でも、あらかじめ公的な保障制度を知っておけば、無駄な心配をぐっと減らせるはずだよ」
そう言うと、妻は真剣なまなざしで僕を見つめた。
「そうよね。いったいどんな制度があるの?教えてよ」

僕は高校生にもわかるくらい、かみ砕いて説明しようと思う。まるで春先に咲きかけの花を、そっと守るように


「まずは、会社員やパートなど、いわゆる働いてお給料をもらっている人向けの制度から。『傷病手当金』って知ってる?」
妻は首をかしげて「なんとなく聞いたことはあるけど……」と答える。

「これは、仕事と関係ないケガや病気で働けなくなったときに、健康保険(会社で加入する被用者保険)から最長1年半、給料の約3分の2をもらえる制度だよ。もし急に入院が必要になったりした場合、しばらくの間はこれで生活費を補える仕組みなんだ」

妻はお茶を一口すすりながら、「知らないで損してる人もいそうね」と小さく息をついた。そう、データを見ると比較的に長期間で受給する人が多いので、短期間の場合にはこの制度を使ってない人が多そうだ。

「だから会社勤めの人はまず『健康保険に傷病手当金』があるって覚えておくといい。退職したあとでも一定の条件を満たせば受けられる場合があるんだ」


「でも病気やケガが長引いたり、後遺症が残っちゃったら? そこが一番心配……」
妻は声をひそめるようにして言う。蓮の友だちのお父さんも、治療が長くかかると聞いたらしい。

「そういうときは、公的年金の『障害年金』が助けになるよ」と、僕はエアノートをめくるように手を動かす。「国民年金や厚生年金に加入していれば、障害の重さに応じて1級から3級、もしくは一時金が支給される。精神の病気だって対象になるんだ。意外と知られていないけど、実はたくさんの人が支えてもらっている制度なんだよ。」

妻は意外そうな顔で「いったいどれくらいの人が受給しているの?」
「近年は推計で220万人もの人が受け取ってるよ。しかもかなり増加傾向にあるんだよね」

妻は少しほっとした顔をした。「それなら、もし働けなくなるレベルの障害が残っても生きていける仕組みがあるのね。」

「もちろん。ただし、初診日の証明が必要なんだ。特にメンタル的なものから起因した場合は、すぐに診断される訳でもないし、転院もするかもしれない。領収書など記録を保管しておくことも大事だね」実は半数以上が精神障害や知的障害が原因であるので、当事者になってからでは調べることもできないだろう。

「あとはケガや病気が仕事中や通勤中に起きた場合は『労災保険』が適用されて、休業補償給付とか障害補償年金が受けられる。普通の健康保険とは別に、お給料の8割程度が保障されるんだ。働く人なら誰でも、パートでもアルバイトでも基本的に加入している保険だからね」

「知らなかった……。学校の授業でも教えてくれればいいのに」
妻はため息交じりに言った。まったく同感だ。こういうことこそ、みんなが知る機会が増えたらいいのに、と僕も思う。


ふと、妻が茶碗を両手で包みこんだ。「でも、もしそれでも足りないくらい困ってしまったら……」

「そんなときのために民間の『就業不能保険』がある。つまり働けない時の保障。各社、保障内容や受け取り条件が異なるから、もし加入する場合は現在のライフステージを考えて慎重に検討した方がいいね」

はぁ…という妻のため息が聞こえる。「そこよね。保険って本当に分かりづらい。何を選んだらいいか理解できないんだもん」

「そうだよね。だからみんなFPに相談するんだと思う。でもFPってみんな同じ知識を持っていそうだけど、金融ってものすごく難しい世界だから不勉強で置いていかれてるFPも多い。そんなFPに相談行っちゃうと大変なことになるね…。後は最後の手として生活保護もあるよ」

「生活保護って、なんだかハードルが高いイメージがあったけど……」
妻はまぶたを伏せながら言った。

「確かに申請は勇気がいるかもしれない。でも本当に生活が立ち行かなくなったら、遠慮しなくていい制度なんだ。国があなたの命を守るために用意している仕組みだから。ほかにも高額療養費制度なんかもあるし、自治体によっては難病患者向けの助成や、重い障害を抱える人への手当もある。きっと蓮の友達のお父さんも、何かしら利用してるはずだよ。」

ふと縁側を見ると、外で遊んでいた蓮が帰ってきたのか、靴が揃えて置かれている。少し砂ぼこりをつけたまま、居間に入ってきて「ただいま!」と大きな声で言った。

僕はにっこり笑って言葉を続ける。「公的な保障なんて、自分には関係ないと思いがちだけど、誰だって明日はわからない。でも、あらかじめ仕組みを知っておくだけで未来への不安はだいぶ小さくなるんじゃないかな?」

妻はそんな僕に、穏やかな表情を向けた。「ほんとね。いざというときも、完全に孤立しないで済むんだって、知っておくだけでも安心かも。」

蓮が「あれ、みんなで何の話してるの?」と不思議そうに聞いてくる。
「将来の話だよ。ちょっとだけ大人の話。」

妻はもう一度、お茶をちびりと飲み干した。薄日が障子の向こうで優しく揺れている。
「私、知っといてよかった。ありがとう。少し安心したわ。」

そう言って、さりげなく僕のそばに座り直す彼女の姿を見て、胸の奥で小さな温かい光が灯るのを感じた。すべてが不確かだからこそ、誰かと分かち合い支え合う。そういう未来だって、きっと悪くない。


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