
迷子の回覧板
「回覧板が消えたんです!」
回覧板が行方不明になった日、家の中はまるでバタフライ効果が起きたかのように誰も予想しなかった方向へ転がり出した。
平日の夕暮れ時、淡いオレンジの光がキッチンの窓から差し込んでいる。今日は妻が子どもの授業参観の日だ。いつもより少し早めに出かけて、普段は在宅ワークが中心の僕が留守番をしていた。
が、妻が戻ってきた瞬間、玄関で思いも寄らない声を上げるのが聞こえた。
「えっ、回覧板が見当たらない…?」
玄関のドアを挟んで、隣人の奥さんの慌てたような口調が微かに漏れてくる。なんだか騒がしい。リビングにいた僕は、思わず手にしていたタブレットを置き、様子をうかがうべく廊下へ向かった。
妻と目が合った瞬間、その表情にはどこか申し訳なさや焦りが入り混じっている。隣人の奥さんは声を少し抑えながらも、はっきりとこう言った。
「夕方になっても次の家に回ってこないから、おかしいと思って。確かにそちらに回してたはずなのに」
「あ、はい…すみません。もしかしたら、うちのどこかに紛れ込んでるかも…」
そう答える妻の声は、どこか震え気味だ。やがて隣人の奥さんは「明日には地区の担当に返さないといけないから、よろしくお願いしますね」と念押しして帰っていった。パタリとドアが閉まると、玄関には気まずい沈黙が流れる。
「……まさか、なくしたの?」
僕がそう尋ねると、妻はため息まじりにうなずいた。
「多分、だけど……最近、家の中がいろいろ散らかってて。必要な紙も不必要な紙も混じっていて、どこに何を置いたかわからないの。子どもの学校プリントも、両親の介護施設のパンフも、保険関係の書類も、全部ごちゃごちゃ…」
どうやら、回覧板を一時的に置いていた場所に他の紙類が山ほど積み上がり、どこかに紛れ込んだかもしれないという。もしかしたらリビングのテーブルか、本棚の隅っこか、最悪の場合ゴミと一緒に捨ててしまった可能性だって否定できない。
「参観日で疲れて帰ってきたところに、こんなの…」
妻は半泣きのような顔でうつむく。その姿を見て、僕は「大丈夫だって、たかが回覧板だろ?」と肩をすくめた。だが、そのときはまだ「大したことじゃないよ」と軽く考えていたのだ。

実は妻には思い当たる節があったらしい。子どもの授業参観の前に、いくつか書類を探していたのだという。子どもの席番号や当日の連絡事項を確かめるプリント、それから娘の塾の案内資料、それに加えて妻自身の実家――つまり義両親の介護施設のパンフレット類だ。どれも大事な紙なのに、最近はテーブルや棚の上に積み上がっていて、何がなんだかわからなくなっている。
「このままじゃ、家の中だけじゃなくて人生の計画まで紛失しそう…」
妻は授業参観の帰り道、何気なくそんな言葉をこぼしたのだという。授業参観先で、ママ友たちと「学資保険どうしてる?」「将来の介護ってどう考えてる?」みたいな話題で盛り上がったことも、彼女の不安をあおったらしい。自分だけが何も整理できていない気がして、焦りを感じたのだと。
「紙の山を一掃しないと、生活自体が散らかっていく気がして」
そう訴える妻の声音は重かった。実際、両親の介護費用や子どもの教育費をどうするか――大事なことが決まらないまま、資料だけがどんどん増えている。
部屋の雑然とした状態は、思考の雑然にもつながるのかもしれない。最初は回覧板がなくなったなんて“ちょっとした事件”に思えたけれど、その裏には、妻が抱える大きな不安が存在していたのだ。

翌朝になっても回覧板は見つからない。妻は学校の行事やら家事やらでバタバタと忙しく、僕も在宅の仕事でオンライン会議が立て込んでいる。家の中をひっくり返して探す余裕がない。そこへ、隣人の奥さんがまたドアをノックしてきた。
「どうだったかしら、回覧板。今日中には返さないといけないからって、自治会から連絡きちゃったのよ」
隣人の奥さんの声はやたらと甲高く、イライラが込められている感じがした。妻が「まだ探してる最中で…すみません」と答えると、「そうなのねぇ。やっぱり、整理が苦手なのかしら?」と嫌味っぽい口調が返ってくる。近所づきあいなんてそんなものかもしれないが、妻にとってはストレス以外の何物でもない。
「もう、気が重い……。どうして私ばかりこんな目に…」
リビングのソファーで落ち込む妻を見ると、さすがの僕も申し訳なくなる。どこか他人事のように「大したことじゃないよ」と思っていたけれど、妻が本当に悩んでいるのは「回覧板そのもの」ではなく「情報管理の下手さ」と「将来の見通しが持てない」ことなのだ。
夜、子どもが寝静まったあと、妻はぽつりぽつりと涙ながらに言い始めた。
「今のままじゃ、両親の介護費用や子どもの教育費がどれだけ必要になるか、それがいつまで続くのか、全然把握できてないの。学資保険もちゃんと見直してないし、介護施設ってどのくらいかかるの? 利用できる制度は? もし回覧板をなくすくらいにバタバタなら、人生の大事な設計まで見失いそうで怖い」
珍しくしおらしい妻の姿を見て、僕はさすがに胸が痛くなった。なるほど、わかりやすい象徴が「回覧板紛失」という事件として表面化しただけで、妻は“未来”を失うことまで危惧しているわけだ。
「わかった。じゃあ、何かいい方法を一緒に考えよう」
そう言いながら、僕は夜のキッチンでお湯を沸かし、妻に温かいお茶を差し出す。すると翌朝、妻が意外なことを切り出した。
「ママ友の一人がね、“FP”に相談してライフプランを作ってもらったんだって」
翌朝のリビングで、妻は少し興奮気味に話し始めた。昨日とは違う表情をしている。どうやら、ママ友が子どもの習い事や学資保険、さらに自分の親の介護問題まで含めて相談できる“ファイナンシャルプランナー”を活用しているらしい。しかも、「保険の見直しとか資産運用のことだけじゃなく、必要な書類や情報の整理もサポートしてくれた」というのだ。
「へえ、そんなことまでしてくれるの?」
僕は正直、FPというと「保険商品を売りたい人」「投資のセールスをする人」というイメージが強かった。ところが、ママ友の話によれば、「何にどれくらいお金がかかるのか」「どのタイミングで支出が増えるのか」を一緒にシミュレーションしてくれて、必要書類はクリアファイルにまとめる方法までアドバイスしてくれるという。言わば“人生の書類整理”も含めた総合的なサポートをしてくれる存在らしい。
「夫婦でお金の話をちゃんとするきっかけにもなるし、情報も整理できるし、一石二鳥だって」
嬉しそうに語る妻に、僕も思わず乗り気になった。確かに、両親の介護費用や子どもの教育費、住宅ローンなど、目をそらしているだけじゃ将来の不安は消えない。ここで一度しっかりライフプランを立てるのも悪くないかもしれない。
「でも、FPってなんだか敷居が高そうだし、お金もかかるんじゃない?」
小さくそう疑問を口にした僕に、妻は笑顔で返した。
「ママ友は無料で相談できるサービスを使ったんだって。もちろん、有料のコンサルもあるけど、まずは保険の見直しとか、簡単な家計診断とか、そういうのなら気軽に相談できるみたいよ」
なるほど。お試し感覚で始められるなら、それほどハードルは高くない。僕はすぐに「よし、じゃあ予約してみよう」とスマホを取り出した。妻は「わたしも手伝う」と脇から覗き込みながら、近所で面談できるFP事務所を検索してくれる。
そんなこんなで、僕らはその週末にFPに相談する日程を組んだ。連絡をしてみると、想像よりもずっと親しみやすい担当者の声が返ってきて、「ライフプラン作成の前に現状をヒアリングさせてくださいね」と丁寧にアドバイスをくれる。夫婦で話を聞く予定を立てておいてよかったと、妻もほっとした様子だ。
そして、いざ“片付け”も本腰を入れて始めた。FPに見せるために、学資保険の契約書や住宅ローンの明細、介護施設のパンフレット、銀行口座の情報などを一つのファイルボックスに集約しようとする。引き出しの奥から、山積みになった紙類を一つ一つ仕分ける。きちんと分類してみると、意外に不要な紙は多いし、取っておかなければいけないのに放置していた資料も少なくない。

「……あれ? これって、なんだろう?」
妻がリビングの片隅で声を上げた。見に行くと、色とりどりのチラシ類に紛れて、やけに厚みのあるファイルが挟まっている。めくってみると、そこに見覚えのある文字が
「回覧板、あった……!」
そう、忘れ去られた場所に回覧板は無造作に放り込まれていた。ちょうど一週間ほど前に受け取ったとき、一時的にほかの書類とまとめてしまったのだろう。まさに「これがすべての始まりだった」わけだ。見つけてみればあっけないが、ここに至るまでに妻のストレスは相当なものだった。
「よかった。これで隣人の奥さんに何とか顔向けできるわ」
妻は大きく息をついて笑顔を浮かべる。回覧板を届けに行くと、隣人の奥さんも「心配してたのよ、あらよかったわ」と苦笑しながら受け取ってくれた。ぎくしゃくしかけた関係も、なんとか元に戻った。
「でも、これで終わりじゃないよね。私たち、本当に必要だったのは書類の片付けじゃなくて、もっと先の“人生の片付け”みたいなものだもん」
妻がそう言うと、僕は「だな」とうなずいた。たまたま回覧板で発覚した書類管理のズサンさ。それは未来のお金や時間、家族の予定すら散漫なまま過ぎ去っていく危険を示していた。僕らはFPに相談することで、「ライフプラン=人生の回覧板」のように考えられるんじゃないか、と気づき始めていた。
こうして回覧板紛失事件は、意外にも僕ら夫婦のライフプランに光を当ててくれた。小さな隣人トラブルが、家族の将来を再点検するきっかけになるなんて、誰が想像しただろう。整理整頓を進めるなかで「両親の介護費用はこうなるかも」「子どもの教育費は高校、大学でこれくらい」「自分たちの老後資金はどう準備する?」といった疑問も具体的に洗い出せるようになった。書類の山をクリアファイルにきちんとまとめるだけで、頭の中まで軽くなる気がする。
あとはFPとの面談を待つばかりだ。どんなサポートが受けられるのか、正直まだ分からない部分もある。でも、プロの視点で家計やライフイベントを整理してもらえば、いま漠然と抱いている不安をスッキリさせられるはずだ。
「これからは人生の回覧板を“紛失”しないようにしなきゃね」
妻が茶化すように言い、僕らは笑った。まさに、人生の道案内となるプランをきちんと作り上げておけば、近い将来や遠い将来にどんなイベントが回ってきても慌てずに済むだろう。

〜もしあなたもライフプランを“紛失”しそうなら〜
小さな回覧板がきっかけで、家族やお金、将来の計画を真剣に振り返ることになった僕たち。もし同じように「なんだか将来が心配だけど、情報も整理できてない」「お金の計画が雑然としている」と感じている方がいらっしゃるなら、**ファイナンシャルプランナー(FP)**に相談してみるのがおすすめです。
• 将来の介護費用がどのくらいかかるのか
• 子どもの教育資金や習い事にどれだけ予算を割けるのか
• 保険の見直しや住宅ローン、資産運用はどうするか
• ファイリングのコツや家族のライフイベント把握
こういったことを一度整理してみるだけで、未来への不安はずいぶん軽くなります。僕たちのように、回覧板一つ見失っただけで隣人トラブルに発展しかけるのはごめんですし、家族の大切なお金や時間を“紛失”しないためにも、プロの手を借りるメリットは大きいです。
「人生の回覧板」を紛失しそうなときは、一度FPを頼ってみませんか?
家族のこれからをスッキリと整理すれば、隣人との仲も自分の心も、きっと今よりもっと軽やかになるはずです。無料相談ができるオススメFPサービスがこちらです↓
↑担当は川原さん以外になる可能性があります。同FPさんと相談されたフォロワーさんからは高評価をいただいてます。一度お話しいただければ良さが伝わるはずです。

