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古賀小春はPに問う「声が付いてるからそのアイドルが好きなんですか?」【『U149』第7話 感想】

『U149』、第7話サブタイトル。
『声を持たないのに語るもの、なに?』
その答えはもちろん「動物」ではなく──「まだ『声』が付いていないアイドル」でしょう。

というわけで、こんにちは、一般プロデューサーのNDです。
担当アイドルは城ケ崎莉嘉さんです。

TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」、とんでもなく最高なので、日々が潤い世界が輝いて見える今日この頃ですね。

あまりにも破壊力が高すぎるため、毎週心の準備が必要なことで(私の中で)有名な『U149』ですが……
古賀小春が主人公となった第7話は、『アイドルマスターシンデレラガールズ』というコンテンツの根幹を問い直し、我々に「プロデュース」の本質を教えてくれる素晴らしい回だったと思います。

この回を視聴して、私は「古賀小春」というアイドルが大好きになりましたし、同時に「城ケ崎莉嘉」という自分の好きなアイドルがもっと好きになりました。登場していないのにです。

一体、どうしてそんな感想を持つことになったのか……
つらつらと書き綴ってみますので、どうか最後までお付き合いください!

0.ボイス総選挙という『デレマス』の特殊性

※以下、プロデューサーの方はご存知の内容ですので、1章まで読み飛ばしてもらって結構です!

はじめに『U149』のアニメのみをご覧の方に向けて、『アイドルマスターシンデレラガールズ(以降:デレマス)』の概要を説明します。

まず、『アイドルマスター』シリーズでは、アイドルをプロデュースするプレイヤーのことを「プロデューサー」と呼称します。
今回の記事における「プロデューサー」とは、『U149』に登場する頑張り屋なメインキャラクターの「プロデューサー」ではなく、現実の我々を指す言葉になります!

さて、デレマスには約200人(!)のアイドルがいますが、2023年現在でもそのうち半数の約100人には「声」が付いていません。担当声優がおらず、ボイスが設定されていないのです。
細かい歴史は省きますが、まずキャラクターは「声が付いていない」状態がベースで、そこから声が付いていく点が、他に類を見ないデレマスの特徴です。
基本的には、「総選挙」「ボイスアイドルオーディション」と呼ばれる投票イベントで上位に入ることが「声」をもらう条件になります。

投票イベントは「戦争」です……

この特徴はデレマスの面白い点でもありますが、競争的で何かと揉め事が起きやすい要素でもあります。
総選挙の前後のガシャの内容で有利不利があると荒れたり、総選挙を経由しない形でアイドルにボイスが付くサプライズがあると、そのアイドル以外の「声」がないアイドルの担当プロデューサーが不満を持ってしまったり……挙げればキリがありません。

「声」があるアイドルは、活躍の機会が増えて、ライブにも出演するようになるなど、華やかな舞台が用意されています。まるでシンデレラになったかのように。
一方、「声」がないアイドルは、どうしても活躍の機会が減ってしまいます。
そのため、「声」がないアイドルの担当プロデューサーは、高い熱量でそのアイドルを応援しており、いつか「声」が付く日を夢見ているのです。

普通にアニメやゲームを追っていると、「声がない」「声が付く」という事態は有り得ないため、想像が付きづらいかもしれませんが……
「あのキャラは運営に推されている」「うちの子は扱いが不遇」というレベルを超えた、生きるか死ぬかという切実な問題です。

1.「声」を持つシンデレラを目指して

古賀小春は、今回の『U149』アニメ化によって「声」が付きました。
(担当声優の小森結梨さん、小春の雰囲気にぴったりで素晴らしいです!)
対して他8名のメインキャラクターは、アニメ化前から「声」を持っていました。

つまり、小春は「声」がないアイドルの代表として抜擢されたという見方ができます。
その前提を踏まえた上で、第7話を振り返ってみましょう。

★第7話のあらすじ
お姫様に憧れている小春。
ある日、イグアナのヒョウくんのおかげで仕事が来た。
その後、迷子になった小春は、ひとりで動物達と対話する。
「小春がお姫様じゃないから助けてもらえないのかな」
「だってみんな、お姫様が大好きだから」
そう考える小春に動物達が問う。
「小春ちゃんは、どんなお姫様になりたいの?」
小春はひとつの答えに至り、ヒョウくんの助けで迷子も解消。
ラストシーン。小春は言う。
「まだお姫様じゃないんです。でも小春はお姫様みたいにみんなを幸せにするアイドルですよ」
流れ出す小春ソロの『お願い!シンデレラ』……
画面の前のオタク(私)は泣き崩れるのだった──

全編にわたってファンタジックな雰囲気が小春らしく、また小春が一歩を踏み出す姿が印象的な回でした。

しかし、このままでは疑問に思う点もあります。
・あの動物達って何だったの?
・タイトルの『声を持たないのに語るもの、なに?』って本当に何?

これらの問いは、このお話が「『声』を持たないアイドルの問題」を描いていると考えると、スッキリと解消します。

まず、小春の憧れる「お姫様」とは、「『声』を持つアイドル」のことを指しています。
そして、この話における「ヒョウくん」とは、「プロデューサー」──つまり現実世界の我々のことを指しているのです。

「ヒョウくんは小春のナイトなんです」

先に述べたように、小春は「『声』を持たないアイドル」の代表です。
「声」を持たない小春は、「声」を持つ「お姫様」に憧れている。シンデレラになりたいと願っている少女です。

物語冒頭、いつも一緒にいるヒョウくん(=プロデューサー)のおかげで来る仕事。
これは裏を返せば、小春本人の力では仕事を取ってこれないということです。「声」がないアイドルは出演機会が少ないという、厳しい現実を表しています。

インディゴ・ベルと共にステージへ

雨の中、東屋でヒョウくんとふたりきりの小春。
小春と小春を担当するプロデューサーは、「ふたりぼっち」とも呼べる状況です。

星が見えない雨の東屋にて

「ヒョウくん、みんなに会いたいね」
小春の漏らした言葉。これも「声」がないアイドルは、それだけで表舞台に立つ機会が少なくなり、他の「みんな」と交流できない現実を示しています。

「小春がお姫様じゃないから、助けてもらえないのかな」
小春自身も、「声」がないことが原因なのではと考えている……悲痛なセリフに聞こえてきます。

「小春がお姫様じゃないから、助けてもらえないのかな」

ここでヒョウくんが一旦小春のもとから去ります。
(小春を助けるためなのですが、胸が痛みますね……)
「ヒョウくんがいないと、小春……」
プロデューサーまでいなくなり、本当にひとりぼっちとなった小春は、白雪姫のように泣き崩れます。

ここで現れる動物達は、第三芸能課の仲間と重ねて描かれてはいるものの、実際には小春の空想です。
つまり、動物達との対話は、自分自身との対話ということになります。

動物達と繰り広げる「自問自答」

ここまで整理してみると、ここからの一連の会話の見え方が変わってくると思います。

鳥「どうして泣いているんですか?」
小春「小春、ひとりぼっちなんです。小春がお姫様(=「声」のあるアイドル)じゃないから」
犬「お姫様だとみんなに助けてもらえるのか?」
リス「なんでなんで?」
小春「だってみんな、お姫様が大好きだから」
子犬「どうしてみんな、お姫様が好きなの?」
小春「(※ハッとして)それは……どうしてだろう?」

小春は答えることができません。
「声が付いているから好かれるのか?」と整理すると、確かに違和感のある問いです。

「ねぇ、小春ちゃんは、どんなお姫様になりたいの?」
その問いには答えられます。小春が目指したいアイドル。それは──

そこでソロ曲『アイム・ア・リトル・プリンセス 〜お星さまにお願い〜』が流れ始めます。

優しく 温かく みんなを幸せにしたいの

「小春はそんな素敵なお姫様になりたいんです!」

最高のミュージカルシーン

その後、ヒョウくんのおかげでみんなに会える小春。
「ヒョウくんがみんなを連れてきてくれたんだね」
これは、この『U149』という作品に小春を連れてきてくれた、古賀小春担当プロデューサーの応援への感謝に他なりません。

作中のプロデューサーとの会話も印象的です。
P「ごめんな古賀さん、遅くなって」
小春「でもプロデューサーさん、小春のこと見つけてくれましたから」

そしてラストシーン。
「まだお姫様じゃないんです。でも小春はお姫様みたいにみんなを幸せにするアイドルですよ」

迷子の少女に手を差し伸べる小春

アイドルの魅力には、「声」が付いているかどうかなんて関係ない。
「声」が付いていなくたって、小春は「みんなを幸せにするアイドル」なのです。

こうして小春は「お姫様にならなければ」という一種の呪いを克服したのでした。

EDで歌われた『お願い!シンデレラ』の歌詞に、こんな一節があります。

誰もが シンデレラ
夢から今目覚めて

「声」の有無は関係ない。
アイドルは誰もがシンデレラであり、「お星さま」であり、我々に語りかけるものなのです。

●まとめ
・第7話は小春を通じて「『声』を持たないアイドル」の問題を描いている
・お姫様=声ありアイドル、ヒョウくん=プロデューサー(我々)
・小春の答えは「お姫様じゃなくてもみんなを幸せにするアイドル」
⇒声の有無など関係なくアイドルは輝いているもの

2.プロデューサー、貴方は「声」の有無で担当を好きになったんですか?

さて、実は本題はここからです!
ここまでは小春の目線から「声」の問題を考えてきました。
しかし、第7話が本当に伝えたいメッセージはこうです。

プロデューサー、貴方は「声」の有無で担当を好きになったんですか?

小春はなぜ自分自身との対話の中で「答え」を見つけられたのでしょうか?
さらに言えば、どうして今回のテーマを扱う主人公は、古賀小春でなければならなかったのでしょうか?
そこに我々への「メッセージ」が隠されています。

この回の最大のポイントは、小春が「苦悩」していないことです。

小春は最初から「まだお姫様じゃない」ことを自覚していますが、「早くお姫様にならなければ」という切迫した雰囲気はありません。

「小春はまだお姫様じゃないです~」

また、冒頭でヒョウくん(=プロデューサー)のおかげで仕事をもらった小春ですが、人によっては「自分ひとりでは仕事がもらえないんだ」と落ち込んでもおかしくありません。

しかし、小春は笑顔で仕事を引き受け、楽しそうにステージに上がり、存分に魅力を発揮して、満足げに控室に戻ります。

「みんなにこにこで、とっても楽しかったです~」

そうです。
小春はいつだって「お姫様」でなくても、ちゃんと輝いているのです。
楽しく活動して、みんなに笑顔を届ける……そんな「答え」を最初から持っているのです。
だから、誰の助けがなくても、「自問自答」の中で答えにたどり着くことができたのだと思います。

小春は確かにお姫様に憧れてはいますが、お姫様でないことを、声が付いていないことを気にしていない。
では気にしているのは誰なのでしょう?

そう、それは我々、プロデューサーの方です。
当のアイドル達は、「自分に声が付くかどうか」など気にしていません。それぞれがそれぞれの輝ける場所で生きています。
「声」の問題で争っているのは、我々プロデューサーだけなのです。

「貴方の好きなアイドルは、『声』が付いているから好きなんですか?」

私はこの回を観て、そう問いかけられた気がしました。
そして、自分の好きな「城ケ崎莉嘉」というアイドルのことを考えてみて、「絶対にそうではない」と断言できると思いました。
(もちろん、担当声優の山本希望さんは莉嘉への愛に溢れた素晴らしい方ですが、それはプラスアルファの魅力です)

自分が魅力的だと感じたアイドルを応援する。それがプロデュースの本質だったはずです。
今回は「声」にフォーカスしていますが、他の問題でも「本質」を見失ってしまう場面は多々あります。
運営の方針がおかしいとか、ファンが非常識だとか、好きなアイドルの出番が少ないとか……
古賀小春は、「アイドルはそんなことを気にせずに輝いている」という本質を、アイドルを好きになった初心を、我々に思い出させてくれるのです。

振り返ってみれば、作中のプロデューサーが小春を「見失う」という展開は示唆的です

ここまで見ると、小春の「純粋さ」が重要な物語だったことは明白ですが、純粋なら誰でもよかったわけではありません。

小春は、イグアナを怖がらず、その本質的な可愛さをすぐに見抜いて親しんでいました。

ヒョウくんにびびるありすが可愛い

他のアイドル達は、最初は怖がりながらも、触ってみると楽しい、という形で描写されていましたね。
イグアナは、「怖いけど触れてみると楽しい存在」──これは、「アイドル」の仕事と似ていると思いませんか?

他のアイドルでは、お姫様になれないことを「怖い」と思ってしまうかもしれませんが、小春はそこを飛び超えて「楽しい」という本質にたどり着けます。
だからこそ、今回のテーマを描くのにふさわしかったのだと思います。

3.おわりに

この回を通じて、古賀小春という、自分の世界を大切に活動するアイドルが本当に好きになりました。そして、何度見直しても各所で涙が止まらなくなってしまいます……
オタクの拙い感想でしたが、皆さんが『U149』という素晴らしい作品を鑑賞する上で、少しでも「こんな視点もあるのか」と面白がってもらえていたら幸いです。

今回は第7話のみの感想でしたが、『U149』はすべての回が本当にとんでもないですね! 毎週が神回です……!

全編の感想を語り出すと10倍の分量が必要なのでやめておきますが……
細かい点では、過去のアイマスへのリスペクトや対比を仕込んでいるのがいいな~と思います。
2話は2話といえばな「宣材写真」、4話の桃華は水瀬伊織との対比の意識を感じますし、今回の7話は我那覇響の回をリスペクトしていますね。

『アイドルマスター』第16話でも動物がたくさん出てきます

あと個人的には第6話でちょこっと莉嘉が出てきて嬉しかったです……本当にありがとうございました……!

最終話までドキドキで目が離せませんね!
最後まで持ってくれ心臓……!

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それではまた次回のかもしれない考察でお会いしましょう!

※記事内に用いた画像は、すべて考察を目的として引用しています。
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