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貴方と私がLiella!を愛する理由について【世界一長い『ラブライブ! スーパースター!!』考察】
貴方は夢を叶えているでしょうか?
画面の向こうの「スーパースター」のように、キラキラ輝いていますか?
答えはノー。それが大半だと思います。
子供の頃は自分を特別な存在だと信じて、しかし挫折と共に凡庸なのだと思い知り、何も選び取れずに妥協しながら、その在り方を「大人」と呼んでいくもの。
高坂穂乃果が率いたμ'sのような、華々しいサクセスストーリーはあくまでアニメの中の話。自分には縁がない。あんな風に輝けるわけがない。
しかし、『ラブライブ! スーパースター!!』は教えてくれます。
そんな私達にも、夢を叶えて輝く方法があると──
というわけで、凡庸オタクのNDです。平安名すみれさんが好きです!
今回は私が人生で一番好きなアニメ、『ラブライブ! スーパースター!!』について考察していきます。
気合いが入りすぎて長さがギャラクシーなのですが、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです!
0.ラブライブというスバラシイ作品群
『ラブライブ! スーパースター!!』は、ラブライブシリーズの4作目のアニメです。
ラブライブでは「夢と努力」を共通テーマにしており、他3作品は以下のような内容を描いていました。
①『ラブライブ!』
「みんなで叶える物語」
⇒仲間と一緒に努力をすれば夢は叶う!
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②『ラブライブ! サンシャイン!!』
「みんなで叶える物語」
⇒頑張っても夢が叶わないことはある。それでも夢を追う価値はある。
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③『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』
「あなたと叶える物語」
⇒夢は大切だけど、無理に頑張る必要はない。
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※ざっくりの紹介です。詳細が気になる方は該当記事をご覧ください!
「ラブライブって、女の子がキャッキャしてるだけのアニメでしょ?」という舐めたオタクの頬にストレートをぶっ放すような、力強いテーマ性が全作品にあります。
キラキラした「夢」の裏にある現実、そして「努力」の価値や手法について、これ程のパワーで描いている作品は他にありません!
さて、スーパースターのキャッチフレーズは「私を叶える物語」です。
冒頭でも書いた通り、「才能のない『私』が現実的に夢を叶える方法」を描いた話になっています。
より具体的に言えば、「μ'sに憧れて頑張ってみたけど全然ダメでした。そんな私がどうやったら輝けますか?」という問いへの回答です。
まさに夢のような話ですが、安心してください。
リンク先で壺とか水とか缶とかを買わせるわけではありません。アヤシクナイデス。
では、その方法とは?
キーワードは「後ろ向きな連帯」です。
1.かのんはなぜ第1話で歌えたのか?
スーパースターの登場人物は、1期はもちろん、3期に至るまで全員が「私」をひとりで叶える力など持っていません。
私達と何ら変わらない、ただの一般人です。
「だから仲間と一緒に『みんな』で頑張るんでしょ? よくある話じゃん」
結果だけ見れば、確かに仲間と頑張る物語ではあります。
でも「よくある話」と片付けるのは早計です!
μ'sは、輝く星々が集い、円陣を組んでラブライブ優勝に突き進むような、「前向きな団結」で夢を叶えました。
しかし、Liella!は「ひとりじゃ何もできない」と泣きながら、おそるおそる手を繋ぎ、震えながら歩いていくのです。
そんなチームの在り方は初めて見ました。
本作の主人公、澁谷かのんが最も象徴的です。
1期の冒頭を振り返りながら、詳しく説明していきます!
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かのんには「歌でみんなを笑顔にする」という夢があります。
しかし努力も虚しく、結ヶ丘女子高校の音楽科に不合格となり、普通科に進学します。
かのんは「いざという時に声が出ない」という致命的な弱点を抱えており、試験の際も歌えなかったのでした。
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作中で、音楽科は「特別」の象徴であり、普通科は「普通」の象徴となっています。
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かのん「きっと才能ないんだよ。歌はおしまい」
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そんなかのんに、可可は言います。
「可可ともう一度だけ始めてくれませんか?」
すると、かのんは不思議と歌えます。
自分でもびっくり、『未来予報ハレルヤ』のライブシーンです。
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でもこのシーン、なぜかのんは歌えたのでしょうか?
歌が大好きな気持ちが爆発して歌えるようになったぜ!という、ふわっとした理由ではありません。
この謎は3話を観ると解けます。
新曲を作ったかのんは、歩道橋の上で可可から「歌ってください。この街に響かせましょう」と呼び掛けられます。
しかし、ここでかのんはなぜか歌えないのです。かのん自身も困惑します。
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「大好き」の気持ちで歌えたのなら、スクールアイドルに前向きになったこの場面でこそ気持ちよく歌えるはずですよね。
では、1話と3話で何が違うのか?
それは「誰のために歌おうとしたか」です。
3話で可可は「この街に響かせましょう」と言いました。
それは無理です。かのんには、街とか審査員とか観客とか、そういう「みんな」のために歌う力はありません。
それができるのなら、そもそも音楽科に合格しているはずです。
でも、1話のかのんは「可可ひとり」のために歌おうとしました。
可可の持つスクールアイドルへの熱意を知り、「可可と」始めませんかと言われて、「可可のため」だけに。
そんな少しの頑張りなら、「普通科の生徒」にもできる。
みんなの前で輝けなくても、私を求めてくれる貴方ひとりのためなら、少しだけ輝けるかもしれない。
可可ひとりのためだったから、かのんは『未来予報ハレルヤ』を歌えたのです。
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3話のクーカーのライブを思い返してみてください。
「歌えない」と泣いてしまうかのんに、可可は言います。
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可可「かのんさんは私にとってのスターなんです」
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かのんは夜空で輝きを放つスーパースターではない。
しかし、可可ひとりにとっての「星」にはなれるかもしれない。
それに気づいたかのんは思います。
かのん「歌える、ひとりじゃないから」
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そして始まる『Tiny Stars』──
小さなふたつの星が手を繋ぎ、互いのためだけに煌めいたのでした。
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かのんは見事に歌い上げて、ライブ後には「(サニパに負けたけど)全然後悔してないんだ」と、自己実現の喜びを知りました。
このかのんの光り方こそ「後ろ向きな連帯」です。
ひとりでは何もできないことを思い知り、打ちひしがれた上で、せめて「貴方のため」というミクロな世界で光を放てるよう頑張る。
これなら、私達にも頑張ればできる気がしてきます。
2.夜空に描くスーパースター
こうして、かのんは「可可のために」歌うことができました。
詳細は後述しますが、これは他のメンバーにも同じことが言えます。
1期生5人は、ひとりで「私」を叶えることはできません。
しかし、私を求めてくれる貴方ひとりのためなら、少しだけ輝ける。
そんな「後ろ向きな連帯」をするとどうなるか。
5つの点を「結び合わせて」、ひとつの大きな星が出来上がります。
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5人が描いたこの星は、ひとりで輝く星よりも、遥かに価値のある「スーパースター」だと思いませんか?
ワタシはスバラシイと思いマシタ(唐突可可)(申し訳ありません)(葉月恋のスタンプ)
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夢を叶える物語は定番ですが、「こんなの無理じゃん」「結局才能ね」「たまたま上手くいっただけ」と思ってしまう作品が多いです。
しかし、Liella!が描くのは現実的な解答です。
そこに私は本当に感動しました。
ここまで来ると、円陣の掛け声の意味も見えてきます。
ソングフォーミー=私を叶えるために
ソングフォーユー=貴方ひとりのためなら少し頑張れる
ソングフォーオール=自分と仲間を結んで星を作る
という表現になっているのです。
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「これが現実的な輝き方って言われても、『私』を求めてくれる人間がいないから意味ないんですけど?」
そう思う方もいるかもしれませんが……
私達にとっての可可は、この『ラブライブ! スーパースター!!』という作品そのものだと思います。
この作品全体が、貴方の好きなキャラクターが、物語が、私達のために強烈に輝き、「光って!」と叫んでいるように感じてなりません。
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「この物語の主人公はキミさ 光れ光れ」
たかがアニメだと言ってしまえばそれまでですが、スーパースターの物語からは、「『輝きたい』と思っている人の背中を押すんだ」という本気の熱意が伝わってくるのです。
『ラブライブ! スーパースター!!』、本当にありがとう…………
3.私の名前は平安名すみれ
ここからは、1期生メンバーがLiella!に加入する経緯を追いつつ、「後ろ向きな連帯」を具体的に考えられればと思うのですが……
すみません、平安名すみれさんを贔屓しているので、彼女だけ単独で立項します!
すみれは「華やかな有名人(=スーパースター)になりたい」と強く憧れている少女です。実際、そのための努力も惜しみません。
しかし、自分にはその「華(=才能)」がないことを十分すぎるほど理解しています。
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すみれ「どんなに頑張っても真ん中で輝くことはできない」
スカウトを待って原宿をウロウロするすみれの姿は、あまりにも痛々しくて心に刺さりますね。俺じゃんと思ってしまう。
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そんな「頑張っても駄目なんだ」の気持ちを、一番理解しているのはかのんでした。
かのん自身が、努力しても輝けず、可可のために光ることで今があるからです。
かのん「すみれさん、貴方をスカウトしに来ました」
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「スカウトに応える」という行為は、まさに「私を求めてくれる貴方のためなら」という在り方ですね。
こうしてすみれはスクールアイドルを始めるのですが、本当の試練は10話『チェケラ!』に待っていました。
スクールアイドルとして舞台に立ったすみれですが、本質的には何も変わっていません。周囲からの評価は低いままで、「センターに相応しくない」とまで言われてしまいます。やめてあげてよ本当に(心の声)
すみれの夢、「叶えたい私」は、センターに立たなければ始まりません。つまり、まだすみれは輝けていないのです。
「私はセンターに立てない」と塞ぎ込むすみれに、「冠」を差し出したのは可可でした。
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可可「受け取りなさい。私が想いのすべてを込めて、貴方のために作ったのですから」
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世間に評価されるスーパースターではなくとも、私(可可)が貴方(すみれ)を認めているのだから、私のために歌ってくれればいい。
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すみれはその言葉を燃料に奮起して、『ノンフィクション!』(注:神曲)でセンターを務め上げ、ラブライブの予選を突破する──つまり「輝き」を世間から認められたのです。
これはまさにノンフィクション、現実的な解決策でした。
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4.1期生メンバーの加入
最初に普通科は一般人で、音楽科は才能ある人間の象徴と書きました。
かのんとすみれが「後ろ向きな連帯」で輝いたのは紹介した通りですが、Liella!には(元)音楽科のメンバーがいますよね。
彼女たちは最初から輝いているのでは? なぜLiella!に加入したのか?
ここで経緯を確認してみましょう。
●嵐千砂都
千砂都はダンスが得意な「音楽科」の生徒でしたが、それは「貴方のため」という輝き方をすでに身に着けていたからです。
6話にて、千砂都の原点が語られます。
千砂都「いつかかのんちゃんを助けられるようになりたい」
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千砂都は元々いじめられっ子で、スターと呼べるような存在ではありませんでした。
しかし、助けてくれたかのんへの愛が重く想いが強く、幼い頃から「かのんのため」に頑張るという在り方を見出していました。
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しかし、かのんは「私も」と語り、「貴方のため」に輝く在り方が肯定される
つまり、千砂都は最初から特別な輝きを持っていたわけではなかったのです。
●葉月恋
恋は創立者の娘であり「音楽科」の生徒でしたが、彼女もまた特別なスターではなく、「頑張っても輝けない」側の人間だということが判明します。
家と学校は危機に瀕しており、その窮地をひとりで救うことはできませんでした。
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恋は常に「亡き母のため」という想いで動いていますが、これは今までの「貴方のため」とはニュアンスが異なります。
かのん達が輝けたのは「求められて、それに応える」という構図によるものであり、恋の場合は使命感に近いです。
かのんのおかげで過去の真実が判明した後、かのんは恋に手を差し出します。
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ここで恋は初めて「誰かに求められる」ことになり、自分の夢(=この学校で想いを繋いでいくことは、亡き母の想いと向き合った結果、本当の意味で自分自身の夢になった)のためにスクールアイドルとしてステージに立つ決意をします。
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●唐可可
普通科生ですが、最後に可可について。
可可は少し特殊で、「貴方のため」という連帯のスタート地点であり、最初に「私のために歌って」と手を差し伸べた存在として描かれています。
この「貴方のため」システムには、最初のひとりの「燃料」がどうしても必要不可欠です。
それが可可のスクールアイドルへの「大好き」という想いでした。
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ちなみに、作中で最もアツく「夢」を持っているように見える可可ですが、実はひとりだけ「夢」を持っていません。
この話は別途説明が必要なので、2期・3期の記事で詳しく語ります!
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5.制服が意味するもの
さて、スーパースターは「才能がない一般人でも輝ける方法」の物語だと紹介してきました。
しかし、そもそもこの世に「天才(=スーパースター)」などいるのでしょうか?
スーパースターの結論は「いない」です。
その価値観が表れているのが制服です。
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普通科と音楽科は、以下のような象徴になっています。
普通科:一般人・才能がない・輝けない
音楽科:天才・特別・スーパースター
まず、クーカーが「貴方のため」の輝きで、「普通科でも輝ける」ことを示しました。
次に、千砂都が音楽科から普通科に移り、わざわざ制服を着替えてスクールアイドルを始めます。
先ほど確認したように、千砂都は本当の意味で「特別」だったわけではありません。「かのんのため」に頑張り、輝いていたことが明らかになります。
つまり、「特別」だと思っていた音楽科の生徒も、普通科の生徒と変わらない悩み方で、輝きに手を伸ばしていたのです。
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ふたりとも「制服の変化」が強調されている
最終的に、学園全体の普通科と音楽科の壁も無くなり、ついには制服も自由に選べるようになります。
この壁の崩壊が意味するのは、「この世にひとりで輝けるスーパースターなどいない」という真実です。
最初に登場人物は全員「普通」と言いましたが、そもそもこの世界の人間はすべて「普通」なのだと示しているのですね。
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この「全員普通」という確認は、『ラブライブ!』シリーズの根底にある重要な要素で、このアニメが「私(=我々)」の物語だということを強く示しています。
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千歌もそれを肯定し「普通の子なのにこんなに輝いている」と思うところから始まります。
6.スーパースターを破壊するスーパースター
ようやく光を手にしたかのん達。
5人で輝けるようになって本当に良かった……
そんな美しい輝きを、ぶっ壊すアニメがあります。
なんてやつだ! 一体どこの誰がそんなことをするんだ?
その名も『ラブライブ! スーパースター!!』です。
さて、スーパースターが本当にすごいのはここからです。
やっとの想いでLiella!を結成した直後から、すぐに強烈な自己否定が始まります。
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11話『もう一度、あの場所で』を観て私はマジで引っくり返りました。
ちょっと振り返ってみましょう。
この回では、かのんと千砂都の母校である小学校で、Liella!がライブをすることになります。
しかし、小学校のステージは、かのんが「みんなの前で歌えない」というトラウマを抱えることになった、忌まわしき過去の象徴です。
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「貴方のため」の連帯による輝きの再確認
同時にラブライブ東京大会の課題が「独唱」であると発表されて、自然とかのんが担当する流れになります。
独唱とはいえ、5人でステージに立つのだから、かのんは問題なく歌えるはずです。
しかし、千砂都は「このままじゃ良くないよ」と言い出します。
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自然と「これダメだよね」と感じさせるスバラシイ演出
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「結果的に歌えるなら同じ」という話ですが、千砂都は……
千砂都「Liella!が始まったのは、かのんちゃんがあの時歌ったから。可可ちゃんの想いに応えたから」
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千砂都「可可ちゃんとふたりでステージに立った時、かのんちゃんなんて言ってた?」
可可「たしか、『歌える。ひとりじゃないから』って」
ここまでの話の整理ですね。
「貴方のため」の輝きを持ち寄り、5人は光を手にしたのです。
しかし、千砂都はかのんをひとりで、トラウマのある小学校のステージに立たせることに決めてしまいます。
??????????????
いや、あの、そんな……やっと自分なりに輝く方法を見つけたのに……?
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可可「仲間がいるから歌えるって、素敵なことだと思いますけど」
恋「厳しいのですね」
すみれ「千砂都の言うことは理想だけど……」
それでも千砂都は「昔のかのん」を取り戻せると信じています。
ラブライブスーパースター。あまりにも厳しすぎる。
そう、これは「私を叶える物語」であり、「貴方のために」はきっかけにすぎない。
最終的には、ひとりでも輝かなければならないのです。嘘だろ……?
それでも結論は「貴方のために」の延長線上にあります。
とはいえ、離れていても心が繋がっているとか、そんな中途半端な結論は許されません。
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「離れていても~」などという甘えた思考は許されない
では「貴方のために」でしか輝けないのに、どうやったら輝けるのか?
結論から言うと、「私」という「貴方」のために歌ったのです。
この後のかのんの行動を追ってみましょう。
千砂都「ひとりじゃない。いるはずだよ、あの時のかのんちゃんが」
電話越しに千砂都の言葉を聞いて、かのんは昔の自分と向き合います。
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実は「オレンジ主人公」の系譜を持っていたのか?
最初に見えたのは、不安そうな周囲を励ますかのんの姿。
千砂都が幼い頃に励まされた、「元気になる笑顔」です。
しかし、みんなを送り出してひとりになると、小学生かのんは俯いてしまいます。
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やっぱり、かのんはスーパースターではなかった。
千砂都が言っていた「あの時のかのんちゃん」とは、周囲に笑顔を振りまく「ヒーローのようなかのん」でしょう。
しかし、実際にかのんが目にしたのは、小さく震える自分の姿でした。
かのん「そう、怖かったんだ、あの時も。それでも私は……大丈夫、大好きなんでしょ、歌が」
かのんは、小学生かのんの背中を押します。
そしてステージに向かう小学生かのんの背を追うように、自分もまたステージへと向かい、見事にひとりで歌い上げるのです。
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かのんは、昔のかのんのために、ひいては今の自分のために、歌うことができました。
「貴方のために」の「貴方」の中身を「私」にする。
「私」という「貴方」のために歌う。これが答えです。
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ここでかのんが歌う『私のSymphony』は、デビューシングル『始まりは君の空』のカップリングなのもアツいですね。君から始まり、私を叶える物語。
なんでもできそうなあの子も
いつも笑い絶やさないあの子も
迷いながら 戸惑いながら
きっと夢をみてる
かのんはすでに気づいているのでしょう。
この世に「スーパースター」などいないこと。
そして、自分がどうすれば輝けるのかを。
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かのんが昔の自分について、ありあと話すシーンは象徴的ですね。
7.最終話というプロローグ
こうして、かのんは「貴方のため」の「貴方」を「私」に置き換える形で、ついに「私のため」にも歌うことができるようなりました。
いきなりこの結論に辿り着くのは不可能で、可可のために歌い、みんなが集まって……というステップアップが必要だったのは言うまでもありません。
かのんの物語を振り返ってみれば、痛いほどにわかるでしょう。
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かのんはもはや満足しています。
しかし、その満足さえ許さないのがスーパースター。
12話でSunny Passionの太陽の光が、Liella!の星の光を飲み込むのです。
ラブライブ東京予選を前に、かのんは気づいてしまいます。
自分には、他のグループと戦う必要などないことに。
かのん「私は、歌で勝ったり負けたりっていうのが、あんまり……」
今、歌えているだけで幸せなかのんにとって、勝負など重要ではありません。
その悩みに、Sunny Passionが答えます。
「競い合うことで、より高め合うことができる」
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ここでラブライブという大会に出るメリットが提示されます。
つまり、より強く輝いてレベルアップできるということです。
やや小難しい言い方をすれば、これは資本主義的な競争社会の正の側面を賛美しています。
資本主義や競争という要素が登場する際、どうしても負の側面を強調して問題提起する作品が多いです。
しかし、『ラブライブ!スーパースター!!』は、競争を「高め合うもの」としてプラスに描いてみせます。
この力強い考え方が素晴らしいですね。
現実逃避が肯定されて、多様性が賞賛される現代に、あえて真っ直ぐに「戦え」と鼓舞する。マッチョです。虹ヶ咲とは真逆と言ってもいいです。
しかし、この時点でかのんにはピンと来ていません。
確かにより強く輝けたら嬉しいけど、すでに「私」が叶っていることに違いはないからです。やはり戦う意味が見出せません。
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Sunny Passionは言います。
「ラブライブで歌えば、すぐ気づくはずよ」
その予言通り、サニパに敗北したLiella!は「何か」を理解して、次のラブライブでは絶対に優勝すると誓うのでした。
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では、かのんは敗北して何を理解したのか?
ポイントは「貴方のために」の範囲の拡大です。
ステージに向かう道には、光を持った生徒が並んでいました。
これは生徒達が「貴方(=Liella!)のために」光っているという表現に他なりません。
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ステージを作ったのは生徒達でした。つまり、Liella!だけでは立てないステージだったわけですね。
Liella!が5人で描いた星は、相互に光を持ち寄って作ったものでした。それと同様に、Liella!の5人は、全校生徒の光も受け取って「スーパースター」を作る必要があった。
ソングフォーオールの「オール」は、5人だけでなく全校生徒にまで広がっていたのです。
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しかし、Liella!はあくまでも「5人」だけの輝きでステージに臨んでいた。
かのんは敗北した後、ステージの片付けを始める生徒達の姿を見て、それに気づいたのでした。
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こうして「私を叶える物語」は、「後ろ向きな連帯」から、ラブライブ優勝に向けた「団結」に至り、ついに「みんなで叶える物語」に接続しました。
しかし、何度も確認しているように、初めからこの地点に立つのは不可能でした。
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「ひとりでは何もできない」というペシミズムからスタートしていることが、スーパースターの物語の素晴らしさです。
また、μ'sおよびAqoursではなんとなくの雰囲気だった「団結」がなぜ強いのかというロジックを、「個」と「個」の繋がりから見せることで説明した物語でもあったと言えます。
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スーパースター1期はまさに『Starlight Prologue』に過ぎず、Liella!はさらなる輝きを求めて、戦場へと向かっていくことになります。
そう、『WE WILL!!』──(2期へと続く)
※補足「Liella!は勝利しなければならないのか?」
かのん達が戦う原動力は「(生徒のみんなが光ってくれる分)より強く輝きたい」という想いであり、あくまでも輝きを増す手段として競争を選んでいます。
つまり、「優勝」という結果は、目指すべきものであっても絶対ではありません。
仮に優勝できなかったとして、かのんが「頑張ったのは無駄だった」と言うか?と考えてみるとイメージしやすいでしょう。
勝たなければ意味がない、というわけではないのです!
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そもそも過去のラブライブおよび恋の回(そして3期の夏美回)でも描かれていたように、スクールアイドルの価値は「瞬間」にあり、それは結果ではなく過程を重視するものです。
結果にこだわったとしても、その根底は変わりません。
8.おわりに~WE WILL!!~
長々と語ってきましたが、いかがだったでしょうか?
あくまでも私の勝手な考察ですが、こんな視点もあるのかと面白がっていただき、スーパースターというスバラシイ作品の魅力が少しでも伝わっていれば幸いです。
さて、正直なところ1期で話は終わっています。
マイナスから始まった物語は、現実的に輝く方法を示し、段階を踏んで、ついにあのμ'sのように「みんなで叶える」というスタート地点まで辿り着いたのですから。
その後の結果など正直どっちでもいいのです。
本当にありがとうございました。2期を観る必要なし!!!
そう思っていた時期が私にもありました。
ここまでの話で、こう思った人はいないでしょうか?
「かのん達が凡人だとか言ってるけど、結局才能あったってことじゃん?」
なんと……その通りです。
終わってみれば、これは何の能力もない一般人の物語ではなく、ある程度の能力はあったけど埋もれていた人達の物語だったと見ることができます。
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可可「最強とか最高とかエクセレントとか……ではないかもしれません」
かのん「最初から(共通の)何か目的を持って集まったわけでもないし」
千砂都「特別すごい才能があるスターが集まっているってわけでもないし」
恋「普通の子がひとつになって何かを突破しようって感じもない……ですか」
つまり、特別な天才ではないが、まったくの凡人でもないと示されている。
また、こう思った方もいるはずです。
「そもそも『夢』なんてないから、『私』を叶えるとか以前の問題なんですけど?」
それも……あまりにも正論です。
このままでは本当に何の力もない「私達」を完全に救済したとは言えません。俺を救ってくれスーパースター!!!
しかし、大丈夫です。
・本当に何の能力もない一般人は、どのようにして輝けばいいのか?
・夢を持てない人間は、どのように夢を追えばいいのか?
スーパースターは、きちんと2期で解答を示してくれます。
それでは、2期の記事でお会いしましょう!
ソングフォーオーーーール!!!
☆ ☆ ☆
本編は終了しているのですが、次の記事「オタク執筆後記」で、1期のより込み入った話&感想をオタクのメモ的に書き連ねいています!
スーパースターの物語が持つ社会的な価値とは? 『Starlight Prologue』でオタクが泣く理由など……
暇で暇で仕方ない時など、ぜひお読みいただけたら嬉しいです!!!
※記事内に用いた画像は、すべて考察を目的として引用しています。
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