パーパスとは|ミッション・ビジョン・バリュー・経営理念との違い
このところパーパスという言葉がよく使われるようになりました。あらたに策定している企業も増えています。
一方で、パーパスの意味や使い方については人により異なるようです。
実際パーパスとは何なのでしょうか。
いくつかの資料をもとに、備忘録的に整理してみました。
パーパスとミッション・ビジョン・バリューの違い
パーパスとは、purposeという英語をカタカナで表記したものです。英語の意味は「目的」です。語源は、pur「前に」、pose「置く」、前に進む際の目的になるものといえます。
『PURPOSE』DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部,ダイヤモンド社には
ミッションは、「組織の存続意義を定める」として、その目的は求心力を高めることにある。
ビジョンは「組織が目指す理想の状態を定める」として、人を動かすことが目的。
バリューは「組織の構成員が共有する価値観を定める」ことで、「組織文化をつくる」ことが目的であると説明されています。
そして同著では、ミッションとパーパスの違いについて
ミッションとは「自分たちは社会に何を働きかけたいのか」であり、パーパスは「自分たちは社会の中でどうありたいのか」とうことだと記述しています。
『Purpose Driven』永井恒男,後藤昭典,日本能率協会マネジメントセンターでは、パーパスは組織の「How」や「What」ではなく「Why」なのだと説明しています。
『パーパス経営』東洋経済新報社の著者、名和氏はパーパスを志(こころざし)と記しています。
これらの共通点をまとめていくと
存在意義という点では、ミッションもパーパスもほぼ同じですが、その言葉を「誰に向かって発信しているのか」考えると分かりやすいのかもしれません。
双方は似通っていますが、
矢印で表すと外向き矢印発信がミッションやビジョン・バリュー(その上位概念が※経営理念・企業理念)、
内向き矢印発信がパーパスだといえるのではないでしょうか。
※ただし、経営理念や企業理念が自社の社員の拠り所になると考えると
経営理念・企業理念(=パーパス)もあり得ます。
ESG経営で注目されているエーザイのCFO柳良平氏「「ESGの見えざる価値」を企業価値につなげる方法」ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー論文では、企業理念(パーパス)と記されています。
(ちなみに経営理念と企業理念の違いは、経営理念は経営者の想いが反映され、企業理念は経営者が変わっても継続される理念と定義しているところが多いようです)
パーパスが注目されている理由とは?
パーパスの意味から考えると、そこに働く人たちの拠り所になるのがパーパスだといえます。もちろん、働く人のモチベーションにも直結するのですが、事業という視点から見ても、その「道しるべ」や「拠り所」になるのです。
『パーパスを戦略に実装する方法』ダイヤモンド社では、「パーパスは戦略の周縁から中心に移行している」と冒頭で述べています。
変化する組織の中で、社員が一枚岩となり「らしさ」を失わない経営を行うためには、パーパスを定めておく必要があるといえます。
企業選びの軸は「存在意義」
また、今後、未来を担うZ世代(Z世代の定義は諸説ありますが、ニッセイ基礎研究所の調査では1996~2012年の間に生まれた人を対象にしています)はデジタルネイティブはもちろんですが、SDGsネイティブ世代であり、所有より共有を好み、社会貢献やウェルビーイングに働く価値を見いだす世代です。
2025年には世界の労働人口の75%がこのZ世代になると言われています。
つまり、一昔前の「テレビCMでよく知っている企業」に人が集まるのではなく、存在意義そのものが企業選びの基準になってくるでしょう。
今、就活でやってくる学生の多くが「SDGs活動」についての質問をするそうです。
今や一人勝ちの時代ではなく、いかに、社会の中での存在意義に働く人がたちが誇りを持てるかにシフトしているのです。
そんな中、パーパス・ブランディングという言葉も出現しました。文字通り、自分たちのパーパスを世の中に浸透させ、そこでの共感が消費行動に結び付くのでしょう。
個人としての「パーパス」
最近「自分自身のパーパス」を語る人も増えてきました。
『ライフシフトー100年時代の人生戦略』,リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット、東洋経済新報社では人生100年時代に求められる無形資産を3つの分野に分けています。「生産性資産」「活力資産」「変身資産」です。
「変身資産」では、長い人生で立場や役割も変わり、不確実性にも対応する能力が求められるます。「変化を経験しながらもアイデンティティと自分らしさを保てるようにする」ためにも自分自身についての知識を持つことには大きな意味があります。
『ライフシフト』では、パーパスという言葉は用いられていませんが、筆者は自分自身についての軸として「個人のパーパス」はこれからの時代、必要なのではないかと感じます。
あなたの「パーパス」はなんですか?
それに答えられる自分でありたいな・・・と思います。