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アナログ・コミュニケーションで職場大改革しよう!

先日、クライアントの部長さんと社員のモチベーションや上昇志向が上がらないという話をしていたとき、部長さん曰く、日々の職場は、ほぼ全員が一日中PCの画面とにらめっこしている状況で、誰が何をしているのかがわからなくなっているという話で、少し盛り上がりました。

お互いに何をやっているかわからない、ということから、実は様々な悪いことが起こっているのではないかという話に進んでいきました。
そして、わからないのは同僚同士だけではなく、上司のことも良くわからないのではないか、となり、上司って何やっているの?あるいは何が出来るの?そして、組織の状況がいつまでも同じような状況で変化がないと、次第に上司を尊敬できないとか、課長の仕事って楽しそうじゃないし、自分でなりたいと思わないという若い人が増えていくことになるようです。

特に技術開発の会社や組織では、一日一言もしゃべらないような人がいても、特に異常な状態ではないので、一層そういうことが起こりやすいのかもしれません。

インターネットがこんなに普及する前は、コミュニケーションは直接顔を見ながら話すか、あるいは電話で話すことがほとんどで、社外とのコミュニケーションだけでなく、社内でもひっきりなしに電話で話す必要があったのです。
今、電話での会話が減っていませんか?

電話での話は、当然、周りに聞こえてしまいます。でも、その当時は電話の声が周りに聞こえることを、話している本人も周りで聞いている人たちも、それほど気にしなかったのではないでしょうか。
今は、室内がシーンとしているので、たまに電話で話している人がいると、周りも気になるし、本人もなんか話しづらそうにしていたり、ひそひそと話したりするようになっていないでしょうか。
どうしても気になるときは、かけ直す、と言って廊下から携帯でかけ直したりという光景もたまに目にします。

かつて、職場内で電話でのコミュニケーションが主流だったころ、確かに本人も周りも漏れる声をそんなに気にしてはいなかったのですが、でも、実はその何気なく聞こえる声で、あの人はどんな仕事をしているのか、今、仕事がうまく行っているのか、あるいはトラブルで大変そうな時なのかが、自然と周りにも伝わっていたのです。
 しかも、電話の話し声は、相手方の声は聞こえないものの、本人の自信の有無や、段取り、仕事をこなす力の有無なども、自然に伝えてしまっていたのではないでしょうか。

つまり、職場内での電話の話し声は、その人の仕事の状況だけでなく、処理能力や地頭の良し悪しまで周りに伝えていたことになるわけです。
特に上司の話し声に対しては、同僚のものよりも興味深く聞き耳を立てられるケースが多いように思います。自分の上司が、尊敬できる人なのか、この人について行っていいものなのか、無意識のうちに知りたくなるものですよね。

実は、この自分の仕事内容や能力を周りに伝えること、あるいは逆に上司や周りの人間の仕事の内容や能力を何気に伝えられて知ることは、冒頭のモチベーションや上昇志向に大きな影響があるのではないかと思うわけです。

特に意識はしていないようでも、他人が自分の仕事ぶりを見ている、と思うと、それはちゃんとしなければならないと思って、気の張った仕事のやり方にもなるし、さらに言うと、頑張ろうという自分にとっても励みになるものだと思うのです。

一方、デジタル・コミュニケーションの世界では、自分の仕事の足跡は、すべてメールやパソコンの中で、誰も普段の行動や仕事のやり方、能力などを見ていないので、単に緊張感がないというだけでなく、自分自身に対しても甘えが出てしまって、まあこんなもんでいいや的な仕事になってしまう危険があるのです。
自分の仕事のやり方や能力が白日の下に晒されて、その結果知らず知らずに自分を伸ばしていこうとするエネルギーが生まれている状態と、片や仕事ぶりが水面下に隠れた状態で、自分を伸ばそうとするエネルギーを得られないでいるかの違いは、日々の積み重ねでどんどん膨らんでいくのだと思います。

デジタル・コミュニケーションは、自分を伸ばそうとするエネルギーを無くしてしまうだけでなく、チームワークも乱していくのかもしれません。
冒頭の部長さんとの話の中で、最近は仕事の指示を出したのに、それをすぐにやらずに、数日たって聞いてみると、まだやってないようなことも頻繁に起こるのだと頭を抱えていらっしゃいました。

アナログ・コミュニケーションであれば、部長が口頭である部下に指示をしたことが、周りの人間も認識しているわけで、さらに仕事をやったかやらないかは、すぐに周りに知れることになります。仕事の出来る人であれば、いや敢えて仕事が出来ない人でも、仕事ぶりを見られている暗黙の力が働いて、その場ですぐに電話をかける、ということになるのではないか、という話になりました。

デジタル・コミュニケーションは、メールが基本なので、いつでも出来るし、別に誰もやっているかどうかを見てないので、ついつい、あるいは意識的に仕事が遅れていくというわけです。
直接のコミュニケーションだけでなく、電話会話による間接的な伝達は、優秀な人とそうでない人を見わけさせてくれます。それは、自分もあの人のようになりたい、あるいは、あの人には負けたくないという、仕事のやり方や能力に対する、目標を組織内に作ることにつながります。
優秀でない部課長を生まないシステムになると同時に、部下から見た上司への憧れを生み出し、目標設定を容易にします。

長い時間をかけて、多くの人たちが技術の進歩で、仕事やライフスタイルを効率的にしてきました。インターネットはその代表的なものかもしれません。
でも、便利になって効率的になった反面、仕事をきちんとやる、あるいは自分にプレッシャーを与えて自分を伸ばすエネルギー源をどこかに置き忘れてきてしまったのだと思います。

私自身も、インターネットや電子メールの便利さに、かつてのコミュニケーションの本質を見失いかけているのかもしれないと、今回の会話で少し反省をしました。
思い返すと、私のちょっと先輩にあたる、ある尊敬する元銀行マンは、インターネットや新しい技術にはとても疎く、それを何とかしたいのだと時々おっしゃっていますが、実はこの方、私にしょっちゅう電話をかけてきます。
私がメールで何かをお願いしたり、連絡をしたりすると、すぐに電話で返してきます。
実は、電話で話をすると、結果的にいろんなことが数分で解決してしまうのです。
その方の電話を受けたとき、私も今更ながら電話の方が早いし、いいよなあって漠然と思ったことに思い当たります。

冒頭の部長さんとの会話の結論ですが、一度、社内の電子メールを禁止してみてはいかがですか?と私が提案してみたら、ちょっと真剣に考えてみます、とのことでした。

社内の隣の席に座っている仲間と、直接話さずメールで会話するっていう笑い話が、だんだん笑い話でなくなっているように思います。
便利なデジタル・コミュニケーションですが、使い方を真剣に考えないと、モチベーションや上昇志向だけでなく、人間力も失わせていくような気がしています。

アナログ・コミュニケーションをもう一度見直して、職場や組織を活性化し、大改革してみようと思いませんか?

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