育休中に大人と話す時間がなくなってしまったママへの処方箋
あなたにこれまで何でも腹を割って話し合ってきた友人がいるとします。そんな友人と子連れで会った時(自分が子連れでも、相手が子連れでもいいです)、あれ?と思った経験はないでしょうか。
会っているのに、これまでのように話ができない。
本当はもっと話したいことがあったのに、全然そこまで行きつかずに入り口のところで終わってしまった。
その要因は、子どもに頭のメモリーを取られているからです。
子どもというのは、常に「私に注目して!」とアテンションを要求する生き物です。大人が自分の方を見ていないと大きな声を出して気を引く。大人の会話に割って入る。いつも自分が主人公でいたがる。そう、生まれながらの”構ってちゃん”なのです。
長男が生まれた時、学生時代からの友人が家に遊びに来てくれ、最初は子どもを構いながらおしゃべりしていたのですが、子どもが寝た途端に、仕事や人生のビジョンの話など、”いつもの話”ができた体験をしたことがありました。
その時に、子どもにいかにメモリーを普段持っていかれているかを実感しました。
あくまで私の体感値ですが、機嫌がよくても3割くらいは持っていかれる。
泣き始めたら6割、ギャン泣きで9割、それを超えると大人は思考停止で何も考えられなくなります。
仕方ありません。子ども、特に赤ちゃんは大人に世話をしてもらわないと生き延びれないので、気を引き続けることは彼らの生存戦略なのです。
でも、大人の話ができないのは辛いですよね。本当はママだって自分の人生の話をしたいんです。
そのためにいい方法があります。私は産後いくつかの育児コミュニティに所属したり、ママ向けの産後プログラムに参加したりして、「あ、こうすれば子どもが脇にいても自分の話ができるんだ」と感じました。
いくつかご紹介しようと思います。
1.マドレボニータの「産後ケア教室」
マドレボニータは、産後女性のケアのためにエクササイズ教室や各種のセルフケアプログラムを提供するNPO法人です。具体的には、バランスボール教室やオンラインで参加できるセルフケア教室など。
どちらも赤ちゃんと一緒に参加でき、身体を動かす運動プログラムと、参加者同士の「対話の時間」がセットになっています。
この「対話の時間」がマドレならではの面白さです。「あなたにとってセルフケアとは?」「あなたが大事にしている価値観について説明する」「5年後の自分について話す」などのテーマが毎回設定されていて、ほぼ初対面の相手に、自分の人生の価値観やビジョンについて話しをするのです。
日常生活ではあり得ないシチュエーションですが、それこそがポイントで、場の設定の強制力のようなものが働いて、まとまっていてもいなくても、とりあえずそのテーマで何かしゃべってみる。すると、「あ、自分そんなこと考えてたんだ」という言葉が出てきたり、相手が話すのを聞いてまた気づきがあったり。数分のやりとりですが、その間にすっと深いところに入れたりします。
自分の思考に言葉を与えていくことは、産後のマミーブレイン(出産後思うように頭が働かず言葉が出てこなくなること。いわゆる産後ボケのこと)対策にも有効。
私は上の子の出産後にリアルのバランスボール教室に、下の子出産後にはオンラインのプログラムに参加しました。リアル教室では地域のママと知り合えて今も付き合いが続いています。オンライン教室は全国津々浦々から参加者が集まっており、日本の各地でこうして0歳児のママが頑張って子育てしているんだな、と励まされました。
2.Ikumadoの「グループコーチング」
ikumadoは、元リクルートの方が立ち上げた、Facebookグループを中心に活動する育休&共働きコミュニティです。ここの話題の主役は子どもではなく、ママのキャリアや働き方など。様々なワーママのキャリアをシェアする場やグループコーチングのプログラム、読書会、趣味のサークル活動などがあり、所属するママたちがそれぞれ自由に活動しています。
共通項はみんな”仕事が好き”なこと。子育て支援センターなどで出会うママは仕事へのモチベーションはそれぞれなので(復帰を急ぐ人もいれば、育休を延長したい人、仕事をできれば辞めたい人などもいる)、仕事の話題は避けがちです。でもここにいる人は基本仕事大好き人間なので、気負わず仕事への愛を語れます。・・と私は理解してます(笑)。
多様な活動があるので私も全貌は把握できていないのですが、1月から参加しているのが「グループコーチング」のプログラムです。週に1回、決まった時間に決まったメンバーでオンライン上で集まり、この1週間の活動(抱えている課題やプロジェクトの進捗)を報告しあいます。報告用の定型のシートがあり、そこには1週間の変化を書く欄のほか、自分の人生の目的を記載する欄や、「最もエネルギーが出た活動について振り返りましょう」というようなアドバイスも書いてあります。
報告の内容は仕事の話から育児の困りごと、自身のプライベートなことなどバラエティに富んでいます。普段出会わない業種や職種の女性たちの1週間の報告を聞くというのはなかなか不思議な体験ですが、互いにコメントをし合う中で「あなたの強みは実はそこにあるのではないか」というような指摘や気づきがあり、より自分自身らしい活動に近づいていくヒントになる、という場です。
この場もフォーマットが効いていて、シートで自分の人生のビジョンを提示しながら話すようになっているので、何がしたい人なのかバックグラウンドがわかった上で話ができます。週に1度という設定も、何となく過ごして流れていきがちな日々を定期的に振り返り、意味を見出していくいい機会になっています。続けていくと、シートに記載するためにちゃんと活動しよう、というようなモチベーションづくりにも活用できます。
1、2カ月毎週顔を合わせていくと、だんだん"顔見知り感"が出てきて、さらに続けていくと"同志感"さえも醸成されてくるのが面白いです。
マドレもikumadoも共通するのは「フォーマットによる半強制的アウトプット」だと思っています。「こういうことを話す場だから」「これがテーマに設定されているから」という前提が頭にあると、いきなりコアな話もできてしまうものなんだな、と感じました。
たとえ子どもが傍にいても、子どもに主人公の座を奪われずに(笑)話すことができる。
そんな「フォーマットの力」って強力だなと思っています。
(それでも、やっぱりグズられると厳しいですが)
雑誌の対談や座談会も似たような点があるかもしれません。「これは取材だから」「こういうテーマで話しに来たから」という頭があるので、急に本題に入って意見交換や議論ができたりする。たまに対談や座談会きっかけで意気投合したり結婚した(笑)みたいな話がありますが、短い時間でその人の持つ価値観がよく見えるからなのでしょうね。
3.「つかれない家族」のオンラインコミュニティ「バル・ハラユキ」
最後に、少し毛色は違うのですが、このコミュニティにも大いに助けられたので紹介させてください。
東洋経済オンラインに「ほしいのは『つかれない家族』」という連載があります。イラストレーターのハラユキさんが国内外の夫婦にパートナーシップや子育て、家事分担について取材し、さまざまな実践アイデアをレポートしてくれる、というものです。書籍化もされており、『ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ』というタイトルで講談社から出ています。
この本、めちゃめちゃ素晴らしいので、別記事で単体で語りたいくらいなのですが、今回はそのオンラインコミュニティについて話をします。
元々、この連載を知ったきっかけは、夫と子どもたちとの休日の過ごし方に悩んでいたからです。夫が仕事で疲れていて、週末家族でせっかく出てかけても全く楽しそうではない。そんな夫を見て私も休日を楽しめない。そして気を遣ったりケンカになったりしてつかれる・・・という日々を送っていた頃に、アレコレ解決方法を探していてこの連載にたどり着きました。「つかれない家族」というタイトルがビビッと響きました(泣)。
本を読んで、この著者のいるコミュニティにぜひ参加してみたいと思いました。この本を見て集まった人たちなら気が合いそうだし、ここにいる人なら今の自分の悩みに答えてもらえるのではないか。それなら有料(月額500円)払っても惜しくはない、と思って参加しました。
そして、入って早々に、自己紹介もそこそこに悩み相談をしてみました。
すると・・・本当にありがたいことに数日で沢山の方々がコメントをしてくれたのです。それも、見ず知らずの人になぜここまで、と思うくらいに親身にアドバイスや励ましを書いてくださって。何だかもうそれだけで救われましたし、皆さんからの指摘で自分が思っていた以上に夫の疲れが深刻だと気づくことができました。すぐに夫の会社の上司(幸い私も元々知っている方でした)に連絡を取って相談したり、夫にも業務量を減らすことを最優先に調整しよう、と話をすることができました。おかげで、1カ月後には事態はずいぶん落ち着きました。
いきなり重めの相談を持ちかけたにもかかわらず、しっかり受け止めてくれたコミュニティの皆さんに大変感謝しています。
このコミュニティ、こうした重めの悩み相談もあれば、軽くボヤき合う場もあり、映画や本などカルチャーの話題、テーマ別座談会、家事効率化のTIPSなどなど多彩なレイヤーで子育て中の親向けの会話や情報が詰まっていて(ここでしか読めないハラユキさんの漫画もあります!)、もう本当に素晴らしい。
夜のオンライントークにもいつか参加したいと思いつつできていないのですが、悩みに答えていただけただけでとても恩義を感じていますし、何かあれば相談できる場があることにとても安心感を覚えます。
以上長くなりましたが、育休中&コロナ下でも大人と話せる方法はある、あきらめなくていい、ということを伝えたくて書きました。
育休に入ってから家族以外の大人と話す機会がなくなってしまった方、ママ友トークに物足りなさを感じている方。参考になれば嬉しいです。
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