社会に貢献するお金の使い方
お金はその使い方によって、社会に貢献することが可能になります。では、どのように使えば社会貢献が叶うのでしょうか。
今回は社会貢献をするためのお金の使い方について紹介していきます。
お金の使い方は4通り
上図は米国の子供向けの金融教育の考え方を題材にしたマネー教材「ピギーちゃん貯金箱」です。
図にある通り、お金の使い方は「消費」・「貯蓄」・「寄付」・「投資」の4つに分類することができることが分かるかと思います。米国のお子さんたちはこの貯金箱を通してお金の使い方を学び、そこから経済や金融の学びにも繋げていくのだそうです。
この4つの使い方にうち、社会に貢献するのはどれでしょうか。
このうち「消費」は生活に必要な衣・食・住に使用したり、趣味や娯楽に使用するものであり、いわば自分のために使うお金です。
そして「消費」以外の「貯蓄」・「投資」・「寄付」の3つの行動は金融(ファイナンス)に該当します。これらは自分のためだけでなく、お金をあらゆる場所に巡らせて(融通させて)社会のために働いてもらっているのです。
では、「貯蓄」「投資」「寄付」によるお金は、どこに働きにいくのでしょうか。
■貯蓄
日本人である我々は当たり前のように銀行にお金を預けて「貯蓄」しているかもしれませんが、銀行はその預金を基に有望な企業(事業)に対して貸出を行い、働いた分の利子を利益として得ています。
つまり私たちのお金は、銀行を通じて企業が受け取り、事業費として活用されているのです。我々が受け取る利息は、銀行、そして貸出先の企業から受け取る対価なのです。
■投資
「投資」は自身が、あるいは投資ファンドが良いなと思った企業や事業で働いてもらうことになります。
これらは目利き次第で損をすることにも成り得ますが、投資先が成功して大きな成果を出した場合は、より多くの配当を得ることに繋がります。
投資もまた、金融機関を通じて企業にお金が流れ、そこで働いているのです。投資は元本保証がありません。元本というのは自分が差し出したお金のことを言います。つまり、差し出したお金が返ってこない可能性があります。なので貯蓄するよりもリスクは大きいですが、その分大きなリターンも得ることができます。
■寄付
「寄付」は、自分が共感した、あるいは助けたいと思った団体や事業にプレゼントするものです。
寄付されたお金はその団体が真心を込めて使い、社会のために一生懸命に働いてくれます。寄付したお金は基本的に戻ってきません。しかし、代わりに人との繋がりや幸福感を得ることができます。
このように「貯蓄」「投資」「寄付」は、それぞれ形は異なりますが、本質的にはどれも一緒です。自分のお金が社会に巡り渡り、自身に代わって社会のために働いてくれているのです。
日本人はリスクが嫌い?
日本人はリスク嫌いと言われます。やはり誰しもが一番に取る選択肢は、貯蓄でしょう。銀行に預けていれば、とりあえず安心だからです。
それはデータとしてきちんと証明されています。国民全体が保有する金融資産の半分が、現金か預貯金で占められているのです。
日本銀行が開示している「資金循環統計(2019年第2四半期の資金循環(速報))」によりますと、日本人が保有する金融資産は1,860兆円にもなります。
2017年の日本のGDPが約4.8兆ドル(約525兆円)ですので、なんと日本人はその約3倍強ものお金を保有している計算になります。驚くほどたくさんのお金を持っていることに、びっくりしてしまいますね。
そして、そのうちの半分以上(約53%)である991兆円が現金あるいは預金で占められています。すなわち、金融資産の半分以上をリスクのない資産に振り分けられているということです。
他の国と比較してみましょう。見てみると、海外はこれらの比率が大きく異なっているのが分かります。
日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較(2019年8月29日)」によりますと、米国では現預金がわずか12.9%、株式等で34.3%と最も多い割合となっています。投資信託・債務証券と合わせると52.8%が証券投資で占められており、日本とは対照的であることが分かるかと思います。
一方でユーロエリア(欧州)は日米のちょうど中間という感じです。日本はリスク回避が徹底されており、米国は反対にリスクを取りに行き、欧州ではバランスを取る感じで、国としての人柄が反映されているのかもしれません。
では日本の現預金53%、991兆円は銀行が有効に活用しているのでしょうか。
東京商工リサーチの調査によりますと、国内銀行114行の2018年9月中間期決算の預貸率は66.02%となっており、預貸ギャップは278兆円になっています。
預貸率とは銀行の預金に対する貸出金(融資)の比率を表しているもので、預貸ギャップとは預金残高から貸出残高を差し引いた金額のことを言います。すなわち278兆円は貸出に使用されることなく、銀行が有効に活用ができていない、ということになります。
厳密に言いますと、これらの余った資金などは国債などに充てられて運用されてはいます。しかし私たちが預けたお金を無くすわけにはいかないので、リスクを取ることができません。つまり「投資」に比べると、お金の融通が適切になされているとは言い難いのです。
投資や寄付が日本を豊かにする
経済を回すには金融、すなわちお金を融通させることが必要不可欠であり、日本は未だ発展途上です。
金融はよく体内の血液循環に例えられます。そして、日本の血液循環はすこぶる悪い状態にあるのです。
血の巡りが悪いと、あらゆる内臓器官が不調を起こし、不健康な身体になってしまいます。日本はまさにそのような状態なのかもしれません。
貯蓄志向が強いことは、決して悪いことではありません。最初に述べた通り、貯蓄も自身に代わって社会に貢献してくれるからです。それに、日本経済は不調ですし、自分の身に何が起こるかは全く分かりません。まずは貯蓄、これは生活をする上では必須事項と言えるでしょう。
しかしアメリカまでとは言わないものの、少しでも「投資」や「寄付」に充てられることで、日本がより良い社会になっていくことは間違いありません。裏を返せば、「投資」や「寄付」は極めて大きな可能性を握っているということでもあるのです。
アメリカは投資比率も多い事ながら、実は寄付大国でもあります。とはいえ嬉しいことに、日本も寄付額は年々増えていっています。この流れは続いて欲しいと思います。
皆さんができること、それは貯蓄生活を通して自分の生活をしっかり守り、できれば余剰資金を投資や寄付に回すことです。
最近は投資や寄付をすることで、私たちが何かしらのリターンを貰えるように制度が整ってきています。
例えば投資ですと、NISA(小額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)で、税金が控除される仕組みが整ってきています。対して、最も広まった寄付形態は、ふるさと納税でしょう。地方に寄付して、贈り物を貰う。これは立派な寄付の一種です。
一人の投資・寄付額は少額でも、たくさんの人が参加すればするほど、たくさんの社会貢献が叶うことになります。この流れが盛んになれば、少なからず日本はもっと豊かになるはずです。ぜひ、貯蓄に限らず投資や寄付に目を向けて見てください。