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3回目で、初めての学祭─大学は救いなのか?─

 嬉しいことも確かにあった。でも、たまらなく悔しかった。そんな学祭だった。

小さな1歩

 3度目の学祭が終わった。しかし、健康な状態で迎えるのは今回が初めてである。どういうことかと言えば、過去2度の学祭は精神疾患が影を落とし、秋になると体調を崩して休学するということを繰り返していたので、健康な状態で学祭を見るのは今回が初めて、という具合である。秋になると体調を崩すというジンクスを抱えた僕にとって学祭を健康な状態で迎えるというのは大きな目標の一つだった。
 何をそんなことで、と思われるかもしれないが、それでも僕にとっては大きな1歩である。何故学祭なのかと言うと、それはサークルL研究会(以後L研)が僕にとって大きな心の支えだったから、ということに尽きる。

支えとなったL研

 Lはアニメ・ゲーム・ライブに広く展開するアイドルコンテンツであり、L研はアニメやライブの鑑賞会を行ったり、Lの舞台となった「聖地」へと聖地巡礼したり、そして学祭にはLの楽曲を用いてコピーダンスを行うなどの活動を行っている。入学当初、L研の宣伝を見かけた時には、正直Lのアニメも見ていなければ楽曲も知らなければキャラ名もほぼ知らないというような状態だった。しかし、「Lは知らないけどLの研究会なら他の分野にも精通しているオタクもたくさんいるだろう」という大分ふんわりとした理由で入部してしまった。とはいえ、今となれば入学したばかりで右も左もわからなかった僕を優しく迎え入れてくれたL研には感謝である。今の僕の人間関係の礎になったのは、間違いなくこのサークルである。

 その後2回休学をした。常に悩み続けた。何故自分は大学に通うことすら出来ないのか。友達と楽しく大学生活を送りたいだけなのに。なんだか自分が荷物になっているような気がしていた。正直今でもそうである。そんな鬱屈とした感情を胸にしまいながら、生きてきた。

 僕はLというコンテンツ自体がそこまで好きだったかと言えば微妙だけれども、そのコミュニティに居心地の良さを感じていた。学祭で普段馴染みのある同級生が、後輩が、先輩が輝く瞬間を見ることが好きだった。憧れでもあった。そして関わってくれる仲間達のことが好きだった。

 僕はあまり集団というものに馴染めない人間なので、ここまでサークルという集団を褒めるのは我ながら本当に珍しいことだ。

留年という重し

 休学したことで必修の単位が取れずに留年し、今年は2度目を2年生をやることとなった。親からはこれが最後のチャンスであると伝えられた。僕の方も、もう1留したとして流石にこれ以上の再履修には耐えきれないし、友達ももう4年で大学にもほぼ来ないだろうしで大学に通う意味がこれ以上見つけられないだろうと思ったので、そのことを受け入れた。
背水の陣での大学復学である。

 留年したことは振り切ってネタにしてきた。「はい、私精神疾患で調子を崩してしまって…」と言ってしまえば空気が重くなってしまうので、自分の努力不足で留年したかのようにネタにすることでなるべくコミュニケーションの場を崩さないように努めてきた。自分さえ泥を被ってさえいればいい。無論イジられることもある、その場では笑って流しているけれどもキツいと感じることもある。

人間関係は…大事…………

 幸い、同じL研には同じ学科の入学同期の3年生の男の子(A)、留年した先には2年生の女の子2人(M・H)がいた。本当に良い子たちだと思う。

 Aくんは入学同期で、なんというか包容力と神対応の化身である。ゲームにアニメにVにとオールラウンダーに何を投げかけても優しく話を聞いてくれる。僕の事情を理解した上で励ましてくれる。本当に絶対に幸せになって欲しい。

 Mさんは本来なら1個下の代。良くも悪くも正直な性格で、思っていることをよくズバズバ言うことがトラブルを激化させて嫌われることもあるが、しかし筋はちゃんと通すので好かれることも多い。子供の頃から好きなことはなんでもやらせてもらって育ったとのことで、なんというか極めて育ちの良さを感じる。L研もその一つらしい。
 留年して同級生になったと思ったらタメ口でよく絡んでくるので最初はビビっていたが、今にして思えば留年して心細い思いをしていたけれども、留年しても年上だと遠慮する子も多い中、いい意味で遠慮なしに話しかけてくれたり、「一緒に卒業しようね」と言ってくれたのは結構嬉しかった。

 反対にHちゃんは温和な性格で周りとの調和を重んじる性格。かわいいもの好き。なんかキャラがさあとか女性声優がさあとかニチャついてる自分が本当に恥ずかしくなるぐらいにはこちらも真っ直ぐなイメージ。あと授業とかで遭遇すると必ず手を振ってくれる。おいおい好きになっちゃうだろう。それはさておいて、常にいろいろな人のことを気にかけてくれる、まあ要は現人神である。

 読者諸君も疑問に思うだろう。おい、なんでこんなパッとしない冴えないオタクがこんなに女子と関われてるんだよという指摘があるかもしれない。単純に私立の文学部で女子の比率が7割強という要因もあるが、何よりL研がオタサーにも関わらず女子比率が6割近くにもなる大分特殊なサークルであるというのが一番大きい。

 IはL研で一番初めに仲良くなった奴で、ラーメンを食べに行ったり遊んだりと付き合いの長さで言えばAくん並である。ラーメンでも恋愛でも下ネタでも、どんなくだらないことでもなんでも気兼ねなく話せる相手だ。どんなことを話しても受け入れてくれる彼の懐の広さが好きだ。

意外と孤独…?

 結局今年の学祭は、普通に見られるようになったは良いが、いざ来てみると結局陰キャラすぎてなかなか教室に入れなかったり、一緒に巡る人がいなかったりと高い期待をかけた割にはそこまででもなかったような気がした。期待しすぎたか。

 いや、さっきの子たちと巡ればええやん!という意見もあるかもしれないが、女子たちにも友達がいるし、男子は来てなかったり店番やってたりと都合が合わず、ぼっちで巡った。(幸いその後先輩に遭遇したので先輩と巡ったけど…………)

思いを抱きしめる

 学祭のことと言うよりかは僕の今年の学祭に対する思いの方ばかりを書き連ねてしまった。

 小中でのいじめ、高校での不登校を経験した僕にとって、学校というのは気の置けない、自分が蚊帳の外に置かれているような、そういう存在だった。今度こそは、と悩みながら選んだ大学は確かに今までとは全く異なる新しい世界を見せてくれたが、同時に自分にいかに力が足りていないのかということを知ることにもなった。休学や留年もし、再び苦しんだことも諦めたこともたくさんあるが、幸運にも僕はまだ大学に残れている。この人たちと共に過ごしたい、という仲間がいる。だとすると、そこにはまだ救いが残っていると考えてみてもいいのかもしれない。

 仲間の活躍を見るたびに、それ以前のことでつまづいている自分が悲しく映るようなこともある。悔しさを感じることもある。そんな僕がどれくらいの人に必要とされているのかわからない。でも、もう少しぐらいは踏ん張ってみてもいいのかもしれない。そしていつか、こんな悩みを持っていたのだなということを思い返して、笑えたらいい。

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