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『カモガワGブックスVol.3 〈未来の文学〉完結記念号』収録トリビュート短編総解説

 11/23開催の文学フリマ東京で頒布予定の当サークル新刊『カモガワGブックスVol.3 〈未来の文学〉完結記念号』
 今回は同書収録の、〈未来の文学〉トリビュート短編5作の内容をご紹介します。
 R・A・ラファティ、ジーン・ウルフ、トマス・M・ディッシュ、サミュエル・R・ディレイニーら、〈未来の文学〉を彩った名作群を現代でトリビュート。果たしてどんなマリアージュが生まれたのか……それは読んでのお楽しみ。乞うご期待!

世界の穴は世界で(茂木英世)

 胸にポッカリと穴の空いた、小さな角の生えた12歳の少女マーガレット・タイニーデビル。雷鳴轟くある夜、彼女はその胸の穴を中心に世界を裏返して現れた……
 奇想に溢れるラファティ・トリビュート作品。作者の茂木英世は、今年第3回百合文芸コンテストpixiv賞を受賞した若き俊英で、今後の活躍が期待される注目株。

返却期限日(鷲羽巧)

 古本屋の店主を勤める伯父と、彼に頼まれ小説を朗読するその甥。物語を語り聞かせる中で、彼は人生を歩み、筆を執り、そして年老いてゆく。「読む」「書く」営みの本質を、ある男の人生とともに描き出した企みに満ちた一編であり、〈言葉の魔術師〉ジーン・ウルフにオマージュを捧げるにふさわしい作品。
 作者の鷲羽巧はミステリ・SF両面に造詣が深く、最近では〈ハヤカワ文庫JA総解説〉企画に、ミステリ・SF両方で参加するなど、精力的に活動中。本誌〈未来の文学〉全レビュー企画でも、ウルフ作品を担当している。

イルカと老人(呉衣悠介)

 感染すると特定の政治思想に「目覚めて」しまうウィルス、”バドワイザーウィルス”が爆発的に蔓延した社会。混乱する世界のなか、罹患者は群れをなし、更なるエコーチェンバーの中へと取り込まれてゆく……。
 我々の世界と近しい何かを連想させつつ、感染症をベースに、現代を黒い笑いで風刺するディッシュトリビュート作品。〈知性派〉ディッシュの最良の面を、2021年の現代性とともに増幅させた傑作。

ピンチベック(巨大健造)

 銀河を股にかける星間企業ルナ・リプロの社員にして「第三世代」である「ぼく」の冒険譚。本格宇宙SFにして、ディレイニー「スター・ピット」のトリビュート作品でもある。
 作者の巨大健造氏は〈SF文芸秘密結社・反-重力連盟〉でも活動中。文学フリマ東京での新刊にも寄稿予定で、八面六臂の活躍を見せている。こちらも要チェック。

衣装箪笥〈ワードローブ〉の果てへの短い旅(坂永雄一)

 衣裳箪笥〈ワードローブ〉の中で、内側方向へと拡大し続ける広大な世界。そこに迷い込んだスーザンは、熊や〈鼠〉、〈鴉〉らに囲まれた世界を旅する……。神話と伝説、唯物論と衣裳箪笥の「外」を巡る力作であり、ラファティやウルフなど、「カトリック系SFF系作家へのささやかなトリビュート」となっている。
 作者の坂永雄一氏は、第1回創元SF短編賞大森望賞受賞者にして、第4期京大SF研勢の雄。最近では『NOVA 2021年夏号』収録の「無脊椎動物の想像力と創造性について」が話題を集めた。また、日本を代表するラファティアンの一人であり、本誌〈未来の文学〉全レビューでは『第四の館』レビューを担当いただいている。


最後に

 以上5作品を収録のほか、全レビューや評論、関係者エッセイなど盛り沢山でお届けする『カモガワGブックスVol.3 〈未来の文学〉完結号』をよろしくお願いします。
 文学フリマ東京で頒布のほか、各種書店での委託販売、BOOTHでの通販も行っています。詳細は下記noteをチェック!

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