【連載エッセー第9回】防寒着を手に入れる
丸山啓史さん(『気候変動と子どもたち』著者)は、2022年春に家族で山里に移り住みました。持続可能な「懐かしい未来」を追求する日々の生活を綴ります。(月2回、1日と15日に更新予定)
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私が住んでいるところは、山の中で、京都の中心部と比べると標高も高い。日によっては、市街地よりも5度くらい気温が低い。夏は涼しいけれど、冬は寒い。寒さへの備えが欠かせない。
前の冬まで、家の中では紫色のフリースを着ていた(学生時代に買ったもので、思えば長い付き合いだ)。まだ着られるものの、マイクロプラスチックを発生させる化学繊維の問題性を知った今となっては、このままフリースを使い続けるわけにもいかない気がしていた。
そこで、綿の入った半纏(はんてん)を探すことにした。中綿にポリエステルが混じらない、綿100%のもの。現代の綿花栽培の環境負荷も気になるところではあるけれど、とりあえず化学繊維を避けたい。けっこう値は張るけれど、冬場は毎日のように着るし、これから何十年も使うことを考えると、奮発してもよいように思った。
とはいえ、半纏はいったいどこで売られているのだろう。デパートの呉服売り場をのぞいたりもしたけれど、なかなか求めているものに巡りあえず、結局はインターネットに頼ることになった。
環境負荷という面では、新品の衣類を購入することには後ろめたさがあるし、通信販売で送ってもらうのも気が引けた。けれども、ちょうどよい古着を近くで見つけるのは難しそうだった。半纏は、段ボール箱に入って届き、冬の暮らしの相棒になった
ふかふかの半纏は、布団を着ているような感覚で、とても暖かい。
半纏に続いて手に入れたのは、羊毛のコートだ。
パキスタンの器、イランのグラス、ルーマニアの皿などを扱っている雑貨店で、たまたま見つけた。雑貨店でコートを買うことになるとは思ってもみなかったのだけれど、店の片隅にたたんで置かれていたものが目に入った。「ラダックコート」と書かれた札が付いていた。ヒマラヤ山脈の西の端、ラダック地域から来たものだ。
着てみると、ずっしりとして重く、身軽な感じはしないけれど、ずいぶん暖かそうだった。見た目も良い雰囲気だ。ラダックという土地にいくらか思い入れもある(拙著『気候変動と子どもたち』の終章を参照ください)。コートに心がときめいた。
それでも、衝動買いは避けて、家に帰って考えた。今ある化学繊維のコートで間に合っているのではないだろうか。ラダックのコートを日本で着てよいのだろうか(地産地消からも程遠い)。「動物の権利」からすると、羊毛を身にまとうのは問題なのではないか。少なからず疑問も湧いてくる。
一方で、たまたま、人口が少なくなっている地域に移住した人への補助金の話が舞い込んだ。ストーブやコートなど、新生活に必要な品を購入すると、1件あたり5万円まで補助が出るという。それを知って気が大きくなったことは否めない。再び雑貨店を訪れ、それでも少し迷ってから、貴重なコートを手に入れた。
こういう判断が正しいのかどうかは、わからない。