【エフェクターレビュー】Lateral Phonics/Seamark Reverb
第4回は引き続きLateral Phonicsさんのペダル。今回は“アナログ”スプリングリバーブ、Seamarkです。
アナログということで、Seamarkにはマジモンのスプリングが入っています。そのため筐体はちょっと大きめです。スプリングリバーブはギターアンプに入っていることもあるので、ギタリストの方には比較的馴染みがあるかもですね。
そしてアートワークが相変わらずカッコいい!
LEDが灯台のライトのところにあるのもオシャレ!
さて、このSeamark、ペダルタイプのアナログスプリングということもありますが、なかなか一般的なリバーブとは感覚が違うような気がしています。
特徴をざっくり書いてみると、
・コントロールが独特
・単体でも自然な歪みと飽和した大音響が作れる
・タッチへの反応性が高い
・筐体への衝撃でスプリングが暴れる
といったところが挙げられるかなと思います。
アナログなのでもちろんリバーブモードの選択はないし、Mix、Decay(リバーブの距離感設定)といった設定もありません。
しかし、それぞれのコントロールとタッチが有機的に影響し合うことで、さりげないリバーブからサーフミュージック、ダークなアンビエント、実験的なサウンド、轟音の壁と幅広い音を作ることができる。これがこのペダルの面白さだと思います。
(公式のカッコいいデモ)
コントロールについて
まず、どうコントロールが独特なのかということですが、SeamarkのコントロールはツマミがAmount、Impact、Level、Toneの4つ、フットスイッチがBypassとSplashの2つとなっています。Level、Toneは分かると思うのですが、あとは一見謎ですね笑
Amount(左上)はSaturationのコントロールも兼ねていて、ざっくり言うと12時くらいまでがどれくらいリバーブをかけるか、以降はそれに+してどれくらいサチュレーションさせるか、といった感触になります。
Impact(左下)はインプットされた信号をどれくらいスプリングに送るかを決めます。たくさん送るほどスプリング感が増して、ガシャガシャいったりピチャピチャしたり、自然な歪みも出てきます。
LevelとToneも少し特徴があります。
Level(右上)は11時〜12時くらいが原音と同じくらいになるかと思います。かなり大きな音にも設定できるので、後段のエフェクターorアンプをプッシュするのにも使えます。ただ、他のツマミがどれも右に回すほど音量が大きくなる特性があるので、その調整に使う場合の方が多い気がしますね。全部右に回せば新世界です←
Tone(右上)は左に回せばダークに、右に回せばブライトになります。ブライトにすると残響とスプリング感、歪みも増えます。…というか、おそらく正確には、右に回し切った状態が全帯域が出ている状態で、そこから左に回すことで本来出ているリバーブ音とサチュレーション、歪みの帯域がカットされているんだと思います。
Splash(左)は踏むと、その間だけImpactがMaxになります。なのでSplashはImpactを低めに設定してるほどギャップが出て効果的!ということですね。
さらに、Splashボタンを強く踏みつけるとImpactがMaxになると同時にスプリングが揺れるガシャーン!という衝撃音がなります。これをパーカションとして取り入れるのも面白いです。
スプリングの衝撃音は各ツマミの効きの強さによって変わります。筐体を揺らしたり他の場所を蹴っても音はするので、組み合わせて使うとより複雑なことができるかもですね。
各コントロールの詳しい説明はこちらの公式デモが分かりやすいですね。
どんなふうに使ってるか
基本的にはAmountとImpactを低めに設定すれば通常のスプリングリバーブになります。この設定だと、自分の場合、ベースピック弾きのアタック感あるソリッドな音、あるいはパームミュート+ピックのタイトでパーカッシヴな音に残響を足すことで空間を演出する、といった使い方がお気に入りです。この使い方はフラットワウンド弦を貼った楽器と特に相性いい感じですね。
タッチの強さと設定次第ではスプリングっぽいピチャピチャした音も出せるし、リバーブ音を原音より大きくすることもできるので、サーフミュージックっぽいのもいけます。
反対にAmountを12時以降に設定すると、残響とゲインが飽和して大暴れ、Impactを上げれば嵐になります笑
この状態でSplashを踏みつけるとまさに雷。
ハウリングや発振に近い音まで出るし、原音を超えて飽和したリバーブで音の壁を作ることもできます。
この状態でToneを高めに設定しておくと、ピックスクラッチだったりハーモニクス、フィンガーノイズにも敏感に反応して、実験的音楽な空気を作ることもできます。
基本的にボリュームは大きくなるんですが、Levelを下げれば、このサウンドをそのまま背景に下げるなんてこともできます。これは実用的ですね。
(ノイズ系の使い方をしてるНОЙЗというたぶんロシアの方のチャンネル)
欠点とまではいきませんがひとつ特徴を挙げれば、原音が少し引っ込む、あるいは歪みで輪郭がぼやける場合があります(=ベースらしい音が弱くなる)。
なので自分の場合、原音の輪郭を残したままリバーブをかけたいという時は、Deadmanの時と同じく、同社製のLava BoosterかKaslederさんのFreaky Stoneのプリアンプ部をオンにしています。
もちろん効果音だったり背景として使いたい場合は単独でOKです。ちなみにAmountとImpactを高めに設定すると、原音はもはや嵐の中に輪郭だけ見えるくらいになります。
まとめ
楽器の操作に鋭く反応して、穏やかな残響からシューゲイザーみたいな飽和した大音響、凪から嵐まで表現できる面白いペダルだと思います。
反応の良さは、裏を返せば過敏さでもあるので、思わず強くピッキングして欲しくないところでピチャピチャ音が鳴ってしまった…ということも時々あります。なので、設定すれば安定した挙動をするタイプのペダルが欲しい方、スプリングっぽさが気に入らない方だったりには合わないかもです。
ただ、うまく操作できると楽器の延長といった感じでリバーブの距離感だったりもわりとコントロールできるようになる気がして、そのへんのある種の身体性みたいなものもアナログの魅力なんじゃないかな〜と。
余談ですが、個人的にはアートワークのイメージもあって、どちらかというと冬の夜の海みたいな冷たいダークな質感が得意だと思っていたのですが、ToneFactoryのNico(下のデモ)が演奏するとすごく体温を感じるホットな音して衝撃だったんですよね。たしかにアナログスプリングで自然なサチュレーションかかるとなれば、そういうのにも合うだろうし、実際試したらそういう音も出たんですよね。
ペダルにインスピレーションをもらうのは大事ですが、引っぱられすぎるのも良くないですね。あるいは思い込みで音に制限をかけてしまうとか。どんなペダルでも魅力を引出せる柔軟さと、それと対等に渡り合えるような個性が欲しいなぁ。
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