見出し画像

【機材レビュー】MONO VERTIGO ULTRA ELECTRIC BASS GUITAR CASE –重いなら持たなければいいじゃない?–

今回は、前回に引き続きMonoのフラッグシップであるUltraシリーズ、「MONO VERTIGO ULTRA ELECTRIC BASS GUITAR CASE」のレビューをしたいと思います。

結構な詳細なレビューにしたつもりなので、最後まで読むのは大変かもしれません笑
なので最初にまとめてしまうと、このギグバッグは
「予算にある程度余裕があって、しっかり楽器を保護したいけど、ハードケースはちょっとなー」って人、
・重い楽器を背負うのがとにかくつらい人
にオススメ
できるのではないかと思います。

今回レビューするのはベースケースですが、ほとんどの内容はギターケースにも当てはまると思いますので、参考にして頂けると幸いです。


外観

それでは早速外観から見ていきましょう。
通常のVertigo Bassと並べたのがこちら。

旅先の宿で撮影

斜めのストライプが追加されて、よりスタイリッシュになった印象ですね。このストライプ部分は光を反射する素材になっていて、暗いステージ等や夜道での視認性が向上しています。
追加コンテナのTickをつけられるDリングも変わらずあります。

高級感のあるメタルプレート。裏に名前を彫ることもできます。
付属のタグも金属製でしっかりしています。

さらに背負う部分にはFlyby Ultraのようにクッションが追加されています。

スリーブはストラップを収納する用

このクッションが背中のカーブに当たるおかげで通常版に比べて背負心地がやや向上。
ただし、Flyby Ultraほどはしっくりこなかったり、ちょうどいい位置にしようと思うとヘッドが頭より飛び出す位置にきてしまうよう、ここは残念。
高身長(180cm〜?)の人ならちょうどいい可能性はありますね。

プロテクションの進化

通常版と比べて、保護力が格段に進化しています。本当にすごい。

まず内部のクッションがより頑丈になっており、衝撃耐性はもちろんのこと、通常版でイマイチだった折り曲げ耐性も格段に上がっています

Ultraのクッション。高級感もアップ。
通常版のクッション。触った感触が見た目以上に違います。

さらにこの反対、ベッド部表側にも硬めの素材のプロテクションが追加されています。これによりフレーム以外の部分からの衝撃からもある程度ヘッドが守られるようになっています。

分かりづらいけど結構硬い

ネック部分のホルダーもアップデートしているようで、サイズと形状が少し変わっています。
強度も増してるようで、これによりケースのネック部分自体の保護能力も向上している感触です。

Ultraのネックホルダー
両側から挟んで自然にフィットする

さらに、通常版では剥がれやすかったブリッジ保護部分の素材と縫製が大幅に改善しています!(やはり丁寧に入れないとそのうち剥がれるとは思いますが)
通常版では保護素材が擦れないようにする程度の意味合いだった生地が、取れづらくなった上に、明確なプロテクションにアップグレードされました。
具体的には、先ほどのヘッド表側と同じやや硬質の素材に変更されていて、これによりボディとブリッジ等のパーツをより表面からの衝撃から守れるようになっています。
この部分はVertigo通常盤の明確な欠点だったので、うれしい改善です。

かなり強化されたブリッジ保護部分。
こちらは通常版。材質も薄く、無残に剥がれてしまっています…。

さらに各部ジッパーが防水になっている点も素晴らしい。

隙間なく閉じたジッパー。
角度を変えてみると綴じた部分がほとんど見えなくなるレベル。
メインポケットも防水ジッパー

これにより、素材のバリスティックナイロンの防水性と合わせて、雨への耐性が格段に上がっています。

ただし、筆者は念の為レインカバーを使っています。これは水の侵入をさらに防ぐため+さすがに加水分解は避けられないとは思ったためです。つまり、まあ一応ということですね。
ちなみにレインカバーはBasinerのベースケース用レインカバーを使っています。Tickをつけた場合はさすがに対応できませんが、Monoもぴったり収まるサイズです。ただし、ちょっと大きいので、Vertigoの収納の少なさ(後述)もあって仕舞う場所は悩み中です。

このように大幅に強化されたVertigo Ultraの保護性能に関してはこちらのチャンネルで実験動画を見ることができます。


収納ポケットの追加

楽器収納部以外のポケットについても、通常版からやや改善されています。

メインポケットのレイアウト変更

まずメインになるボディ部分ポケットの内部レイアウトが変更されています。
通常版は楽器側に浅いスリーブがあるのみでしたが、Ultraではこの部分が深いスリーブになっており楽譜等をしっかり収納できます。
また外側にファスナー付きのポケットがつきました。
さらにシールドをホールドできるストラップが追加されています。このストラップは取り外しも可能でかなり便利です。
(Flybyのもこのタイプにしてほしかった)

中はこんな感じ。
着脱式シールドホルダーと外側内ポケット
ポケット内側のスリーブ
大きめの止水ジッパーで開閉もまずまず

ヘッド側サブポケットの追加

さらに、通常版ではなかったヘッド部分のポケットが追加されました。
薄型の財布やちょっとした工具を入れるのに利用することができます。

マチがついててガバっと開く
内部には仕分けできる小さな仕切りと内ポケット、鍵などがかけられるカラビナ付き。

筆者はメインポケットにはシールドx2と予備弦、着脱式ホイール(後述)を、ヘッド部分のポケットには工具類とクリップチューナー、ピックケースとライブ用の耳栓をそれぞれ収納しています。

ポケットの不満点

ただし、これらの収納部分は明確な改善といえるほどは進化していません。

まず、どちらのポケットもかなり薄く、最低限のものしか入れられないのは残念。
特に上部ポケットはクリップチューナーを入れても突っ張ってしまうレベルで保護性能も低めなので、それくらいは保護できるようなポケットにした方が機能的だったのではないかと思います。
レインカバーも収まりが悪いので、外側に吊るしたり、収納方法を模索中です。
着脱式ホイールを不要なとき収納する必要もあるので、実質的なキャパシティはさらに制限されます。ホイールを収納する袋とかが付属してないのもマイナス。
また、メインポケットはあまり大きく開かないので、もう少し大きく開いてもよかった気がします。

見た目はスマートだし、もともと少なかった収納が追加されただけうれしいんですけどね。
幅があれば余計なものを入れてしまって重くなってしまうのは確かですが、もう少し入ってもいいんじゃないかなーと思います。

拡張アイテムTIck2.0の不満

こうした収納の小ささについて、Monoの設計思想としては「必要ならTickを追加してね!」ということなのかもしれませんが、Tick2.0も必ずしも使いやすくはないんですよね。

たとえば、

  • 中の仕切りや小物入れが小さすぎて、フタ裏のポケットがほとんど機能しない

  • フレームの強度が低く、機材の保護力が弱い

  • 構造上つけたままの楽器の出し入れがしづらい
    →Tickの重量で楽器収納部を開くと、表面がだらんと下がってしまって危ない

  • ペダルボードが収まるものの、ギグバッグに装着して持ったときに重心が後ろに下がりすぎる

  • Tick2.0自体の防水性が高くないわりに、装着するとレインカバーに収まらない

  • Vertigo Ultraがストライプになった分、Tick2.0が浮いてしまいデザイン手的に統一感がない

このように、Tick2.0にも改善してほしいポイントが多数あります。
というかMonoはTick Ultraは出さないのでしょうか?
デザインを合わせて防水ジッパーにしたアップデート版に期待したいところです。

このへんの拡張アイテムについては、当初はもう少しいろいろ展開しようとしていたんじゃないかという気配もあったんですが、需要がなかったんでしょうか…?
海外を含めた移動の多いノマドプレイヤーとしては、このへん期待したかったところ…。

サードパーティ製でもいいので、この記事を読んで頂いている方のなかにメーカーの方いたら、いかがでしょう?笑 たとえば、薄型でPCバッグになるバージョンがあってもいいですし、ミリタリーバッグのモールシステムのように、複数のアイテムをつけられる構造にしても面白いと思います。

とにかく、本体の収納力が低いのに拡張の選択肢も物足りないという点は明確に改善してほしいところですね。
もちろん「移動するときは最低限の荷物!楽器をしっかり守れればOK!」という方には全然問題ないと思います。

着脱式ホイール

本製品の目玉はやはり着脱式のホイールだと思います。

良いところ

「重いならいっそ持たずに転がせばいい」

これはある程度正解でしょう。少なくともマグナカート等の外付けなしで取り回しの選択肢が増えたことは革命的です。

ホイール自体の作りは非常によく、スムーズに転がすことができます。
腰と肩への負担とはおさらばです。

また、ホイールの追加に合わせて、転がす際に邪魔にならないようにストラップが着脱式に変更されています。
この点は背負心地に影響が出るんじゃないかと懸念していましたが、全く問題ありませんでした。むしろ片側だけ出して肩にかけるといった使用が可能になり、利便性が向上しています。つけ外しは正直手間ですけどね。
カラビナ部分の耐久性については、長く使ってみないとわかりません。Monoは終身保証がついていますが、アメリカの本社まで送るのか…と考えると、やはり壊れないことに期待ですね。

微妙なところ

すごく便利ではあるものの、このホイールについても完璧ではなく、改善してほしい点もやはり多々あります。

まず問題なのは、ホイールを装着したままだと楽器の出し入れがややしづらいという点です。
壁に立てかけたりはできるし、電車内で立てて持つことは十分可能で、そうした取り回しは問題ありません。
しかし、ホイールの装着位置の関係で楽器を取り出す際はやや不安定になってしまうんです。

こんな感じに裏面が上にくるように立てかける分には問題ないのですが…(説明がむずかしい)

このように、表面を上にするとキャスターが地面は触れてしまい不安定になります。

この取り外し式のホイールには向きがあって、ちゃんとつければある程度は問題なく出し入れできます。なんなら一応自立する程度には安定してます。
なのでコツを掴めばわりとなんとかなるのですが、それでもやはり不安は残ります。

解決策としては、ケースの前に何か別の荷物を置いてストッパーにするか、あるいはホイールを半分はずすことです。

半分だけはずした状態

ただし、ホイールを半分はずすのも立ったままでは難しく、煩わしい動作が必要です。
さらに半分はずしたホイールも邪魔です。引っ掛ける可能性もありますし、踏んで壊れてしまう可能性もあります。
できれば、そのまま干渉しない場所に動かせる機構が欲しかったところですね。

また、転がす際に掴むハンドルが持ちづらい点も残念。

細く硬いので若干指に食い込む

サイドのハンドルがあれだけ持ちやすいのに、ヘッド部のハンドルは薄く、手に食い込みます。
なぜサイドのハンドルと同等の太さで、転がす際に持つ角度を考慮したものにしなかったのでしょうか?
現在は市販のグリップカバーを巻いて対応していますが、明確に改善してほしい点です。試験段階でどうにかできなかったのでしょうか…?

あと気になるのは、持ち歩く際、斜めに寝かせて引きずることを想定している構造になっている点です(動画参照)。

垂直に近い角度で持ってショルダーストラップ上部を引く、あるいは反対に押して運ぶといったことも可能ではありますが、コントロールしづらくなります。
別にいいっちゃいいんですけど、なんだかドラクエの棺桶みたいですよね。
上からの衝撃や踏み抜きの可能性も不安ですし、レインカバーをしても背中にあたる部分が覆われないために地面からの泥撥ねも気になるところです。

それでもメリットは大きい

とはいえ、着脱式ホイールの追加によって運搬方法の選択肢が広がった恩恵は大きいです。
筆者は泊りがけの移動が多いのですが、今回のホイールの追加により、別記事で紹介のFlyby Ultraと併用するという選択肢ができました。
具体的な運用としては、

  • 機材が多いときはVertigo Ultraを転がしてFlyby Ultraを背負う

  • 機材が少ないときはVertigo Ultraを背負ってスーツケースに着替え等を入れて転がす

  • 機材も宿泊数も多いときはVertigo Ultraを背負ってスーツケースにFlyby Ultraを載せて転がす

といった使い分けが可能になりました。

つまり楽器とバックパック、どちらが重いかによって背負う方を変えることができます。
それぞれの状況に応じたオプションを選択できる、これは楽器運搬において革命的です

Reunion Bluesとどちらを選ぶか

ギグバッグを比較する際、Monoとよく比較されるのがReunion Bluesだと思います。

プロテクション

特に、保護力はReunion Bluesの方が高いというレビューが見られます。
実際、地面に寝かせて前面のフタを開くタイプのReunion Bluesに対して、Monoは垂直に立てたまま楽器を取り出せることをコンセプトとした結果、構造上、ケースの前面を折れ曲がる素材にせざるをえないという問題があります。
通常版のVertigoでは、この点が明らかに不安材料でした。前面だけならまだしも、なぜか基盤部分もクッションの剛性が低く、ある程度の力で折れ曲がってしまうという問題がありました。

その点、上記のように、Ultraは基部のプロテクションがよりしっかりとした素材になり、ネックサポートや表面の内部構造もより強固なものになったことで、剛性がかなり改善しています。通常の運用の範囲ではびくともしないでしょう。抱えた際の感触が明らかに違います。

上からスーツケースが降ってきてボディ前面部に角が当たる、荷物に挟まれてネックがギロチン状態になるといった、ピンポイントの衝撃を受けない限りは問題ないのではないでしょうか。
そこまで考えるとロストバゲージや盗難の可能性の方がよほどありえます。この辺はAirTag等のGPS機能付きのタグ等でも解決できていない問題ですね。
究極的には、プロテクションをこれ以上向上させるよりも、追加座席料金を払い機内持ち込みにする、自家用車・専用の機材運搬車両で運ぶという具合に、運搬方法自体にコストをかけたほうが良いという話になるように思います。

取り回し

また、可搬性と取り回しではMonoに軍配があがるように思います。
まず、通常版からおなじみの底部ソールも素晴らしい。雨の日でも地面に置けるし、安心感が違います。
さらに重要なのが背負った際の高さが低いという点です。これによりヘッドを引っ掛ける心配が少なくなり、背負心地やバランスの点でも有利になっています。
ただし、前述の背面クッションの位置を合わせると、通常版Vertigoより高い位置に落ち着くことにはなるとは思います。この点についてはFlyby Ultraと同じで、想定している体格がやはりアメリカンサイズな気がします…
というか、なんでほとんどのギグバッグって背負った際の位置が高いんでしょうね。

コンセプトの違い

完全に私見ですが、全体的に、Reunion Bluesは背負えて普段使いできるハードケースに近い印象です。とにかくしっかり楽器を守る、これをなにより優先しているのではないかと。
対して、Monoはハードケースに迫る保護力を持ったギグバッグであるように感じます。ハードな普段使いと多様な取り回しを前提にしつつ可能な限り楽器を保護する、といった方向性なのではないでしょうか。

両方の良いところを合わせた製品が出たら最強なんですが、プロテクションをアップデートした今回のVertigo Ultraはそれに近い製品であると思います。

もちろんぴったりとしてスペースに遊びのないMonoに比べると、ある程度の変形フォルムや角度のついたヘッドの楽器を収納するにはReunion Bluesの方が断然向いていると言えるでしょう。
また、体力に自信のある方や最大限の保護力を求めている方にはReunion Bluesがオススメではないでしょうか。

なお、Reunion Bluesの新作「Expedition」は、MonoのTickのように拡張コンテナを搭載できるようです。実際、購入時にかなり迷いました。これもまた、Monoとの良いところ取りのひとつのかたちだと思います。
とはいえ、基本設計はこれまでの製品を踏襲しているので、マイナーアップデートと考えていいように思います。これはMonoのUltraについても言えることで、やはりそれぞれに譲れない設計思想だったりがあるんでしょう。
Expeditionは国内販売がまだないようなのですが、取り扱わないんですかね。

さらに、軽さを求めるならGeek in BoxのRosiéが気になるし、収納で言えばBasinerのギグバッグも気になるところです。このへんもじっくり触ってみたい…!

まとめ

というわけで。
Vertigo Ultraは楽器ケースとしては高額な部類に入りますが、中にいれる楽器の値段と取り回しの良さを考えれば、まあまあ納得の値段ではないでしょうか。
通常版ではまだ不安だったプロテクションが強化されたこと、そして着脱式ホイールによって運搬の選択肢が増えたことで、Go Playの名にふさわしいケースになったように思います。
改善欲しい点はまだまだありますが、その点は今後のバージョンアップにきたしつつ、大切な相棒を預けるにふさわしい、現状最も有力な選択肢のひとつなのではないかと思います。

いいなと思ったら応援しよう!

Kamo
面白かったら投げ銭をいただけると励みになります〜。 記事につかえる時間が増えて、さらに切り込んだ内容にできる…はず。