出産後に体型が戻らないママに共通するある理由とは!?~産前の骨盤矯正のすすめ~
これまで私は、産後の体型の問題に悩む多くのママさんたちと向き合ってきた。
これには現在私が運営しているスタジオがママの町、二子玉川にあることと、以前独立する前の職場が産後の骨盤矯正を強みにした美容整体サロンというのも、その要因の一つだ。
また今年32歳を迎える私の周辺では、新しくママになる友人が毎年のように誕生している。
(ちなみに私がパパになる予定は当分ない。。w)
そして思う。
ママが抱える産後に変化する体型の悩みは根が深い。
ここでは、産後の体型がなかなか改善しないママに共通するある理由とその予防策を紹介する。
もちろん、すでに出産を経験したママに必要な改善策も、提供するつもりである。
骨盤矯正って本当に必要?
出産したことがきっかけになり、スタイルや姿勢が悪くなり、骨盤や背骨が歪んだという実感を持つママは多いはずだ。
だが、果たしてこれは事実なのだろうか?
産後すぐに、骨盤矯正やヨガを始めれば良かったと、後悔する意味はあるのだろうか?
まずはこの思い込みから疑ってみよう。
そもそもこの地球上に存在する全ての生命体はの目的は、生存と繁殖だ。
私たちの体だってその目的を達成できるように進化してきた。
であれば、子どもを産むことは種として成功する為に、必ず必要な行為である。
だから、出産によって致命的なダメージを負うのは進化の過程を考えるとおかしい。
と言いたいところだが、そう結論付けるのはさすがに乱暴すぎだろう。
だが昔は、生まれた赤ちゃんが生き残る確率が、今の先進国とは比べ物にならないほど低かったのは誰もが知っているだろう。
したがって原始時代には、女性の生涯出産回数は7,8回とも言われている。(私の祖母の時代ですら子供の数が5,6人いるのはそんなに珍しくない)
さてここで疑問が生じる。
産後の骨盤矯正や骨盤ベルトなどの概念すら存在しなかった時代に、7,8回もの出産を経験した私たちの祖先の体には、いったいどれほどのダメージがあったのだろうか?
実際、この質問に正しく答えることは不可能だが、そういった視点から行われた研究はこれまでにいくつもあるので紹介しよう。
研究の結果|出産が体に及ぼす影響
(この章は研究結果の紹介なので、次の章の考察までとばして読んでもらっても問題ありません。)
Damenら(2001年)によると、骨盤周辺(腰痛を含む)の痛みを強く感じており、それに加えて、骨盤に左右の歪みがある女性では産後に発生する身体の問題が、解決しにくいとしている。
続いて、2002年に7882人の産後女性を対象に行われた追跡調査によると、産後5年~7年の女性のうち44.6%が多少の尿失禁を経験していた。
さらに産後6年以上経ってから、尿失禁がみられるようになった女性が31%もいたことがわかった。
※Wilsonら(2002年)
また、96名の女性を対象に行った研究では、普通分娩(帝王切開でない)によって骨盤底筋群が弱化することが示され、その回復は2カ月たってもみられなかった。
※Allenら(1990年)
骨盤底筋群の弱化は、内臓下垂し下っ腹が出るのを促し、姿勢の維持能力が低下するだろう。
そしてさらに重要なことは、これらの問題(尿失禁)を抱えた女性に骨盤底筋群を鍛えるトレーニングをした結果、40%には改善がみられなかったとしている。
※Bo(1990年)
考察|出産が体に及ぼす影響
これらの根拠を総合してまとめると、確かに出産は体に何かしらのダメージを与えると言える。
(特に骨盤の仙腸関節や恥骨結合、骨盤底筋群とその周辺組織、腹直筋とその周辺組織など)
しかし、それはただの引き金にしかならない。
あなたのママ友の中には、産前と産後で体型に変化がない人もいるだろう。
なぜ個人差が生じるのだろうか?
ここでは、産後に問題が解決しない女性は、普段の体の使い方に良くない癖を持っていたと、推測されていることに注目してほしい。
しかも、妊娠するずっと前から!
つまり、昔から姿勢や歩き方や呼吸などのやり方が適切でなかったことが原因で、妊娠・出産による体へのダメージを、通常よりうまく回復させることができないということだ。
これは、産後に骨盤底筋群の機能を回復させる外科的な手術を受けた女性でも、再手術が必要になる事例が多いことの根拠にもなる。
こういった外科手術には、体の使い方などの全体的な戦略(筋の発火パターンや遅延、その他の筋との協調性など)を改善させる効果はないからである。
言ってみれば、腰痛持ちのクライアントに、腰や股関節の筋肉をほぐしただけで、腰に余計な負担をかけているその人の動きの癖に対処しないのと同じだ。
産前の骨盤矯正のすすめ
さて、ここまでの内容を誤解を恐れずに簡単に言い表すと、産後の骨盤の歪みの原因は、産前の骨盤の歪みである。
そして出産は、産前の骨盤の歪みの程度を悪化させるきっかけになると言える。
私が“産前”の骨盤矯正をオススメする理由はここにある。
女性が産後の体型の問題に対処し始めるタイミングは、早ければ早い方がいい。
たとえ、妊娠・出産の予定があるないに関わらずだ。
そしてここまで読み進めてきたのなら、すでにお気づきだとは思うが、ここでの骨盤矯正が意味するのは、カイロや美容整体の類ではない。
歩き方や姿勢、呼吸などのあなたの脳に刻み込まれている、アンバランスな体の使い方の癖を改善することだ。
その為には、ベッドに寝ているだけではなく、エクササイズによって脳を使う必要があるのは明白だろう。
もちろんこの原則は、すでに出産を経験しているママさんにも当てはまる。
産後だからもう遅いということはない。
重要なのは、骨盤矯正をするかどうかではなく、産前から抱えていたはずの根本の問題に対処するかどうかだ。
エピローグ~パーフェクトな回答~
とはいえ、育児をしながら効果的なエクササイズを継続するのは至難の業だろう。
時には癒しも必要である。
なので、カイロや整体やエステが無意味だとは思わない。
むしろ大いに必要だ。(現に私の提供するサービスにもこれらの内容は含まれる)
だからこそ、本当に産後も美しく健康的な体型を保ちたいのなら、ここで説明してきた内容を理解し、今自分に必要な効果的なサービスを、自分で主体的に選択できる知識を得ておけばいい。
そしてもしその場を楽になりたいだけでなく、10年20年後の未来の為に身体づくりをしたいと望むなら、あなたを担当する専門家にこう尋ねてみると言い。
「私の体を根本的に治すのに、あなたは私の体のどの部分を改善させるつもりですか?」と。
即答で、「“脳”です!」ときたらパーフェクトだ。
参照『The Pelvic Girdle: An integration of clinical expertise and research, 4e / Diane G. Lee』