かみさま27|山歩きで出会う神々:猪烈山神(ちれつざんしん)
ある山の奥深くに、静かに佇む木の形をした神がいる。その名は猪烈山神(ちれつざんしん)。その姿は、荒々しくも温かな命の力が宿る猪に似ていると言われ、この神は森や山のすべての気配に敏感で、訪れる者の心持ちを一瞬で見抜く力を持っている。
森に足を踏み入れる者が、静かに自然の営みに耳を傾けているならば、猪烈山神は優しく微笑み、道を開く。しかし、無駄に木を切り倒す者、動物を捕らえにくる者が現れると、その表情はまるで瞬間湯沸かし器のように硬直し、怒りに満ちた目で相手を射抜く。木々の間を一気に駆け抜け、岩をも砕く勢いで体当たりし、侵入者を追い払うのだ。
かつて、この山に戦をしかけようとした者がいた。彼らは、山の頂に火を放ち、自然を無残に焼き払おうとした。その時、猪烈山神の怒りは頂点に達し、静かに燃え上がる炎のように体全体が震えた。火山の神が足元で唸りを上げ、台風の神が空を黒雲で覆うと、三柱の力は一つに結ばれ、嵐の如き怒りの奔流が山を駆け抜けた。炎を放った者たちは、神々の猛りに恐れをなして逃げ出し、二度と戻ることはなかった。
今もこの山には、猪烈山神が静かに見守っている。もし偶然この神に出会ったならば、穏やかな気持ちで臨むことだ。そうすれば、猪烈山神は優しい眼差しで、あなたを静かに見守り、その道行きを助けてくれるだろう。
※この物語はフィクションです。実在する人物や宗教団体とは関係ありません。