【DAEMON X MACHINA】対戦環境の変遷から見たゲームバランスの問題点、およびその改善案の考察
はじめに
本稿は株式会社マーベラス様からリリースされているゲームソフト『DAEMON X MACHINA』におけるゲームバランス調整の一助となるように焦点を置き、同ソフトにて10月10日に実装された仕様のうち決闘モードを含めない対戦全般におけるゲームバランスの所感と、それを踏まえた提案を記したものです。
本稿執筆者は執筆時点でのプレイ時間は576時間、最高賞金額は177,060,970, 賞金額ランキングの過去最高は2位であり、平均的なプレイヤー層よりも同ソフトにおける対戦に関して無知ということはないと思いますが、あくまでも1人のプレイヤーの解釈にすぎませんので、どうか多くのプレイヤーの声に耳を傾け、そして可能ならば一度対戦へ身を投じてみることを通じて、バランス調整の検討をして頂ければ幸いです。
対戦におけるパーツバランス
対戦に関して触れる前に、まず対戦が実装される以前から現在に至るまでに共通するパーツバランスの所感に関して述べておきたいと思います。
アーマーに関しては、腕部と脚部パーツに関しては比較的広く選択肢が取れるようになっており、特に腕部は使用する武器に合わせて連射性サポートや射撃間隔サポート、リロードサポートの数値を見ながらアタッチメントも併用して微調整できるようになっていて多様性が十分確保されているように思われます。
後述しますが、対戦で使われる武器の傾向からリロードサポート値が高いパーツが対戦で相性が良いため、連射性が高い武器や射撃間隔が短い武器が対戦環境で使われるようなバランス調整が入れば、さらに選択肢が増えてくると思います。
頭部パーツに関してはサイト範囲が広いもの以外は総じて使い勝手が悪いため、ロングソード、フローレスドミニオン、リベレイター、ムソウが大多数を占めています。ゲームスピードが非常に高速なこともあり、バランス調整で他の頭部パーツに異なる強みが増えたとしても恐らくサイトサイズが最も重視されるパラメータになることは想像に難くありません。
胴体パーツが最も多様性に乏しく、ヘカトンケイル以外はほとんど見かけないという状況になっています。ブースト速度とメモリ容量、耐久力がいずれも高く、更にヘカトンケイルよりも速い胴体は積載重量あたりの速度減少が著しいために、ほとんどの場合でヘカトンケイルの方が速くなってしまうため、ヘカトンケイル以外の胴体に強みを見出すこと自体が難しい状況にあります。最後にも触れますが、間違いなく胴体パーツのカテゴリは大幅なテコ入れが必要だと考えています。
武器全般ですが、ほとんどの武器の弾速が未だにゲームスピードに追いついていない中、辛うじて弾速70000以上かつダメージが高い武器が使われている状況です。有志の検証や執筆者の経験に基づいた経験知ですが、ロックオン時に撃った弾が自機の加速や慣性を反映した予測射撃になっていないことも、弾が当たらないことの一つの要因と考えられています。おそらくこの辺りの仕様に関してはプレイヤーよりも開発の方の方がよくご存知だと思いますので、誤りがありましたら申し訳ありません。
当てられる武器を使っていたとしても当てられる場面はそう多くはないため、当たった時の一発あたりのダメージが高い派生の武器やアタッチメントが好まれる傾向にあると思います。後述しますが、これは一方が敵を見失った瞬間であったり、撃ち合いになっていたりなど、シールドシフトとウィングシフトが有効に使用されていない局面で大きくアドバンテージが取れる上、シールドシフトやウェポンのシールドの破壊の際に有効であることが関係しています。
対戦環境の変遷
10月10日のアップデート以降初期の段階では、更新が完了した12時から2時間足らずでショルダーウェポンのディヴォージョンの有用性がプレイヤーの間で認知されるようになりました。既に修正のアップデートが行われておりますので多くの説明は要しないとは思いますが、ディヴォージョンを使用することでダメージを受けて減少したVPを任意のタイミングで回復することができたため、対戦での勝敗は5分間の戦闘の後お互いにVPを回復してドローという光景が多く見受けられました。
現在の仕様でも同様ですが、タイムアップ時の勝敗の判定は残VPの割合で決定されるため、自機のVPが100%まで回復していれば僅かでも敵機のVPが減っていれば勝つことができる上、敗北した際の賞金額の減額幅が非常に大きいことや、ドローに持ち込めれば賞金額を減らさずに済むことから、より消極的に戦った方が賞金額を維持・上昇させやすいという環境になっていました。また、上述したようにゲームスピードが非常に速いことやロックオン時に撃った弾が自機の加速や慣性を反映した予測射撃になっていないことからも、積極的に相手にダメージを与える手段が乏しいことで更に上述した環境を支持していたものと考えています。
そのため、弾速がずば抜けて速く射撃精度が高いフェイルノートは唯一当てられる射撃武器として最も使用率が高かったです。またフェイルノートは次弾には射撃間隔の数値が判定される武器ですが、マガジン数が1のためリロードサポート値が高い腕部と非常に相性が良く、クサナギやオートス、フラッシュファントムなどで非常に高い連射能力があったため、試合の終盤や隙を見せた相手に集中的にダメージが出せることも大きな強みでした。
アップデートから1週間後ぐらいまでに、スタンやSTM切れを引き起こせれば破壊まで確実に試合を運ぶことができるパフォーマンスを有していたアークガンを持つプレイヤーが出現し、タイムアップ判定勝ち狙いのディヴォージョン持ちに対するメタとして頭角を現すようになりました。
アークガンはロックオン時間に関わらず射程内でロックオンした敵には必ず命中する仕様からも、弾が当たらない環境下では確実にダメージを狙える数少ない攻撃手段だったといえます。またそれゆえにタイムアップ判定勝ちを狙う戦法にも相性が良く、タイムアップ間際に自機がVP100%の状態で敵にアークガンをカス当たりでもさせればVPの割合で勝利できるため、当時の使用率は徐々に高くなっていきました。
同様に、アークガンに対するメタとしてシールドを構えてVPが減るのを守る戦法も徐々に広まっており、特に最も強固だったガイアプレートを積極的に破壊できる武器がフェイルノートぐらいしかなかったため、フェイルノートとアークガンと盾でじゃんけんのような3すくみの関係にあったように思われます。
最終的にはアークガンと盾とディヴォージョンを搭載してとにかく被弾しないよう高速の機体を使って最後の数秒にアークガンを当てる戦術が対策のしようがないトップメタとして存在していました。この環境がその次のアップデートの11月14日まで継続していました。
来る11月14日
多くの対戦プレイヤーの悲願だったであろうディヴォージョンの禁止が決まったことで、それ以前よりも積極的にダメージを与える戦いが増えてきました。
強化されたタケミカヅチ、スターゲイザー、サルベイションレイなどの弾速70000~80000代のレーザーも対戦で用いられるようになったことで武器にも選択肢が増え、アーマーの選択肢もレーザー防御を考慮する必要が出てきたため、少なくともパーツ選択の多様性は以前より改善したといえると思います。ガイアプレート対策としても注目を集めたレーザーでしたが、シールドの耐久力はアーセナルに対する計算式とは異なっているのか、レーザー防御が低いはずのガイアプレートがレーザーで破壊できない仕様であったため、盾の対策とアーセナルに対する有効なダメージソースとして一貫しているフェイルノートほどの汎用性は有しておらず、依然としてフェイルノートが最も信頼できる攻撃手段という認識になっていると考えています。
前環境で猛威を奮ったアークガンは依然として強力でしたが、盾やシールドシフトの活用技術が広まったことと高火力の撃ち合い武器が多く登場したことから逆風となり、その数はかなり減った傾向にありました。また、高速戦闘の撃ち合いを劇的に補助するプロセッサーのエイムアシスト、エイムアシストに対して手軽にサイティング妨害ができるガルーダⅡなどの採用率が高くなっていったように思われます。
上述したパーツを用いた撃ち合いの対戦環境が熟してくると、特にサルベイションレイのフルチャージ時のダメージが抜きんでて高いため、被弾後にアドバンテージを取り返しづらいこともあり、シールドシフトやウィングシフトを活用してリスクの高い撃ち合いを避け、隙を見つけて攻撃を当てるような差し合いの戦術を取るプレイヤーが増えてきました。差し合いでは交戦距離が目まぐるしく変化する傾向にあり、どの武器を使っても相手の粒子兵装に対しての有効打がほとんどないことからも、ウィングシフトとシールドシフトを組み合わせた強固な守りが絶対的なものになっていると考えられます。
対戦バランスの問題点
10月10日のアップデートの最終結論が高速シールドアークガンディヴォージョン機だったように、現在に至るまで対策のないトップメタとして粒子兵装活用型差し合いフェイルノート機が存在しているように思われます。特にプロセッサーのブーストアップⅢとのシナジーが高く、とにかく被弾しづらいことが大きなアドバンテージになっていることが前環境と共通しています。
つまり、ディヴォージョンがなくなったとしても高速機の消極的な戦いを咎める術が存在しないことが一つ問題点として挙げられると思います。
そもそも、ウェポンのシールドや粒子兵装のウィングシフト、シールドシフト、ミラージュ、更にブリンク、フィールドエリアのリペアタンクを含めると、攻撃を凌ぐための選択肢があまりに多いため、そのすべてを併用した戦術が取れること、仮に速度で不利な重量機がそれらを活用して被弾を抑えられたとしても粒子兵装を駆使した相手に1発の攻撃を通すことさえ困難なこと、通そうとすれば守りの粒子兵装を活用できないため被弾するリスクの方が圧倒的に高いことを考慮すると、極論を言うと最終的には機体の速度や武器の弾速以外のパラメータが些末なものになってしまっていると言わざるを得ません。
当然ですが、上述した防御手段を高速機もまた同様に併用することができるため、リペアタンクを活用してタイムアップ前の数秒間を回復しながら凌ぐことも可能であるために、これを突破してVP割合でアドバンテージを取るための手立てが非常に限定的になることは明らかなことです。
対戦バランスを考慮したパーツバランス、ゲームシステム
これまでの対戦環境の考察を踏まえてパーツバランスの調整を行う際、まずパーツ間でのバランスと対戦におけるバランスは一度切り離して考えなくてはならないと考えています。
11月14日の調整のように、対戦で使われていないパーツの上方修正をいい塩梅で行うのがプレイヤー側としても好意的に受け止められることは明らかですが、機体の速度や武器の弾速、頭部のサイトサイズなどをすべて一定のボーダーで決めて差を小さくしたとしても、今のゲームシステムを基準にするとプレイヤー側はその中で各パーツの特定パラメータに絞って最適なものを選択するだけであり、多様性に繋がるかどうかは別の問題であると考えています。
ディヴォージョンが健在であった最初の環境はあまり評判の良いものではなかったですが、ドロー狙いの消極的な戦いばかりでは上位にいけないことも事実だったため、環境後期ではいかに被弾せず相手を捕捉し続けて最後の数秒を攻められるかという駆け引きが成り立っていました。おそらく、どのようにパーツバランスを調整したとしても、対戦においては対戦ゲーム足りうる何らかの駆け引きは必ず残ると思われます。
逆に言えば、駆け引きが生じなくなる要素(普遍的な詰み要素)さえ調整で変えてしまえば、プレイヤー間でメタゲームが発生することで勝手に対戦環境が回るようになると考えています。
現在の環境では高速機に対する有効手段が乏しいことが問題であるので、仕様変更をするならまずそれを支えている、
①ヘカトンケイルの速度と汎用性の両立
②フェムトゲージ100%と人体改造込みならウィングシフトとシールドシフトがほぼ常にどちらかが使える仕様
③一番命中が見込めるフェイルノートですら特定のタイミングでしか当てられないゲームスピードあるいはロックオン時の予測射撃の精度
④タイムアップ時判定がVP割合性(現行ではVPの高い重量機を使うメリットが全くない)
などを考慮する必要があると思います。④に関しては特に、何らかの調整を行ってゲームスピードが緩和されたり、粒子兵装が弱体化ないし高頻度で使えなくなったとしても、重量級の胴体パーツが全く使われない可能性を考慮すると絶対に変更すべき仕様の一つだと考えます。
さらに言えば、タイムアップ時の判定をVPの割合ではなく数値の高低にするならば、重量機とリペアタンクの親和性も考慮すると、やはりリペアタンクも排除する必要があると思います。
長くなりましたが、対戦環境の変遷から見た対戦でのゲームバランスの問題点、およびその改善案の考察は以上になります。以下にその簡潔なまとめと、これまで触れてきたこと以外で個人的にあったら良いなと思う仕様変更の提案を記します。
バランス調整の提案まとめ
①ヘカトンケイルがあらゆるパラメータを両立した汎用性を有しており、他の胴体の個性を奪っているため、他の胴体パーツの性能を底上げするかヘカトンケイルを弱体化させる、あるいはその両方
②フェムトゲージ100%と人体改造込みウィングシフトとシールドシフトがほぼ常にどちらかが使える仕様で、ただでさえダメージが出しづらいゲームシステムなのにそれを助長しているため、効果量を減らすか使用時間を減らす仕様に
③一番命中が見込めるフェイルノートですら特定のタイミングでしか当てられないゲームスピード、あるいはロックオン時の予測射撃の精度であるため、①と②の修正を兼ねて全体的な武器の弾速を見直すか予測射撃の仕様そのものを大幅に変更
④上記の修正をすべて行ったとしても機体速度が速いほうが有利であることが考えられるため、タイムアップ時の判定をVPの割合ではなく数値で判定させる仕様に変えることで高機動低耐久側が積極的に戦う条件を取り付ける
⑤重量機の消極的な戦法が通用するようになれば、重量機がリペアタンクを使うと軽装な高機動機の総火力が足りなくなることを踏まえ、リペアタンクを全マップから削除(カスタムマッチでは有無を選択できると良いかもしれません)
そのほかの要望
①賞金額のランキングに関して、ランクマッチと決闘では勝利条件も仕様も稼ぎやすさも維持のしやすさも違うルールのものなので分けてほしい
②決闘に関して、無知な初心者に対する配慮として申請・受託後の決闘開始前に賞金額の変動などについての解説をするポップアップがクッションとしてあると親切(オンオフできると好ましい)
③(重要パラメータの平均値を易々と揃えてしまうことへの危惧を上述したのは承知ですが)アーセナルのデザイナさんの仕事がとても秀逸で、外見的に使いたい頭部パーツがいくつもあるので、サイトサイズは平均的に上方修正して選択の余地があると嬉しい
④アーセナルのペイント時、任意のカラーリングに設定する際のRGB値が出るようにしてほしい(自機再現ファンアートも捗るし、パーツ毎にカラーリング弄りたいときに再現性があってほしい)
まだ色々考えていることはありますが、この辺で