猫も杓子もインドパシフィック
近ごろ、国際関係の流行は「インドパシフィック」である。クアッドとか、それにかかわる国家間の枠組みも色々増えてきています。背景には、中国の軍事的、経済的な急拡大を脅威ととらえ、それへの対抗軸を築こうという流れがあるのは、いうまでもありません。
しかし、丸善の「地政学事典」という権威のある事典で、このインドパシフィックに関連するページを執筆したのは、なんとこの私である(笑)。あえて、「(笑)」とするのには、よくも悪くも、いかにも私らしいと、私自身が思うからです。
なんで、私が執筆者となったかは、この辞典の企画時点で、当時は「自由と繁栄の弧」と呼んでいましたが、たぶん誰も学者でまともに文章に書いた人がいなかったんですよ。私だけが、ダイヤモンドオンラインでしたが、まともに書いていたんです(笑)。他に誰もいないから、こんな場末の学者に依頼するしかなかったんです。
この「自由の繁栄の弧」について、最初に発表したのは、第一次安倍晋三政権時の安倍晋三首相、そして麻生太郎外相でした。当時は、まともに取り上げるまともな学者なんていなかったわけです。
しかし、それは「インドパシフィック」というハイカラな言葉に変わり、今や猫も杓子も唱えるようになった。安倍首相が歴代最長の長期政権を築くと、逆に、首相にゴマをするように「インドパシフィック」と言い出した輩も少なくないように思います。
ところが、最初にこれをまともに文章化していたはずの私は、いろいろ忙しかったこともあり、「インドパシフィック」から距離を置いていました。気が付けば、あっちのほうでなにやらにぎやかにやっている。
いまさら、その中に入っていくのも面白くありません。どうせ一番後ろの末席に座らせられるだけです。だから、また先をいって「新・日英同盟」でも始めたいと思います。
これも、ダイヤモンドオンラインの連載を始めた14年前から、その必要性をずっと訴えてきました。それだけで、一冊の本になる分量は書いてきたのでね。まあ、誰にも取り合ってもらえませんでしたけどね。そのうち、トレンドになるでしょう。
ブレグジットが決まった2016年、英連邦の潜在的な力の大きさ、英国が再び、世界に出ていくことを主張しましたが、当時は相手にされませんでしたね。ですが、英国のTPP加盟申請、空母クイーンエリザベスが日本近海に来ていることなど、もはや「グローバル・ブリテン」を荒唐無稽な話と思っている人は、いないんじゃないでしょうか。
私のたぶんいいところは、発想は常に先をいっている。そして、はっきりいって当たります。例えば、「野戦病院」がそうでしょう?5月の時点で、「野戦病院」の必要性を訴えていたのは、私くらいなものです。
弱点は、その発想を、実証したり、実現したりする粘り強さに欠ける(涙)。その前に、次のことに興味が移っちゃうんですよね。もちろん、一度主張したことを捨てたりはしませんよ。ときどき、思い出して取り上げたりしながら、進めるんだけど、その時は他の人がわーってやりはじめてたりするわけです。
僕には、粘り強く発想を実証してくれる、相棒がひつようなのかもしれませんね。
ブレグジット決定時の、英連邦の潜在力を主張した論考を添付します。