親父と俺(9):50年前、自分で授業をする小学生たち
代用教員から始めて、通信教育で教員免許を取得し、小学校の先生になった親父だったが、大人気の先生であった。
俺が幼稚園の頃、大洲市内最大の学校だった喜多小学校に勤めていたが、毎年、来年度の担任を決めるころになると、父兄が次々と校長先生を訪ねたという。
「来年度、上久保先生は何年生を受け持つんですか?」
「ぜひ、うちの子を上久保先生のクラスにしてください」
「上久保先生に担当してもらうと、子どもが勉強するんです」
「上久保先生のクラスだと、子どもが学校が本当に楽しいという」
。。。。これ、一応本人の自己申告です(笑)。
でもね、これは嘘でも大げさでもないと思う。親父の言うことに納得できる場面をたくさんみた。
休日に、学芸会や運動会など学校行事の練習、市内のサッカー大会の練習などに連れていかれてみたもの。
小6の時、親父が俺の学校に赴任してきたときの、親父のクラスの様子。
まるでそこだけが異空間のように、子どもたちが躍動していた。いや、小学生なのに、まるで大人のようにみえる、子どもたちの振る舞い。
そういうものをみたのだ。
そして、「上久保先生伝説」の1つがここにある。
喜多小学校時代の話。親父が出張で不在の日。親父のクラスは「自習」となっていた。親父の同僚の先生が、親父のクラスを見に行った。「ちゃんと静かにやっているかな?」ということだ。
ところが、教室は静かではない。外にも、ワイワイガヤガヤ子どもたちがやっているの聞こえてきた。注意しないといかんなと同僚の先生が、クラスに入ってみると。。。。
なんと、数人の学生が壇上に立ち、黒板に計算式を書いていて、それに対して全員でわいわいがやがや議論していたという。
つまり、小学生が自分たちだけで授業をしていた。。。。。
同僚の先生は、驚嘆して言葉をなくして立ち尽くしたという。このクラス、おそらく6年生だとは思うんですけどね。
同僚の先生は、親父が出張から帰ってきたら聞いた。
「あんたのクラス、あんたなしで授業しとった。どうやったら、あんなことができるんぞ?」
「普段から、自分のことは自分でやるように、自分で考えるようにしとるだけよ」
というのが、親父の答え。
この話、昔から知ってる「伝説」なのだが、この間ロンドン出張した時に、久しぶりに思い出して笑ってしまった。
俺は、自分が出張の時、ゼミに関しては基本的に休講にせず、ゼミ生だけでやるようにしている。普段から、学生主体としているので、学生だけでできるようになっている。
普段から、先生はそこにいるだけ。やるのは自分たちということで徹底しているので、俺がいなくてもできるのだ。
ゼミの時間に、ロンドンのホテルからZOOMに入って覗いてみたわけだ。俺がいるときより整然とゼミをやっていた(笑)。
その時、親父の「伝説」を思い出した。親父を意識してゼミを作ったわけじゃないのだが、なんだか親子、同じことやってるやんって思って、笑った。