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ウクライナ戦争:「一撃講和」のために戦っているのは誰なのか?
ウクライナ戦争に関して、現在の情勢を過去稿を振り返りながら検証してみたい。まずは、こちらの2つの記事から。
ウクライナによる、ロシア領への越境攻撃が続いているという。
停戦への交渉がなかなか進まず、膠着状態が続く中、予想外のウクライナの攻勢をどう見るのか。
まずは、この論考をごらんください。
2024年3月時点で考えたことだが、ウクライナ戦争を停戦に持ち込むために1つ考えられるのは、第2次世界大戦末期の日本が目指した「一撃講和論」に近い方針だ。以下、引用する。
『一撃講和論とは、難しい局面にあることは承知しながらも、どこかで相手国に「強力な一撃」を加える。その上で、少しでも有利な条件を認めさせつつ、講和を結ぶというものだ。
ウクライナ紛争に置き換えると、NATOは全面的な参戦は避けつつも、ウクライナへの武器供与の規模をさらに増やす。場合によっては「特定の領土のみ」の奪還に向けて、精鋭部隊をピンポイントで投入する。
全ての領土を取り戻せなくても問題ない。その一部を奪還する中で、ロシアにNATOの戦力の一端を見せつけ、プレッシャーをかけて停戦に持ち込む。実現に向けたハードルは高いものの、現実的な「落としどころ」になりそうな案である。』
まさに、今起こっているウクライナの攻勢とは、「一撃講和」の可能性を探るためのものだと言えるのではないだろうか?
果たしてこの攻勢が、本当に停戦交渉を加速するほどのダメージをロシアに与えうるのかというと、なかなか難しいのではないかと思う。
今回、問題にしたいのは、そもそも今、ウクライナで戦っているのは誰なのかということだ。
現在、ウクライナ正規軍は壊滅状態で、NATO諸国などからの「義勇兵」や「個人契約の兵隊」で人員不足を補っていたとされているのだ。
要するに、外国の武器を使って、外国の兵士が戦っているのがウクライナ陣営の現実だ。
つまり、何度も言っているが、NATO対ロシアがこの戦争の本質だ。そして、ロシアは開戦前にすでに負けていたというのが、私の考えだ。
うがった見方をすれば、NATO対ロシアと考えると、NATO、特に米英は戦争を延々と継続させ、ロシアをじわじわと弱体化させる目的で、中途半端にウクライナを支援してきたように思える。
その目的は、ほぼ達成したのかもしれない。ウラジミール・プーチン大統領を失脚させることはできていないが、スウェーデン、フィンランドの加盟で、NATOのさらなる東方拡大は実現した。
ロシアの石油・ガスのパイプラインの欧州とのビジネスは、戦争が終ろうとももとに戻るのは難しい。
NATOにとっては、そろそろ停戦してもいいのだ。特に、エネルギー問題に頭を悩ますドイツ、フランスなどは早く停戦したいだろう。
問題は、どういう形で停戦するかだ。なによりも問題なのは、ウクライナが、ロシアに占領された領土を「取り返せていない」という現実だ。
ロシアによる「ウクライナ侵略」という目的が果たされたことになる。紛争の開始直後に問題視された「力による現状変更」が結果的に成し遂げられてしまう。
この場合、形式上は「停戦」という形を取っていても、ロシアが「勝利宣言」をする懸念が付きまとう。過去にロシアがジョージアなどに侵攻し、領土を一部占領した際も、ウラジーミル・プーチン大統領は「大国ロシア」の復活を強くアピールした。今回も同じことをする懸念があるのだ。
また、ロシアが「勝利宣言」をすると、国際社会における「権威主義」の国々が勢いづく恐れもある。
この面倒な事態を避けて、「ロシアは負けた」と印象付ける必要がある。それが、なかなか難しい。その試行錯誤の1つが、「ウクライナの攻勢」なのだろう。
最後に1つ言っておきたいことがある。このように大国の思惑がうずまく一方で、ウクライナ国民の命が、蔑ろにされ続けているという現実だ。それでいいわけがない。
どこの国に生まれたからといって、誰かの命は重んじられ、誰かの命は軽んじられるということは、あってはならないことだ。