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社会的地位のための結婚(朝ドラ「虎に翼」)

 朝ドラ「虎に翼」の感想を書いてみようと思い、ウィキペディアで調べてみて発見。「虎に翼」って「鬼に金棒」と同じで「強い上にもさらに強さが加わる」って意味なんですね。中国の法家・韓非子の言葉で日本書紀でも引用されていることわざなんだとか。

 伊藤沙莉(いとうさいり)さん演じる主人公の猪爪寅子(いのつめともこ)は、日本で初めて女性として弁護士、裁判官、裁判所長を務めた三淵嘉子(みぶちよしこ)さんがモデルです。

 寅子は念願だった弁護士になりますが、いつまで経っても弁護士としての依頼を受ける事が出来ません。しかも一緒に合格した先輩の久保田聡子(くぼたさとこ)が自分よりも先に法廷に立つ事になりました。

 久保田は結婚して現在妊娠中です。それを知り、自分は「独身だから信頼してもらえない」という考えに至った寅子。それに追い打ちをかけるように、互いに好意を抱いていた花岡悟が別の女性と婚約しました。

 傷心の寅子は自宅に戻ると両親に「見合いの話を進めてください」とお願いします。恋愛感情などなくても、社会的地位を得るために結婚したいと思ったわけです。

 昨日から今日にかけての話を観ながら思った事を書いてみます。

 寅子が生きた昭和初期。当時の女性の社会的地位は低く、結婚すると「夫の所有物」のような扱いです。不当な扱いを受ける人たちを救うために弁護士になったのに、活躍の場さえ与えてもらえません。

 事務所に来る依頼人たちは「どうせなら男性の弁護士に」と口を揃えて言います。裁判に勝つために優秀な弁護士を求めるのは当然です。寅子は新米弁護士で実績もありませんから信頼されなくても仕方がないでしょう。

 しかし先輩の久保田は女性でありながら法廷に立っています。違いは何かと言えば彼女は結婚していると言う事。それ故に寅子は「結婚すれば法廷に立てる」という考えに至ったのです。

 寅子が口にした「社会的地位を得るために」という言葉が心に残りました。それは一人前として見てもらえないと言う事になります。悲しいかなこれは、寅子の時代から80年以上経った今でも変わりません。

 今でも「結婚するまでは半人前、結婚してやっと一人前として見てもらえる」風潮があります。あえて「結婚しない事」を選択している人に対しても「結婚出来ないのは何か問題があるからでは?」と言う目で見られてしまいます。田舎では特にその傾向が強いです。

 更に言えば「子どもを産んで育てて一人前」みたいに考える人もいます。「子宝に恵まれない」場合もありますし「あえて子どもを持たない」を選択する夫婦がいるにも関わらずです。ですから現代においても独身者に対する偏見は続いています。

 多様性の時代と言われていますが、これから社会がどのように変わっていくのか気になります。

「生い立ちや信念や恰好で切り捨てられたりしない、男か女かで篩(ふるい)に掛けられない社会になる事を、私は心から願います」

 寅子の願う社会はいつか実現するのでしょうか。

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神野守
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