紹介したいnote記事「【短歌】揺れ松」
勿忘草(わすれなぐさ)さんの「【短歌】揺れ松」という記事を紹介します。
いつも勿忘草さんは、短歌を詠んだ時の情景を教えてくれます。
「季節さえ塗り替え進む北の風それでも変わらずまつたよりなく」
まず、短歌だけを見て考えてみます。
北風が吹いてきたようです。寒くなってきたのでしょう。風の強さが「季節さえ塗り替える」ほどの勢いだったのでしょうか。表題が「揺れ松」ですから、枝が揺れるほどの強さだと思われます。
添えられている画像には家の前に立派な松が見えますので、強い北風に吹かれても松がじっと耐えている様子を「それでも変わらず」と表現したのかなと思いました。
次に、どんな心持ちだったのかが書かれています。最初に【できるだけ変わらずにまつ物語】とあります。
ここで、私の脳内で「まつ」が「待つ」と言う言葉に変換されました。何かを待つ、誰かを待つ事なのかなと。
勿忘草さんは玄関を出て、空気の冷たさを感じました。
「秋から冬に変わる瞬間は、何故こんなにも心細いのだろう。そんなことをふと思う。寂しさを振り払って、落ち葉の道を進み、灰色の郵便ポストを覗く」
季節が変わった事に物悲しさを感じながら、郵便ポストを覗いてみます。
「毎朝、落ち込むことがわかっていて、それでも覗いてしまう。あの人からの手紙なんか、来るわけないのに」
勿忘草さんが待っていたのは手紙でした。しかし、今日も来なかったと肩を落としています。家に入ろうとした時、ふと松が目に入りました。
「華やかな春も。色彩豊かな夏も。明るく映える秋も。これから来る、色を失った冬も。松は、変わらない。全く変わらない訳では無い。ただ、できるだけ変わらずにいてくれる。その姿にほっとする」
冬を迎えて色を失っても、松は変わらずにそこにいてくれる。黙って寄り添ってくれる親友みたいに思えたのでしょう。
「冬。一斉に色が変わる世界。変わることを強要してくるような白い世界。それでも変わらずにいてくれる松は、私の心に寄り添ってくれる。変わらなくていいよと言ってくれているような松に、安心する。変わらなきゃいけないものもある。それでも変わりたくないものだって、ある」
「変わらなければ」という想いと「変わりたくない」という想いで揺れ動いています。本心は「変わりたくない」ように思われます。
「例えば、連絡ひとつくれないあなたを待っているこの気持ちとか。例えば、毎朝期待してがっかりする度に揺れそうになるこの心とか」
これは切ないですねぇ。「それでも変わらずまつたよりなく」は、「それでも変わらず待つ便り無く」になるわけですね。
「あなたを想うこの気持ちが、どれほど私の胸を刺したとしても、あの人が帰ってきた時に変わらずに迎え入れたい。それまでの間にどれほど心が揺れて仕方がなくても、毎朝あなたに会えることを期待していたい。まだ、変わりたくない。変わらないまま、あなたをまつ」
待ち続けようと心に決めたようです。でも、もしかしたら数日後にはまた心が揺れ動く事でしょう。人間ですから。
それでも心に決めた。その想いを短歌に込めました。これからまた心が揺れたとしても、この短歌を見ればまた頑張れる。そんな強い意志が込められているんだなと思いました。