事業計画は戦略でない

ある講義うけ、いい話を聴けたので書きます。

ロジャー・マーティン(Roger Martin)は戦略論の第一人者として、特に「戦略とは何か」「優れた戦略をどのように設計するか」を明確にすることで、多くの経営者やビジネスリーダーに影響を与えています。彼の戦略論は、実践的で分かりやすく、特に競争環境が複雑化する現代の経営において非常に有用です。以下に、彼の戦略論をより詳しく説明します。

ロジャー・マーティンの戦略の定義

ロジャー・マーティンは、戦略を単なる「計画」や「目標」と区別します。彼は戦略を次のように定義しています:

「戦略とは、一連の明確な選択(choices)のこと」
特に、どの市場で戦い、どのように勝つかを決定するための選択のことを指します。

これらの選択を通じて、リソースを最適に配分し、競争優位性を築くことが戦略の本質であると述べています。

ロジャー・マーティンの戦略設計の5つの問い

彼の著書『Playing to Win: How Strategy Really Works(戦略はこうして動く)』では、優れた戦略を設計するために次の5つの問いに答える必要があるとしています:
1. 勝つために志向する目標(Winning Aspiration)は何か?
• ビジョンやミッションにあたる部分。組織が目指すべき成功の定義。
• 例:プレミアム盆栽レンタル事業では、「企業や高級レストラン向けに唯一無二の緑の空間を提供する」。
2. どこでプレイするか?(Where to Play)
• 競争する市場やターゲット層を選択すること。
• 例:特定の地域、特定の顧客層(高所得者層、デザイン志向の企業など)を狙う。
3. どうやって勝つか?(How to Win)
• 他社と差別化するための方法。コスト優位性、独自の付加価値、ブランド力など。
• 例:他社では提供できない職人技の盆栽やアフターケアサービスを提供する。
4. 必要なケイパビリティ(Core Capabilities)は何か?
• 勝つために必要な組織や個人の強みやスキル。
5. 必要な管理システム(Management Systems)は何か?
• 戦略を実行し、成果を測定するためのプロセスやシステム。

戦略と計画の違いを深掘り

ロジャー・マーティンは、「戦略」と「計画」の違いを次のように解説しています:

戦略: 「選択」と「フォーカス」
• 戦略は、資源が限られている中で、何をするか、そして何をしないかを決定すること。
• 選択にはリスクが伴うが、同時に競争優位を築くために必要。

計画: 「実行のステップ」
• 計画は、戦略を実現するための具体的な手順やスケジュール。
• 変化に対して柔軟性が低い。
• 例:
• 「1月に高級レストラン3社へ提案を行う。」


この違いにより、戦略は方向性を示し、計画はその方向に向かうための細かいガイドラインとなることが理解できます。

戦略の優劣を分ける要素

ロジャー・マーティンは、戦略の成否を分けるのは「一貫性」と「実行可能性」だと述べています。優れた戦略には以下の特徴があります:
1. 選択が一貫していること
• 戦略内のすべての要素が、同じ目標に向かって整合性を保っている。
• 例: 高級路線を追求する戦略において、コスト削減のために品質を犠牲にしない。
2. 競争環境に基づいていること
• 他社の動向や市場の変化を考慮した選択がなされている。

3. 実行可能であること
• 必要なリソースや能力が確保できる現実的な戦略。
• 例: 人材不足の中でも実現可能なスケール感の事業計画を立てる。

ロジャー・マーティンの戦略論を事業に活かす方法

盆栽事業や中古商用車事業において、この戦略論を応用する場合、次のステップが有効です:
1. 事業のゴールを明確化
• たとえば、「盆栽を通じて都市の空間に高級感と癒しを提供する」など。
2. 競争の場を選択
• 国内市場か国際市場か?
• 高級志向か、大衆志向か?
3. 差別化ポイントを明確化
• 他社が模倣できない強み
4. 必要なリソースを特定
• どのような人材や設備、システムが必要かを洗い出す。
5. 実行計画を立てる
• 戦略を具体的な行動計画に落とし込む。

ロジャー・マーティンの戦略論は、特に「選択をする勇気」と「長期的な視点を持つ重要性」を強調しています。この考え方を取り入れることで、リソースが限られた状況でも、持続可能で競争力のある事業展開が可能になります。


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