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デザインの所属領域,所属分野とは?

こんにちは,ご無沙汰しておりましたが修論に埋もれながら研究がしたいんです…と毎度泣きそうな院生です.
本当はデザイン分野に関しての記事は来週あたりに書きたいなあ〜とかぼんやり思っていたのですが,今日は学内での会社説明会を聞いたり,先日経済学部の准教授がわざわざ別キャンパスの私たちの研究室でゼミ内講義を行ってくださったりしたこともあり,ちょっと書こうかなと…思いました.
(有難いことに経済学部の先生とは来週対談というか面談というか,マーケティングとデザインについてのお話をさせていただく予定になっております…)

・コミュニケーションのデザイン
私が所属している研究室は所謂グラフィックデザイン系の二次元平面を中心とした研究室でして,ムサビ風に言うならば視覚伝達デザイン.正式名称はヴィジュアルコミュニケーションデザインスタジオです,(本学部,研究科は研究室のことを正式にはスタジオと扱っております.)
4年程前に教授が定年で退官されたため現在の教授の着任と共に名称がグラフィックデザインスタジオから変更したのですが,ヴィジュアルコミュニケーションてそもそも何?みたいなところが当初ありました.
だってわからないんだもん.とか思ってました.
グラフィックで良くない?コミュニケーション?しかもヴィジュアルコミュニケーションて何?え,視覚的な会話?etc...
疑問は尽きませんでしたが,近年はだいぶ「コミュニケーションデザイン」という言葉が定着してきたように思います.当初学部卒の同期にも,どういう意味なの?と聞かれてもなかなか上手く答えられず,以前のグラフィック研とさほど変わらないよ〜という説明しかしておりませんでした.
私自身この意味をわかるようになったのは最近のことですし,でもそれを言語化するにはまだ理解が足りていないようにも感じますが,デザイン(特にグラフィックデザイン)の力を利用して社会や生活に寄り添うこと社会に貢献したり生活をより豊かに円滑にするためのツールとしてのグラフィックデザイン,という解釈をしております.不足あると思います,すみません,
実際に本研究室では工事現場や近年議論の対象となっているヘルプマークについて,または都の大学なので東京オリンピックに向けたプロジェクトなどに関わりがあります.

・あれ,それってグラフィックデザインなの?
と,思われた方もいらっしゃるかもしれません.ですが,れっきとしたグラフィックデザインの分野です.
以前の記事で良いデザインて何?とかデザインという言葉が広義的なんじゃないか?ということを書きましたが,事実として「デザイン」という言葉自体広義的になっているようです.
本日の企業説明会(とある一流メーカーさんなのですが)では,そのメーカーさんのお抱えのデザイン部にはUX/UIデザイナーさん,プロダクトデザイナーさんなどが所属しておりますが,まずそのデザイン部で何を大切にすべきかということを再定義したそうです.そしてその時に提示された経産省のデータには,第四次産業革命以降デザインが「経営のデザイン」,「広義のデザイン」,「狭義のデザイン」という区分に分けられることが記載されていました.なるほど,広義的な「デザイン」についていっていなかったのは私だったか,と.
勿論プロダクト,パッケージデザインなどは根幹の「狭義なデザイン」としてデザインの中心に君臨しておられるのですが,その他UXデザインなどはもう「広義なデザイン」としてしっかりとデザインの地位を確立していたんですね.グッドデザイン賞の対象にもなるわけです.そして経営戦略,マーケティングも含めた大きな「経営のデザイン」それらを含めて全て「デザイン」という言葉に纏めることができてしまうのです.
つまるところ,私がずっと「グラフィックデザインの研究室でいいじゃん…」と思っていたのは,強い言葉で言ってしまうと時代遅れなわけです.
時代は常に進んでいます.歴史や時間と同じだと思っています.今のデザインでは,グラフィックデザインだけでなくグラフィックデザインで何ができるか,そしてグラフィックデザインは何に貢献できるのかというところまで来ているんだと思います.ご参考までにという感じですが,現在日本デザインセンターの三澤さんが銀座gggギャラリーで個展を開催されております.グラフィックデザイナーである三澤さんが本当にこれはグラフィックデザインなのか?と問いたくなるほどの分野にまで関わっておられます.

・デザインの立ち位置とは
いつも悩むことです.私がなぜ博士課程に進学することになったのかという話にも繋がってくるのですが,「デザイン」というものを学問として研究する意義,「デザイン」というものを勉強するにあたってどの分野に区分されるのか,ということはいつも頭を抱えます.
私個人として,この研究室でロングセラー商品のパッケージデザインを研究し,売れ続ける商品・廃れる商品のグラフィックを取り上げ企業へ調査に出向き,色面積比で数学的な検証なども行い,法則性を見出そうとしていました.同時に私の現在の研究でついて回るのはマーケティングという一見何の関係もなさそうな分野でした.寧ろ経済や世の中のお金の回り方に関してはど素人以下,本当にわからなかったです.ただ調査をしていくうちに,会社を存続させること商品のデザインの変更をすること(それに当てる経費)と実際の売り上げとが全てリンクしているんだなと思い始め,「グラフィックデザイン」が社会や消費者の購買意欲に与えている影響は大きく,視覚的な情報がいかに人の衝動を揺さ振ることができるか,ということに焦点を当てることができるのでは…というところにまでは到達しました.(ちょっと考えれば当たり前のことなんですが…)
特に近年はSNS映えでの拡散による商品の周知が盛んであり広告媒体も時代と共に変化していることは無視できない要素となっていることでしょう.
ゆえに商品の本質と,最初からネット上の話題性を意識したグラフィックとの間に誤差が生じて悪循環に陥る企業もあり,上手くブームに乗っかる企業もあり…という現状が生じています.
そういった意味で,デザインの分野は経済に関わってくる,社会に関与している,とても影響力のある大きな実体のないモノを研究する分野になっていきそうです.そのモノの幅は広く,自由度が高く,同時にアート・美術との線引きが曖昧にもなり,はっきりとした定義は恐らく言語化したところで正解も不正解もないのかなと思ってしまいます.

・他分野と混ざったり,どの領域として処理すればいいの?
先ほどの小見出しと非常に酷似しておりますが,私が現在携わっているところですと「デザイン学」と私なら言い切ってしまうでしょうね….博士課程ではグラフィックデザインを軸としたデザイン史の研究となっていきますが,これは表象文化論とも捉えることができますし,一方でデザイン史とも言えます.そしてグラフィックデザインの分野にも依存しています.デザイン学部を置いていない大学ですと,大体文芸学部人文社会系の分野に置かれます.ただ,ここで強調しておきたいのは決してアートの分野ではないということです.美術・芸術の分野には足を踏み入れておりますが,アートではありません.
私はデザインと社会が結びついてきているような記述をしましたが,将来的にはそういった領域横断型の研究をしたいと思っておりますし,それが領域横断型と言われない研究分野になることを考えています.ただ,未熟な私はそれが一緒だと思っておりまして,先日デザイン史の尊敬している教授とお茶をした時にそのヴィジョンであったり研究計画を話していたのですが「それは全く別分野なんだよ」と言われました.先生はデザイン史に特化して研究をなさっているので勿論すぐに,確かに…と思いました.ですが同時に,今後デザインという学問を考える上で社会とは切っても切り離せない関係にある分野だという認識がまだ薄いのではないかという印象も受けました.
社会学や経済学,そして心理的ないわゆる人間工学的側面であったり,デザインが関与できる分野の幅は広いです.
それゆえ,学会選びに迷ったりすることや学会発表においては「それは他分野じゃないの?」というご意見やご指摘を受けたりすることも生じてくるのではないかと思います.現に本学の先生が主体となってこういう分野のデザインの学会がないから…と自ら立ち上げた先生もいらっしゃいます.

・研究は複雑…?
だとは思います.ただ,自分がどの分野のデザイン学を研究しているのかによって領域横断にはならずとも関わりがあるよねってことで他分野の先生とお話することも可能ですし,もしかしたらそこで他分野の先生がデザインがなるほどそう関係してくるのか…と思ってくださるかもしれません.
ただ,今M2として修論を書きながら研究を振り返っておりますが,他の研究室のM1の後輩から,実は私のいる研究室にも行きたかったけどやめちゃったという話を聞きました.なんで?と理由を聞いたところ,「何か作りたいしグラフィックデザインは好き,デザインはやりたい.だけど大学院は研究しなければならないし,そうなったらグラフィックデザインの研究ってどんなことすればいいのかわからない」とのことでした.
はあああ,そうか〜という感じでした.ぶっちゃけ私なんてお菓子が好きで駄菓子から入り,お菓子のパッケージデザインの研究と紆余曲折しつつロングセラー商品というところに行き着いてデザイン史に到達したわけですが,同期の研究はシビックプライドの向上,景観に調和するカラーリングの物事,グラフィックに用いることができるであろう新手法の検証など様々です.自分の好きな,関心のある事柄にどうグラフィックデザインを関与させてより良くしていけるのか,またはより人に訴えかけるものが作り上げられるのか,そういった点でグラフィックデザインの研究は本当に枠にとらわれず自由度が高いのではと逆に感じました.

・グラフィックデザインには枠がない
ここまでまた長ったらしく書いてしまいましたが,グラフィックデザインというものは本当にどの分野にも手の出せる,介入できる分野だと感じています.なので勿論研究する上では自分の研究分野,研究の立ち位置というものはハッキリさせておくべきだとは思いますが過度の縛りは必要ないと思います.どの分野にも柔軟に入っていける,スルスルっとした何かそんな分野だと思っています.デザインの力で社会が改善される,社会が変わる.そんな標語は決して大袈裟な物言いではないと思います.
目に見えない所で社会を快適にしている,なんか最近便利な世の中になったなあ,と感じたのであればそれはデザインの力だと私は思っております.
「デザイン」という概念自体が浸透したのは長い歴史から考えればまだまだ日は浅く未知の領域であり,多くの可能性を秘めた研究余地のある分野だと思っています.

そんなことを考えながら来週はちょっと経済学部の先生とマーケティングとデザインについて話してきたいです.
結局また長ったらしくてすみません.よく曖昧な線引きをされたりハッキリしろと言われがちなデザインという領域の研究について思っていることをつらつらと綴ってしまいました.
少しでもデザインという学問に興味を持っていただけたらなあ〜なんて思いながら書かせていただきました.

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