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【読書記録】一片冰心 谷垣禎一回顧録
谷垣氏は加藤の乱のときに森内閣不信任決議に賛成の意を示した加藤紘一氏を涙ながらに説得したことや、野党時代の自民党総裁として党を空中分解させずにまとめ上げたことが印象的で、学ぶところがあると思って読んだ。
代表を務めた宏池会らしい、保守的だが頑迷ではなく合意形成を重んじる誠実な政治家という印象を受けた。
政治資金(特に企業・団体献金に関する考え方)、自助・公助・共助のうち、自助を強調する持論には賛成できない面もあるが、自身の豊富な経験に裏打ちされた理論には一定の説得力があった。サイクリング中に転倒し、脊髄損傷によってリハビリを余儀なくされた体験を経て、最初の一歩は自助が必要と述べているが、人によってはそうなのかもしれない。
また谷垣総裁時代に幹事長を務めた大島理森氏との対談で、人材育成に寄与しているなど派閥政治の利点について述べていたのは興味深い。一方で派閥政治の弊害も縷々と述べられており、自民党内の派閥が力を失った今、この先どうなるかが気になるところ。
あと野田代表(当時は総理)への評価が高い。ポピュリズムに対抗するという観点では、谷垣氏のような政治家の力を借りる場面も今後あるかもしれない。