映画『上飯田の話』監督たかはしそうたインタビュー短編併映「パパの腰は重い」について
聞き手、ガブリシャス本田
—この映画を制作した経緯や、別の作品からのインスピレーションなどがありましたら教えてください。
この映画はもともとは大学院の入試用に作られたものです。1次試験で15分以内の短編を提出せねばならず、どういうのを作ろうかなと思っていました。そんなときに祖父母を撮ったフィルムがあったはずだと気づき、そのテレシネ(フィルムをデジタル化する作業)した動画を見ることとしました。何かヒントがないかと思って見ていたときに「これだ!」と思いつき、制作することとなりました。
—パパが竹鶴について語り始めるシーンは「上飯田の話」のテイストに似た部分がありますが、これは意図して撮られたものですか?
この部分は全く意図していませんでした。竹鶴を飲むだろうということはわかっていて、あの独特な割り方も多分するだろうということもわかっていました。が、いざ撮影が始まると突如話し出したんです(笑)。多分カメラのすぐ横に僕がいたからだと思います。あんなことを話すとは全く思わず、一人で飲んでいるシーンになるはずだったのに。しかしあれはあれでとても良かったし、あの動きの所作のなめらかさは実際に暮らしている人だという、ある説得力も感じました。なのでこれは映画内でも入れようということになりました。
—「誰かと撮影をするということはこういう体験なんだ、ということを知ることができた」とありますが、この制作を通してどういった変化や気づきがあったか、教えてください。
パパは本当にあの家のことが好きでしたし、ママの家をおそらく本当に嫌がっていました。僕自身パパ(誤解ないように注:この「パパ」というのは私の祖父のことです)がママ(同じく私の祖母です)の家にいるところを見たことがない。しかし映画を作るということでパパをママの家に連れて行くことができる。上にも書いた祖父の酒へのこだわりも知ることができる。映画を作るときに、つい話の面白さや、語りの巧さを考えてしまっていました。しかし映画を作るということはそれだけで一つの体験であり、その体験のおもしろさを映していくことのおもしろさに気付けた気がします。