
英語(学校選択問題)の対策
1.全体の構成
構成自体は、全受験者共通の北辰テストや、公立入試の学力検査問題と大きく変わらん。まずはリスニング。その後に会話を含むマルチプルパッセージ(大問ひとつの中に4場面ほどの複数のパラグラフが配置される問題)、一つの長文問題、英作文から構成されている。
まずは、この大問4つの時間配分をしっかりと意識しよう。長文や作文が受験生の得意分野と噛み合わなかった場合、頭が真っ白になって取れる問題まで時間切れで落としてしまう大惨事を回避する必要がある。
国語や数学にも起こりうるが、こうした本番での問題との相性や「運」と極度に緊張してしまうようなアクシデントが不合格になるケースの一大要因ではないかと考えておる。構成を知り、時間配分や危機が生じた場合に被害を最小化するシミュレーションをすること、これは受験ばかりか、社会を賢く生き抜いていくために大事な事前準備なのじゃ。
2.大問1:リスニング(28点)
試験が開始されて放送が始まってからが勝負じゃ。座してお経を聴いている必要はない。特に最初のNo.1~3は寝てても取れるような問題じゃ。第一問が読み上げられるまでの説明や例題の間にやることは、例えば、
★リスニング後半(右ページ)の英文に目を通す
★大問3の注釈(長文の下にある日本語の単語解説)に目を通して、どんな話なのかのイメージを掴む
★大問4の作文に目を通して方針を立てる
いろいろとやれることがある。
しかも、くだらない問題で二度目の繰り返しを座して聞く必要もない。試しに過去問を利用して、リスニングの隙間時間に何ができるかを考えてみよう。性格的にパニックになってしまう場合は無理をしないという選択肢もあるが、とにかく英語は時間が足りなくなるのと、リスニングの肝は後半の問題になることを意識すると、こうした工夫も必要じゃな。
リスニングで差が付くのは最後の問題No.7。ここは耳の能力だけでなく、文法(時制、単数複数等)や熟語(特定動詞と前置詞の組み合わせ)など、聞き取りにくさを補完する知識と複合にされている場合がある。最上位校を狙う場合には、ここで1問落としてもやむを得ないが、全体で3問以上落とすようだと厳しくなる(もちろん他でカバーはできるがな)。ただ、最近のリスニングは年々、難しくなり、ひっかけも多いので甘く見てはいかん。
リスニングの勉強法は慣れによるところもある。音楽と一緒で、音を聴きとる能力+知識と結びつける能力は、スタートラインが一緒とは考えにくい。他方で、毎日のように訓練するのも現実的には難しいな。単発で練習して「あー間違えた」ではなかなか能力が強化されないので、半日なり、場合によっては1日かけて、高校受験の過去問や、そのレベルの問題を集めて集中的に繰り返すことを勧める。音の情報だけでなく、出題のパターン(物の位置、地図の読み取り、電車乗り換え等)やケアレスミスの要点(時制等)が見えてくるかなら。
3.大問2:マルチパッセージ
万人に合うかどうかはわからんが、英語力の高い子羊さんの場合には、本文を読まずに問題文から本文の該当箇所を探して、消去法も取り入れながらサクサク解いていく方法がある。これでかなりの時間が短縮できる。一つの問題が一つのパッセージで完結しているのでな。問題は最後の設問(例えば、本文に合う選択肢を選べ)で、本文全体を読んでいないと答えられないが、仮に本文をしっかり読んでいても、あらためて全体を確認することにはなる。最終問題も本文をよまずしてだいたい2択くらいまでには絞れるので、時間を優先して運にかける英断もありうる。ここは判断が難しい。
4.大問3:長文
中学校の履修範囲と最もかけ離れたレベルの問題じゃな。単語力が決定的に足りないはずじゃ。多くの単語は下段に注釈として示されているが、本文からいちいち目を移して読み進めても中身が頭に入って来ず、あせるばかりで時間が過ぎてしまうはずじゃ。注釈なしで読めるワシのレベルでも「これは時間がギリギリになるな」と思うほどじゃ。
じゃから、リスニングの説明中に主要な単語を目で見て、何の話題について書かれているのかを(正しく)イメージできるだけで強い。ここもかけになるが、正しく長文の趣旨を想像できていれば、注釈を見ずとも知らない単語を読み飛ばそうが想像で読み進めようが、大勢に影響はない。
長文の内容を頭からお尻まで理解することを求められているわけではないのじゃ。これが国語の長文なら「最初から最後まで全部理解しよう」などとは絶対に思わないが、英語になると、どうしてもわからない部分があると気になって読解にブレーキがかかったり立ち往生してしまう。ここは要注意じゃ。我々の目的は設問に回答していくことであって、英文の翻訳ではない。
大問を解く順番にもよるが、もし最後の英作文を終えてない状態で長文の時間が足りなくなった場合には、実戦的には作文で点を取るために長文の最後を切り捨てる勇気も必要になる。
5.大問4:英作文
問題の条件をしっかり読むこと。いきなり変わることは考えにくいが、条件に沿って回答していないと、国語の作文と一緒で0点になる。
それから、難しい(長い)言い回しや、スペルが曖昧な言葉を使うなどの誤った対策はしないことじゃ。機会があったらドラゴン桜の英作文対決を見て欲しいのじゃが、東大受験だろうと、難しく書こうとして文法がねじれたり、スペルミスがあったら意味が無い。英作文は満点10点からの減点法じゃ。学校によって違うかもしれんが、間違って覚えたスペルの単語1つを3回使ったら3点引かれる。
基本的にはS+V に前置詞を使う程度で、接続詞もなるべく切って短い文章にした方が安全じゃ。文章が幼稚に見えるからといって減点はできないはずじゃからな。
それから、英語は日本語とちがってぐちゃぐちゃしていない。最初に結論なり意見を言い、その後に論理的になる理由を述べる。~だが、のような肯定か否定かはっきりせん言い回しで日本語のアイデアを直訳しない。悩むだけで時間のむだじゃ。
さらに、国語の作文と同じで、書く内容は自分の真意と違って構わん。書きやすい、安全に書ける内容や技法で書けばよい。昨年度の問題だとキャッシュレスについて、自分の使っているペイペイではとか書いたら大変じゃ。例えば自分ではキャッシュレスが便利だと思っても、
・私は現金が好き。
・なぜなら、携帯を忘れたら何も買えない。(ここは becauseが文頭に使えないので、接続詞として1文で書いても良い)
・そして、現金は数えられるので使い過ぎない
・だから私はこれからも現金を持って遊びに行くことにする
のように簡単に構成できるよう、事前に文例を準備する事じゃ。
6.その他の鍛えるべき技術
(1)並べ替え
与えられた単語を並べ替えるものじゃが、カッコ内の単語だけでなく、カッコの前と後の単語にも要注意。例えばカッコのあとが前置詞 at だった場合、atと親和性の高い arrive などの動詞が直前に来る。つまりカッコの外側ともつながりを意識して、単語から熟語、そして文章としてなりたつグルーピングを行う必要がある。
逆に並び替える単語の中だけで、早々にくっつく単語どうしもあるじゃろうから、そうやって5個あった単語を、3単語と1つの熟語、という具合に減らしていき、最後はSVOなどの文としてなりたっているかを見極める作業になる。これもパターンがあるし、WEBや問題集にも並び替え問題はたくさんあるので繰り返しやると良い。
(2)英問英答
英問英答に限らず、英訳・和訳の基本は、すべての単語を一対一の対応で訳すことにある。副詞 very を飛ばしたら減点。これは古文の現代語訳にも通じていて「怪しい光」と「怪しく見える光」では減点や最悪の場合×を喰らうことになる。
さらに英問英答が怖いのは代名詞の扱い。問題文が英文なので、そこで lion とあったら、回答は lion ではなく代名詞の it を使わねばならない。その他、英問英答に関する解説はネット上に沢山あるので、「英問英答」「高校入試」などの検索ワードでじっくりと注意や技を確認してみることを強くお勧めする。
(3)下線部(代名詞)がさすものの和訳回答
本文中 "doing so" がさすものを回答、というのが昨年の問題にあるが、so を「そのように」と訳したら0点じゃな。So の具体的な中身を本文中で探し出し、その部分を和訳としてきっちり日本語にすることが求められる。
つまり和訳回答だけ読んでもある程度意味がわからんといかん。
「彼がそう思ったから」では駄目。
「浩が今日中に終えなければならないと思ったから」
になる。
また、国語と同じで「下線部がさすのはどのようなことですか」と聞かれたら、~なこと、としっかり文末を問題文に合わせて回答する。理由が聴かれていれば「~から」と答えるのも当然じゃな。英語と言いつつ日本語でもあるわけじゃ。