仮面の部屋|そしてわたしは、紙をすきになる[第3話]
大阪の万博公園内にある国立民族学博物館、通称みんぱく。
「入場券もらった〜」と言う母親に連れられて、中学生のときに初めて訪れた。
その一角の仮面の部屋に入った瞬間、
「くるり」
世界がひっくり返る音を聞いた。
壁一面に並ぶ仮面を見て、
「人間はすごい」と思った。
修学旅行で東京ビルや金閣寺、清水寺を見ても何とも思わなかったけど、このとき初めて、人が作るもののエネルギーを思い知った。
「これが文化か」と思った。
精巧なだけではなく。
鮮やかなだけでもなく。
言葉で表現できない不可解があふれていた。一体どこでどんな人たちがどんな風に作ったら、こんなものが出来上がるんだろう。一体 何に使うんだろう、なんでこれを集めたんだろう。
そんな疑問が頭の中いっぱいに広がった。
それまで植物や鉱物にしか興味のなかったわたしにとって、世界がひっくり返るくらいの好奇心の転換だった。「人の手で作られたもの」をもっと知りたい。もっと見たい。
あの「くるり」の瞬間に湧き上がった衝動は、静かにずっと わたしの中に息づいている。
世界各地の仮面を見て、人や文化への興味が芽生えたこと。
同じように人の手で作られた紙が在ること。
これが、わたしが紙をすきになった理由のひとつです。
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こんにちは、kami/(かみひとえ)です。いただいたサポートは、「世界の紙を巡る旅」をまとめた本の出版費用に充てさせていただきます。今年の12月に発売できる…はず…!