ほんの一部スイカ(#毎週ショートショートnote)
彼女はいつも自慢していた。
「私の体はほんの一部スイカなの」
同じサークルの仲間でいつも元気で可愛らしい彼女であったが、体のどこがスイカなのか、なぜ自慢するのかはわからない。
とある夜、そんな彼女からLINEが入った。
「これから一緒に飲まない?」
「オーケー」と返事をしてすぐに彼女のいるバーに向かった。
カウンターでカクテルを飲んでいた彼女の目には涙が浮かんでいるように見えた。
私に気づくと「こっち、こっち」と彼女は手招きをした。
ハイボールを注文し、飲み始めるといつもの元気な彼女だった。
いつも通りの他愛もない会話が続いた。
バイト先であった出来事、大学のゼミの話題、共通の友達が彼女に振られたこと・・・・
ふと横を見ると、彼女にまた目に涙が浮かんだように見えた。
「私の体はほんの一部だけスイカなの、羨ましいでしょう」
また、目に涙を浮かべた彼女のいつもの自慢が始まった。
今日、彼女の体のどこがスイカなのか、わかるかもしれない。
でも一生わからないかもしれない・・・
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