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スネーク満床(#毎週ショートショートnote)

「スネーク満床」

どの病院に行ってもこの立て看板が立てられており、入院できない。

「こっちは急患なんだ。なんとか受け入れてくれる病院を探せ!!」
救急隊も困り果てている。

病院では院長が若い医師を相手に嘆いていた。
「最近の若い蛇は一人で脱皮もできない。困ったものだ。処置が本当に必要な患者が
後回しになってしまう」

ここ数年、一人で脱皮ができない蛇が増えている。
脱皮ですら、他者の力を必要としている。
そのような状況が続き、社会の活力も大きく低下している。

「もう医者の力ではどうにもできないよ」

そんな時、ある一人のインフルエンサーがSNSで発信した。

「安心して!君は一人でも生まれ変われるよ!大丈夫だ」

若い蛇たちは一斉に独力での脱皮をはじめた。中には苦しむ蛇もいたが、脱皮は自分でするものという風潮が高まった。

その結果、社会は活力で満ち溢れた。

「どんなに苦しくても大丈夫、一人一人が生まれ変われれば、どんな社会でも変わっていくよ」

再びインフルエンサーが発信した。

「スネーク満床」の看板はなくなった。


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