粋な人に憧れる。
人の気持ちを思いやることができるため共感力が高くて、場の空気をさっと読んで気の利いたことをサラリと言ってのける。ときには、何も言わずにみんなが喜ぶことをやってのける。それでいて、見返りは求めない。
男女問わず、こんな粋な人がいたら惚れてしまう。
ユーモアのある人にも憧れる。
どんな変化球も受け止めて、笑いに変換して投げ返す。重苦しい空気の中でも、ここぞという隙を見逃さず笑いを挟み込んでくる。誰も傷つけない笑いで。
こんな人がいたら、人生が楽しくなる。
そんな人が身近にいたら、それも身内にいたら、それはちょっとした自慢になり得る。ネタが尽きないし、なにより心が安定する。安心感が半端ない。
おそらく、この作品に出てくる「ばあちゃん」はその自慢の人だったのではないか。
孫に残した謎の箱。そこには「覚悟はいいか?竜宮城」という名コピーが書かれている。このコピーだけで「ばあちゃん」の人柄が分かる。
ユーモアのセンスがとんでもなく高い。そして、まるで有名コピーライターが書いたかのようなテンポのいい言葉選び。これを書いたとき、きっとニヤッとしていたに違いない。孫である作者がどんな顔をするのか想像して、クックックッと笑っていたのかもしれない。
それを知ってか知らずか、素直に怖がっている作者のかわいらしさ。「ばあちゃん」が愛した孫は、ちゃんとその愛を受け取って真っすぐ育ったのが分かる。
最後のこの流れは、この作品が名作たるゆえんの部分。さすが名コピーライター「ばあちゃん」のお孫さん。語りかけている言葉の端々に愛を感じて、さらに、会えなくて寂しいという哀愁さえ感じる。
何度読み返してみても、読み飽きない名作。
それにしても、箱の中が気になる。
このブログでは、「あの人との、ひとり言」コンクールの入賞作品の中からランダムにチョイスした名作たちを紹介して参ります。作者の心情に寄り添ったり、自分もこういうことがあったなと思い出を探してみたり、コンクール応募のきっかけにもなれば幸いです。
ステキな作品に、どうぞ出会ってください。