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名作選13「あの日の風景」

ばあちゃんが住んでいた町
二人でいつも歩いた道が、ふと
頭に浮かんでくるんだ。
だからね、思い切って行ってきたよ。
ばあちゃん…やっぱり寂しいね
会えないもんね。

2021年「あの人との、ひとり言」コンクール入賞作品より
北海道 幼少期の原風景さん(女性)
手を合わせるお相手:祖母

記憶の中にある風景がフラッシュバックするときがある。切り取られた風景が浮かび、そこに会いたい人が笑っている。懐かしくて切なくて、そして強烈な多幸感に包まれる瞬間。

季節の香りとそのときにしていた会話と笑い合っている空気感。もう二度と会えない人、風景がリアルに蘇る。

ときどき無性に帰りたくなる、あのときに。

ということが、あなたにもあるかもしれない。きっと誰にでもそういう瞬間はあるのだと思う。

セミの声を聴きながら小高い山の上にある神社まで散歩。そこからは夏の日差しに照らされた海が一望できる。木々の合間をぬって流れる風が心地いい。神社の社務所横のベンチに腰をかけ、ほんのひととき目をつぶる。あぁ、気持ちいい風。「昼には冷たいそうめんを用意しておくでな」と家を出るときにばあちゃんが言ってたっけ。そろそろ帰るか。帰り道の途中に、山からのキレイな水が流れてくる小川がある。そこに足をつけて「ひゃっこい」と言いながら坂を下っていく。

こんな夏の日の風景だったり。

大きな木が道の両端並んでいる昔ながらの街道。秋になると鮮やかに紅葉するその街道を抜けると畑が広がっていて、畑の端に無人野菜売場がある。採りたての新鮮さが売りで、季節ごとに色とりどりの野菜が並ぶ。スーパーで買う野菜より断然美味しくて、何よりここに母と手をつないで歩いていくのが好きだった。街道でキレイな落ち葉やどんぐりを拾ったり、畑のまわりに咲いている小さなお花を摘んだりして、おしゃべりしながら歩く道。土の香りがすると蘇ってくる風景。

こんな日常の風景だったり。


ばあちゃんが住んでいた町
二人でいつも歩いた道が、ふと
頭に浮かんでくるんだ。

作品より抜粋


だから、この作品の冒頭部分はキュンとくる。ばあちゃんが住んでいた町。そして、もうばあちゃんがいない町。

二人でいつも歩いた道はどんな道だったのだろうか。その風景は分からないけれど、二人の笑顔とその空気感はしっかりと伝わってくる。その歩いた道に思い出がたくさんあって、ふとしたときに蘇ってくる。


だからね、思い切って行ってきたよ。
ばあちゃん…やっぱり寂しいね
会えないもんね。

作品より抜粋


もうばあちゃんがいないと分かっている思い出の場所。きっとずっと行けなかった。行きたくても、思い出があふれてしまうからずっと行っていなかった場所。

意を決して行ってみると、やはり懐かしい。ここそこにばあちゃんとの思い出がある。そのときの会話も思い出される。ばあちゃんのやさしさもよみがえって作者を包んだに違いない。

そして、もうここにはいないという喪失感。「会いたいよ会いたいよ会いたいよ」と泣きたくなる気持ちを抑えて、当時の風景を思い出していたのだろう。

しかし、私だけだろうか?ばあちゃんがそっと横に立っているような気がするのは。思い出の中では、永遠にばあちゃんの笑顔がそこにあり続ける。




このブログでは、「あの人との、ひとり言」コンクールの入賞作品の中からランダムにチョイスした名作たちを紹介して参ります。作者の心情に寄り添ったり、自分もこういうことがあったなと思い出を探してみたり、コンクール応募のきっかけにもなれば・・・という思いで、不定期に更新していきます。

ステキな作品に、どうぞ出会ってください。

「あの人との、ひとり言」コンクール 応募要項
【賞】

大 賞   [1名様]賞金5万円 カメヤマ商品
審査員特別賞[1名様]賞金2万円 カメヤマ商品
ペット賞  [1名様]賞金2万円 カメヤマ商品
カメヤマ賞[20名様]JCBギフトカード 5,000円 カメヤマ商品
入 賞 [100名様]カメヤマオリジナルグッズ
WEB応募者全員にカメヤマネットショップで使える500円オフクーポンプレゼント

【募集内容】
手を合わせると出てくる「あの人との、ひとり言」
※未発表の作品に限る
※助詞や語尾を変えただけの類似作品や同じ作品の二重応募は不可

【テーマ】
亡くなられた大切な方に向けて手を合わせたとき、あなたの心にはどんな言葉が浮かびますか?手を合わせると出てくる言葉を募集します。

【提出物】
●作品
※80文字以内
※郵便ハガキで応募の場合は、以下の事項を記入
氏名・フリガナ・性別・年齢・ペンネーム・郵便番号・住所・電話番号・投稿文・手を合わせる相手
※複数回の応募可

【参加方法】
提出物を下記提出先まで郵便ハガキにて郵送
または、公式ホームページの応募フォームより投稿

【参加資格】
不問
※本名で応募すること

【応募期間】
2023年6月1日(木) 〜 2023年9月30日(土) 23時59分
※官製はがきによる応募の場合は 9月30日当日消印有効

【審査員】
湯川れい子(音楽評論家、作詞家)
右田昌美(クロワッサン編集長)
若林剛之(SOU・SOU プロデューサー)
木村光希(株式会社おくりびとアカデミー 代表取締役)
谷川花子(カメヤマ株式会社 代表取締役会長兼CEO)
※順不同、敬称略

【結果発表】
入賞作品は、厳正な審査の上、当サイト及び雑誌『クロワッサン』12月8日発売号誌面にて発表

【著作権の扱い】
入賞作品の発表や出版に関する著作権は、二次利用を含め、カメヤマ株式会社に帰属

【応募・問い合せ先】
カメヤマ「あの人との、ひとり言」コンクール事務局【WEBで応募】
コンクール公式サイト https://www.kameyama.co.jp/hitorigoto/
郵送で応募〒519-0111 三重県亀山市栄町1504-1 カメヤマ株式会社
お問い合せ先0595-86-0102
 ※10時〜17時(土日祝日・8月11日〜8月16日を除く)

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