【超ネタバレあり】観たよ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(記録 2024/01/26)
20年前に私に重篤なトラウマ(惚れたガンダムがギッタギタのボッコボコにされて終わった)を植え付けた作品が劇場に帰ってきた。
結構好きだったんだよね……アニメは飛ばし飛ばしだけど見られる時はちゃんと本放送を観たし、ストフリもデスティニーも1/100買ったし。
後にネットで「ストフリの1/100はクソ」って言われててビックリしたよ。確かにドラグーン外すギミックしょぼすぎるなって思ったし光の翼は別バージョンにしかついてないのかよって思ったけども……。
SEEDに関しては「ネットの評価」がマジでアテにならないのと、それでも誰にもネタバレされたくなかったから封切り初日の10時の部で観てきたよ。たまたま起きられたから観に行ったよ。
映画館めちゃくちゃ混んでてビックリしたな。平日の朝だぞ!? みんな20年前の亡霊に命かけ過ぎじゃない!? 私は無職なので平気でしたが皆様お仕事の方は大丈夫なのでしょうか。
もうこの作品に関してはいいか悪いかを言うのもネタバレになりうるのでここから先は思いっきり下げる。SEEDだし……。
まだ観てない奴は観てから読め! 20年の醸造された怨念に2000円払う覚悟がある奴だけがガンダムSEEDを語れ! 私にはあるのだよ! この世でただ一人! 機動戦士ガンダムSEED FREEDOMの感想noteを書く資格が!
100点満点中……10000億兆万億兆京億点!!!!!!!
特にMS戦がマジで最高だった! アタシが観たかったSEEDはこれだよ! 5倍以上のエネルギーゲインがある! みんな観に行った方がいいよ! 観て後悔しないから絶対!
ストーリーとしては相当小粒だけど堅実にまとまっていた。これ本当にSEEDか? ってくらい風呂敷の広げ方と畳み方がしっかりしてた。
DESTINY時代の愚連隊をシステム化した義勇軍「コンパス」に所属し、終わらない戦乱の中で平和への道に悩むキラとラクスが主人公。
ラクスの才能を政治利用しようとする悪の組織「ファウンデーション」との戦いを中心に、目指す道が同じでお互いを思い合っているはずなのに上手くいかないキラとラクスのすれ違いと、そこに入り込むラクスの番として遺伝子調整されたファウンデーションの重鎮、それとなんか暴れ回ってるシンとアスランを描いた話。イモータルジャスティスに乗ったシンがキラとプリキュアマーブルスクリューでデストロイガンダムを墜とすシーンもあるぞ!
話の中核を「ラクス・クラインと、彼女の関係性の中のキラ・ヤマト」でまとめて、他のキャラを「アガりきったサブキャラ」に徹させたことでCEシリーズの魅力である「世界観の閉塞感」「キャラ設定の良さ」「MSのカッコよさ」を存分に出した上でストーリーをしっかり完結させたのが見事。真剣に物事やろうとした時のペース配分が変すぎるのがSEEDのアレなところだから、2時間でまとめてくれるならもうこちらとしては文句がないです。
状況に翻弄されて仙人みたいな感じにさせられたDESTINY期より、キラの人間として苦しみ迷走する姿を描こうとした話だなという印象を受けた。
本作序盤のキラはかなり追い詰められており、「コンパスの隊長」としての重責を自分一人で背負い込みすぎてワーカホリックみたいになってるし、ラクスとの交流の時間も取れないし、戦い方の治安が前にも輪をかけて悪い。盾ブーメランの使い方が本当にえげつないし二刀流はきったないぞ。キラのごろつきバトルからしか得られない栄養素がある人の作った殺陣。
戦いが一息に終わる方法を求めすぎた結果、「やっぱりデスティニープランは正しかったのかな……」と思い詰めてしまったり、自分が最強になれば解決すると考えてMS開発にのめり込んでしまったり、挙げ句に敵の精神的な揺さぶりをモロに受けて重大な軍法違反を犯したり、敵の罠に気づかないまま「ラクスが僕を裏切った……」と思い込んだりと、本作序盤のキラは全体的にいいとこがない。MS戦はカッコいいけどね。
そこから完全にふてくされて22年ぶりの「やめてよね」モードのキラをアスランがボッコボコのギッタギタにして(ここ本当にボコボコのギタギタで面白いよ)、「自分一人で背負い込みすぎず、愛する人と言葉を交わして道を模索するしかない」と易きに流れない道を選ぶのが本作の大テーマになっている。
「易きに流れない」ってSEED全体のテーマって感じがしてめちゃくちゃ好きなんだよな。「俺ごと全部片付ければ解決」への「生きることが戦いだ!」とか、「何度平和を望んでも争いが続くから世界は虚しい」への「何度花が吹き飛ばされてもまた植え直すよ」とか、正しさは地道の先にしかなくてそれを諦めた時に戦争が始まるみたいな考えがSEEDにあって、それをはっきり言葉で明文化したのがFREEDOMの意義だなと感じた。
あとキラの懊悩の奥に「ラクスとファウンデーションの重鎮・オルフェがなんかいい感じになってる」って気の重さ(キラはキラでフレイを寝取ったから寝取られに文句言う資格ないよ)があるんだけど、このパートの天丼具合がかなり二義で面白かったな。
オルフェは「キラより世界平和への明確なビジョンを持っている(とキラには見える)」「ファウンデーションの人間はぶっ飛んだ技術で作られたウルトラスーパーコーディネイターなので全体的に既存コーディネイターより優秀」「ラクスと遺伝子レベルで相性がいい」とめちゃくちゃ寝取られ同人誌の竿役みたいなスペックをしていて、実際にラクスにも寝取られ同人誌みたいなアプローチをアムロとララァみたいなキラキラ空間に乗せて何度も仕掛けているんだけど。
その度にラクスが「いけません! 私には旦那が! しかし私の心には旦那が! たとえ体の相性が良くても私の心には旦那が! たとえあなたが私を押し倒しても私の心には旦那が!」みたいなキャンセルをしつこいくらい仕掛けまくって、最終的にキラが迎えに来て「よっしゃ待ってたぜ旦那! 私も愛してるぜ旦那ァ!」って寝取られに完全勝利して終わるのがバカ面白かった。ちんちん亭で見たことないぞそんな展開。
ラクスは徹頭徹尾最初から最後まで世界平和とキラが好きで不自由が嫌いなパンクロック女傑で、キラが「彼女に相応しい自分とは……世界とは……」で悩んでるだけ、みたいな構図はちょっとキラが空回りすぎてかわいそうにも思えたけど、そういうカタルシスがあったから最後にキラが自分の口でラクスの前で「僕は何があってもラクスを愛してる!」と大声で叫ぶのが映えるんだよな。めちゃくちゃ王道のラブストーリーだなFREEDOM……。
キラの懊悩に決着がついてからは最強戦艦ミレニアムと最強操舵士ノイマンが暴れ回ってオーブ驚異のオーパーツ・アカツキが全部吹き飛ばしてキラアスランシンの主人公三人が暴れ回って完! で終わるんだけど(いやマジ。ナデシコくらい強いよミレニアム)、その暴れ回るレクイエム決戦がこの映画一番の見所。MS戦がキレッキレだと……嬉しい~!
特にシンとデスティニーの大立ち回りがマジですごい。「大型狩り特化の汎用機だからサードシリーズ同士のMS戦だと相性差が~」とか「どこかの武装が必ずデッドウェイトになるから~」みたいな私の妄言を吹き飛ばすレベルでかっこよかった。知らねえよあんな技!
いや確かにデスティニーは分身できるけどアレってミラージュコロイドが焼き付いた残像だよね!? なんでデスティニーがいきなり10体くらいに分身してアロンダイトとビームブーメランと名無し砲の連携コンボを1人でぶちかましてネームド5人中3人を単騎、1人をとどめだけドム女に譲った実質撃破の形でぶっ飛ばすの!? やっぱシンだけMSをシンクロ率とゲッター線で動かしてるよね!?
いや本当に今回のデスティニーは文句無しに最高だった……すごかった……壮絶だった……あと敵が使う「トラウマを引き出して動揺させたところで望む幻覚を見せる」タイプの精神干渉を「シンの深すぎるトラウマを直視すると敵の方が発狂するので無効」でごまかすのやばすぎて爆笑した。もう最強二次創作の範疇だろ。
個人的な好きピとして、シンのトラウマの象徴だったステラの加護が敵から見ると完全な怨霊だったのが好きな手付きだったな。
そうだよな……悲しい死別が美しい思い出なわけがないよな……。確かにこの腐った世界で「可能な限り生きて平和のための明日を求め続けてほしい」って客観的に見ると完全な呪いだよな……。でもシンはこの呪いが楔として刺さってないと壊れちゃうし、彼には呪いを愛おしく受け止めるだけの優しさがあるんだよ……シン……好きだ……。
ごめんシンのこと今かなり好きピだからもうちょいシンの話していい?
ドラマCDの描写を拡大解釈してシンのことを「キラのことが大好きな後輩わんこ」と称する風潮が二次創作界隈にあるんだけど、本作のシンはマジでそんな感じだったな。私はそういうの……大好きです!
本作を「シンの話」として見ると「キラさんとたたかえてうれしい! キラさんがたよってくれなくてかなしい! ジャスティスきらい! デスティニーすき! キラさんがまかせてくれた! おれがんばる!」みたいな単純な乱高下してそのテンション落差だけで全員ぶっ殺してるの、駄犬すぎるしキラとの相性が良すぎるな……まさかここまでとは……。
キラが食事も手につかないくらい緊張してるパーティーでメシを五人前くらいモリモリ食べたり(しかも揚げ物とピラフとデザートだけのクソガキビュッフェ)、絶対にふざけちゃいけない場面で制圧ごっこしてルナマリアにマジギレされたり、「ジャスティスだから負けたんだ! デスティニーがあればあんな奴ら……!」ってDESTINY後半ばりの悪い顔で負け惜しみを言った後に本当にデスティニーで人智を超えた戦果を出したり、全体としてシンのクソガキ成分とそれに見合わない常軌を逸したMS乗りの才能が存分に出てて本当によかった。
コメディリリーフ要素を完全に担ってたから嫌な人もいるかもだけど、私が好きなシンは空気が読めなくてアホ強いクソガキなんだよ……。可愛いクソガキのシンが全てを失って追い詰められてフリーダムを墜とすからエンジェルダウン作戦は美しいんだ……。
話を戻すと、マリューの作戦が「戦術バジルール」だったり、イザークの新型デュエル(なんとデュエルとバスターの新型が出てイザークとディアッカが搭乗します。しかも核動力を積んでミーティアまで装備します。もうジャスティスとフリーダムの同型機を見つくろってやれよ!)がブリッツのトリケロスを装備してたり、FREEDOMは全体的に「死を背負い呪われることの責任」と「それでも継承することの大切さ」を重く取ってる作品だったな。
作品の本テーマというほど重くはないけど、「戦争と死から目を背けず一歩ずつ進むとはこういうことだ」という在り方をつぶさに表現していて私はすごく好きなやり方だった。
あとアスランはちょっと面白すぎるので反省してほしい。ズゴックって……スケベ妄想で敵の精神干渉を無効化って……。マジでアスラン周りは狂ってたからぜひ観てほしい。画面に出るだけで面白い男が狙って面白いことをしていると100倍面白い。
でも面白いだけじゃなくてちゃんと強くてかっこよかったし、何よりフラフラしないで「俺は平和とカガリが好きだ! そのために戦う!」を徹底していたから、基本ふざけてたけど最終的な視聴感は良かったな。基本的にクソ真面目に悩んだ結果クソ野郎になったDESTINYとは大違いだったな!
新型フリーダムはもうイベント戦みたいな強さだったし、キラのMS戦って一回見ただけだと伝わらないくらいゴチャゴチャしてる(殺陣がきったねえ上にMSの関節が派手すぎて目に痛い)からSEEDの殺陣が好きな身としては正直に言って微妙だったけど、「ラクスとキラが手を取り合って共にSEED覚醒して戦う機体」ってコンセプトがFREEDOMすぎて印象も良かったな。
ヴォワチュール・リュミエールを活用した守る機体というコンセプトが「ラクスを羽織ったキラ」のトップダウン・デザインに合ってたし、日本刀二刀流の基本武装がキラの戦闘スタイルに合いすぎててカッコよかった。スパロボで見たら絶対好きになる。精神コマンド2人分あるし……。集中、加速、ひらめき、狙撃、魂と脱力、偵察、気迫、覚醒、愛かな……。これくらいあったら嬉しい……。
完全に偏見だけど、ストフリの当たったら死ぬ代わりにドラグーンで超火力の戦闘スタイルをキラがうっすら嫌いで、そこから逆算して「装甲は増やしようがないから……バリアつけよう。固定武装が強いから手持ち武装は格闘戦に特化したいな。当然ドラグーンで推力塞ぐなんてしょーもないことしないし……」って半ギレで設計したのが見て取れて面白かったな。
総評として、自分がガンダムSEEDが好きだったなという気持ちを思い出させてくれて、その気持ちに一切の後悔と後ろめたさを感じなくなる快作だった。あったんだよ……SEED好きってだけでなんか石を投げられた時代が……。
今なら言える。私がガンダムシリーズで一番好きなキャラはシン・アスカで一番好きなMSはデスティニーガンダムです!