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ユーザーになりきる「コスプレUX」で観察力をUP、ユーザー解像度を上げる方法

今回のPdMとして、あまり書籍などでも語られていない、自分の中で実践しているリサーチポリシーを共有したいと思います。4年前にも記事化したのですが、改めて実践方法までまとめていきたいと思います。

UXリサーチの解像度が上がり、プロダクト作りの参考になれば幸いです。
↓は前回の記事ですので、ご参考までに。


コスプレUXとは?

コスプレイヤーの凄さ

皆さん、コミケに行ったことはありますか?
夏と冬に開催されていますが、コスプレイヤーの方が好きなアニメキャラクターになりきり撮影を楽しんでいます。

特に、最近ではテレビのバラエティでも、えなこさんが登場して、コスプレに関する認知度も高まっているのかなと思います。

以前、私もアニメ系の新規事業のマーケティングで行ってから、コスプレイヤーさんの再現度の高さに驚かされました。特に、表情作りやメイク、武器や装飾品、仕草まで完璧に再現していて、プロ意識を感じました。

徹底した観察の手法

そこで、「プロダクト開発にもこの観察力を活かせるのでは?」と考え、「コスプレUX」を思いつきました。 プロダクトマネージャーとして、リサーチ中に何となくやっていたことを、改めて手法としてまとめてみました。

UXリサーチでも「ユーザーになりきる」「当事者の目線でヒアリングする」といった言葉があるように、ユーザーになりきることの大切さはよく言われていますよね。
その通りで、ただヒアリングするだけでなく、ユーザーになりきって観察することで、ユーザーの仕草や使っている道具、行動、さらには感情まで深く理解できると思っています。

これは、コスプレイヤーがキャラクターになりきるように、ユーザーの行動を真似ることから始まるのではないでしょうか。

エスノグラフィ調査でいいのでは?

リサーチにおける観察手法だと、エスノグラフィとどこが違うのか?
という方もいるかと思います。改めてエスノグラフィ調査について整理しておきます。生成AIに聞くと整理してくれました。

エスノグラフィ調査とは、研究者が特定のコミュニティや文化に深く入り込み、その人々の日常生活を観察、参加、記録することで、彼らの行動、価値観、信念などを理解しようとする質的な調査手法です。

エスノグラフィ調査の特徴

  • 現場主義: 研究者が実際に現場に身を置き、人々と共に生活したり、行動を共にしたりすることで、より深く、リアルなデータを得ることができます。

  • 観察と参加: 観察だけでなく、積極的にコミュニティの活動に参加することで、内側から文化を理解することができます。

  • 長期的: 短期間の調査ではなく、ある程度の期間をかけて調査を行うことで、より深い洞察を得ることができます。

  • 質的データ: インタビュー、フィールドノート、写真、映像など、多様な質的データを集めることで、人々の生活を多角的に捉えることができます。

メリット

  • 深い洞察: 人々の行動の背景にある動機や価値観を理解することができます。

  • 新たな発見: 従来の調査手法では見落とされがちな、潜在的なニーズや課題を発見することができます。

  • 共感: 研究者が実際に体験することで、対象者への共感を深めることができます。

デメリット

  • 時間と費用: 長期的な調査が必要となるため、時間と費用がかかります。

  • 研究者のバイアス: 研究者の主観が入る可能性があります。

  • 倫理的問題: プライバシーや情報開示など、倫理的な配慮が必要です。

時間とお金を掛けなくてもできる

もちろん、しっかりとした調査設計をしてレポーティングすることが大事だと思います。マーケ部門だと予算と時間が使えるケースも多いと思いますが、プロダクト開発のチームが調査にコストと時間を大きく掛けることはできません。

そこで、プロダクト開発の担当者が如何に効率よく、ユーザーインサイトを観察できるか誰でもできる主要としてコスプレ観点を思いつくに至りました。

UXリサーチの落とし穴

そして、UXリサーチはユーザー体験を向上させるための重要なプロセスですが、その道のりは決して平坦ではありません。「課題が見つけられない」「仮説が立てられない」といった壁にぶつかることは、多くのリサーチャーにとって共通の悩みだと思います。

特にジュニアのUXデザイナーやPdMはユーザーの意見を鵜呑みにしてリサーチしてしまうことも多いのではないでしょうか?

1.課題発見の難しさ

「当たり前」の奥にある本音を探る
ユーザーインタビューを実施したものの、「使いやすかった」「特に問題なかった」といった、当たり障りのない感想ばかり...。

例えば、新しいECサイトのユーザビリティテスト。ユーザーは「商品検索はスムーズだった」と答えるかもしれません。
しかし、検索結果の並び順にモヤモヤを感じていたり、絞り込み機能が分かりにくくても、普段のオンラインショッピングでの「当たり前」に慣れてしまい、具体的な問題点を言葉にするのが難しい場合もあるでしょう。

「ぼんやり」とした気持ちを紐解く
さらに、アンケート調査を実施したものの、「まあまあ満足」「どちらでもない」といった、曖昧な回答ばかり...。

例えば、既存アプリの満足度調査の場合、ユーザーは「全体的には満足」と回答する一方で、具体的な改善点については「特に思いつかない」と答えることもあります。
あるいは、複数の不満点を抱えていても、それを一つにまとめることができず、「なんとなく使いにくい」という漠然とした感想しか述べられないかもしれません。このように、表面的な回答や曖昧な意見からは、具体的な課題を特定し、改善につなげるための具体的なアクションを導き出すことが難しいです。

ユーザーの「当たり前」を優しく掘り下げ、具体的な質問や行動観察を通じて、言葉にならない潜在的なニーズを明らかにすることがリサーチでは大切です。そして、「ぼんやり」とした気持ちを丁寧に紐解き、ユーザーインサイトを用いて具体化していく必要があります。

2.仮説構築の難しさ、解決策が1つじゃない

UXリサーチによってユーザーの課題を特定できたとしても、それを解決するための具体的な仮説やアイデアを導き出すことは容易ではありません。特に、課題があいまいだと、わかりきった仮説になることも多いです。

例えば、ECサイトのユーザビリティテストで、「検索結果の並び順が分かりにくい」という課題が見つかったとします。では、どのように並び順を変更すれば、ユーザーにとってより良い体験を提供できるのでしょうか?

  • 価格の安い順?人気の高い順?新着順?それとも、過去の購入履歴に基づいたおすすめ順?

  • 並び順を変えるだけじゃなく、検索結果そのものの見せ方を変える必要があるのかも?

  • もしかしたら、検索機能自体に問題があるんじゃなくて、サイト全体の構造や情報の伝え方に問題があるのかも?

このように、一つの課題に対して、考えられる解決策は無数に存在します。UXリサーチャーやPdMは、まるで宝探しのように、これらの選択肢の中から、最も効果的な解決策を見つけるために、仮説を立て、検証していく必要があります。しかし、この仮説構築こそが、UXリサーチにおける最も難しいプロセスだと考えています。

仮説構築には、ユーザーの気持ちを理解する力、デザインの知識、ビジネス的な視点など、様々な知識や経験が必要とされるからです。また、立てた仮説を検証するための適切な方法を選び、実行することも簡単ではありません。

4つのステップでユーザーになりきる

コスプレUXの4つのステップ

ここまでお話してきたように、UXリサーチの落とし穴にハマらないために、ユーザーを深く理解し、共感することは、UXデザインにおいて欠かせません。
しかし、机上の空論だけでユーザーを理解しようとするのは限界があります。そこで、今回はユーザーになりきって、コスプレをするかのように観察できる4つのステップを紹介します。

1. インプット:徹底的な情報収集

まずは、リサーチ対象となる市場や現場に関する情報を徹底的に集めましょう。まるで探偵が事件の背景を調べるように、業界の主要プレイヤー、競合サービス、ユーザー像、最新の業界ニュースなどを把握します。

主要企業のウェブサイトや広報資料、業界ニュースサイトなどを参考にしたり、SWOT分析や競合マッピングなどのフレームワークを活用することも効果的です。これらの情報を検索などを駆使して集め、誰かに説明できるレベルを目指しましょう。

新規事業の場合、業界地図やプレスリリースを検索して情報を仕入れることをやっていました。昨今であれば、生成AIを活用して、情報収集が効率よくできるかもしれません。

2. アクション:現場に足を運ぶ

次に、集めた知識を携えて、ユーザーがいる現場に足を運びましょう。
足を運ぶのは面倒くさいのですが、思い切ってユーザーの生活圏に飛び込んでみましょう。職場、街中、飲食店、施設など、リアルで観察できる場所であればどこでも構いません。

現場では、五感をフル活用して観察しましょう。普段気にしているポイントを整理してみました。ユーザーのアクションはもちろんですが、どのような環境の中で過ごしているのかを中心に感じるようにしています。

どんな人がどんな行動をし、どんな道具を使い、どんな気持ちでいるのか。カフェであれば、一人で来ているのか、グループで来ているのか、何をしているのか(勉強、仕事、談笑など)を観察します。
また、照明、BGM、内装、人の声の大きさ、店員の態度なども観察のポイントになります。これによって、リアルな現場の空気感を肌で感じることができます。
特に匂いは、印象に残ることも多いので、周りを観察しながら嗅ぐようにしています(笑)

これによって、机上で考えていた内容をさらに具体化したり、新しい発見があるはずです。

3. イメージ:想像&体験する

最も重要なのがイメージです。ユーザーの視点に立ち、彼らの体験を深く理解しましょう。

ユーザーと同じサービスを利用したり、同じ商品を購入したりすることで、ユーザーと同じ目線で課題や気持ちを感じることができます。
例えば、ECサイトであれば、実際に商品を購入し、配送から開封、使用感までを体験してみましょう。
特に空けた時の空けやすさやワクワク感、逆に開けづらい、空けた後の手順がわかりづらいなど、自分の感じることをしっかりメモしておくことが重要です。

自分では体験できない業務の場合は、その業務に関わる体験を自ら行う中で、どのようなことをしているのか観察して記録するようにしましょう。

例えば、医療従事者の体験が難しい場合は、病院に行って受付や待合室の様子、医師や看護師の動きなどを観察するのも同様の体験になります。また、ドキュメンタリー番組や動画を見たり、映像から情報を仕入れるようにすると効果的です。

さらに、話す機会があれば、インタビューのアポをとったり、業務の話をきくなどの積極的なアクションも重要です。直接話を聞くことで、より深い理解につながります。ユーザーインタビューを実施する際は、事前に質問内容を準備し、ユーザーの言葉にしっかりと耳を傾けましょう。

4. レビュー:客観的な視点を取り入れる

最後に、ここまで得られた知識を基に、有識者にあなたの理解度を確認してもらいましょう。客観的な視点から評価してもらうことで、自分の視野では見えていないことやさらに新しい気づきが得られるはずです。

有識者とは、対象となるユーザー自身、またはユーザーをよく理解している人を選びましょう。例えば、不動産業界であれば、不動産のプロや実際に物件を探している人などです。

  • 「私の理解は正しいですか?」

  • 「何か見落としている点はありませんか?」

  • 「もっと深く理解するために、他にどんなことをすれば良いですか?」

  • 「業界の◯◯ってなぜ風習があるのですか?」

といった具体的な質問を投げかけてみましょう。

他者に評価してもらうことで、自分の自信にもつながります。UXワークを進めていく中で、ユーザー体験を迷わずに進めることが可能になります。
なかなかレビューアに会えない場合は生成AIにコーチをしてもらうことも手段の一つです。

実践した事例の紹介

営業DXの案件で営業のテレアポを経験する

私が実践した中でも、大きな気づきを得られたのが営業のテレアポ経験です。当時、神田の営業所に3ヶ月通い、営業支援の新規サービス構築を検討しました。
その際に、営業の気持ちを理解するために、営業経験をしてみようと思いました。テレアポや営業同行も行いましたが、特に印象深いのは、新規のコールでした。

1.調査:営業を知る

営業支援の業務を知る上で、CRMに溜まっているデータからディップの営業行動を把握するようにしました。
さらに、営業というタイトルが付いた書籍は、毎月購入して、ほぼすべて読み漁ったと思います。
自分で体験できなかったので、得られる情報手段はすべて活用して、情報をインプットするようにしていました。

2.アクション:営業所に行ってみる

そして、営業に関する特性を調査してから、現場の課長や同期と接触を行いました。今回は神田の営業所に席をもらい、3ヶ月プロダクト開発のために居座らせて頂きました。

この時に、営業所の雰囲気が本社と違ったことを覚えています。
かなり騒がしい時間とそうでない時間があり、外回りをしているので、日中はガラガラだけど夕方移行は、社内MTGや商談でワイワイ、ガヤガヤしていました。
特に本社は静かに業務を行う人が多いので、対象的でした。

3.イメージ:営業を体験する

体験は、一部業務を切り出してもらい、新規のテレアポのお手伝いする形で体験しました。実際に営業リストをもらい、上から順番にコールしていくのですが、ガチャ切りやクレームが発生します….

アポを取りたくても、対応に追われたり、メンタル的に折れることも多々あり、本当に辛い業務なんだと実感しました。しかも毎回商談ログを残して行くのが面倒….成功したら入れるだけになる理由が身を持ってわかりました。

こういった経験を通して、200個の営業課題から、リストアップをそもそも効率化して、ちゃんと繋がるリストを提供する価値を特定することができました。

4.レビュー:営業に感想をもらう

最後は一緒にプロダクト開発を手伝ってくれた営業に、インタビューをしながら、業務の本音を聞き出し、自分の知識が正しいかどうかを確認しました。今回は、3ヶ月もいたので、かなり同じ目線、課題感を持つことができていました笑
ここまで、現場に行って営業になりきる体験をしたからこそ、営業DXで新しい価値を創出できたのだと実感しています。

最後に

このように、営業になりきるコスプレを行うことで優良なインサイトが見つかりました。UXリサーチも生成AIがやってくれたり、非常に便利になりました。情報のインプット精度が上がったことに満足することなく、人だからできる価値をさらに強くしていくべきだと思います。
コスプレするUXリサーチ「コスプレUX」をぜひ、経験してみてください。

よろしければ、こちらの記事も参考にしてください。


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