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意味のデザインとAIによる新しいビジネスのヒント

今回は課題解決の手段としてAIを活用するのではなく、ビジネスシーンで生成AIやAIエージェントを活用して、新しい価値を創造するにはどうすれば良いのか?意味のデザインとAI活用についてまとめていきたいと思います。

課題解決のAIが1番ニーズがあると思いますが、パターン化してしまったのでワクワク感は少ないなと思う日々です。もちろん、ビジネスの各KPIを上げるためにAIを活用しますが、AIを活用して、新しい体験やビジネス価値を提供してみたいですよね。

そこで、今日紹介する考え方でAI体験を再度デザインしてみてはどうでしょう?

※今回の記事は、下記の書籍を参考にしています。
詳細は説明しきれないので大事な箇所だけ抜粋しました。
書籍名「突破するデザイン」(2017)ロベルト・ベルガンティ,日経BP社


意味のイノベーションとは?

意味をデザインする必要性

ビジネスの現場ではユーザーの事を理解して、課題を見つけて、解決策となる価値を見つけることが重要だと言われてサービスデザインやデザイン思考など各手法が広まって来ました。

この課題発見と解決は重要で、より新しい解決策、価値を生むためにUXデザイナーは頭を捻ることでしょう。しかし、HOWを追求することになり、効率的な解決策に囚われて、革新的なアイデアを考える事が出来なくなってしまうことが多いように思えます。

特に生成AIを用いて新しい事を創造していきたい企業も多い中、課題解決のAIにフォーカスしてしまうのは非常にもったいないのではないでしょうか。
もちろん効率化は非常に大事ですが、もっと大きな成果を逃しているかもしれません。

従来の問題解決との違い

解決策の前に、そもそも本当に課題なのか?
「なぜ」を確かめる事で、コモディティ化した解決策から抜け出せるチャンスがあります。そこで活用できる考え方が「意味のイノベーション」です。

図:イノベーションプロセスのポートフォリオ『突破するデザイン』(日経BP社)より

課題を解決するゴールは同じですが、アプローチ方法が違ってきます。
デザイン思考を中心とした考え方は、解決手段を見つけるための材料を見つけることが主な作業になります。
一方、意味のイノベーションでは、サービスやモノの意味を問いただしていくので、意味のイノベーションをプロセスに加えることで、解決手段の選択肢が増えていきます。

書籍の中でもこんな表現がありました。

従来の問題解決型のイノベーションが「外から内へ」に向かって方向性を取る(outside-in)のに対して、意味のイノベーションは「内から外へ」のプロセス(inside-out)を経て実現される。

従来のデザイン思考はユーザーやサービスの外から中へ課題を探りにいきますね。私も普段プロダクト開発をしていく中で、人間の中にある課題から外に向けて根源を探るプロセスは、デザイン思考の過程でやっているようで、何となくこなしていることが多かったのかもと思いました。
改めて、なぜ使う・利用する必要があるのか?根源に戻ってみる視点が重要とのことです。

意味のイノベーションの具体例

アロマキャンドルの発明

意味のイノベーションを活用した具体的な事例を紹介します。

書籍でも「ロウソク」の事例が語られています。昔、ロウソク暗闇を照らす道具として、停電に備えて配備された商品でした。しかし、電球の普及とともに1830年代に創業したロウソク屋は2001年にはついに廃業することになります。プレイヤーの台頭によって、従来のロウソクは意味を持たなくなってしまいました。

そんな中、Yankee Candleという会社は香りのついたキャンドルを開発しました。都会生活で疲れた人々が「ロウソク」を灯すことで「癒される」意味を見出し、商品の新しい価値を販売したのです。

これを意味のイノベーションで分解すると以下のようになります。

  1. 実用的な意味:炎を生じさせるロウに囲まれた明かりを照らす道具

  2. メッセージの意味:暗闇を照らす火、ケーキにロウソクの火を灯すこと

  3. 価値としての意味:ロウソクを使う目的(明るさ、香り、安らぎetc)

改めて、ロウソクを内面から見直してみると、シーンによって人間にもたらす価値が変わることがわかります。

恐らく、ここで大事なのは、内面で人間がどのように感じているか?
ロウソクの火によって得られる感情や気持ちよさの変化になると思います。

意味のデザインをビジネスで取り入れる

デザイン思考との比較

具体的にビジネスシーンでの活用を考えてみます。
ロウソクの例を考えると、機能や実用性の満足ではなく、楽しさや美しさといった喜びや快楽に近い部分の課題整理で活用できそうです。

従来のデザイン思考と比較表を作成してみました。
人間中心に改めて考え、望んでいるものを考えていく視点を取り入れれば良いことがわかります。それは、課題から始めるのではなく、本来の意味を問い直していくことが重要になりそうです。

生成AIの登場によって、既存の機能やサービスを効率化・自動化しようとする動きは活発ですし、大きな成果が出てビジネスが変化しています。

しかし、ユーザーが本来サービスを通して得たい価値は本当に効率化の先にあるでしょうか?ビジネスの数値だけでなく、ユーザーが求めている新しい楽しさや嬉しいといった感情に響くプロダクト作りに意味のデザインが効いてきそうです。

具体的な手法については、追って記事化したいと思いますが、長くなってしまうので、今回は割愛します。

※意味のイノベーションについて、詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。

意味のイノベーションとAI

意味のイノベーションについて、ざっと理解したところで、AIとの関わりを考えて行きたいと思います。この辺は個人的な考察が多いので、解釈違う部分もあるかも知れません、ご了承ください…

※ここでのAIは、広義なAI意味を指しており、新たな創造で活用するシーンを想定しています。問題解決をする際には考慮していません。

AIが人間の望んでいる意味を理解する

意味のイノベーションによって、意味=なぜを問い直すことで、より愛される価値を見つけていく重要性がわかりました。AIを用いることでサービスに新しい価値を加えるチャンスができます。そのポイントは、人とのインタラクションになるかもしれません。

AIは様々な定義・活用方法が考えられますが、新しい価値を創造する場合に人の思考や欲求をAIが理解することで、意味を理解して、新しい提案が可能になりそうです。

例えば、スーパーのカートをAIで拡張するのであれば、手に取った品物やカートに入れた品物から、次に買うべき食品や献立を提案するといったことも可能になるでしょう。
ここに、さらに新しい価値を提案するならば、毎日の献立から健康アドバイスや体調管理のサポートをスーパーのカートがしてくれるなんてことも可能かもしれません。

改めて「実用性の意味」、「メッセージの意味」、「価値としての意味」をAIを通して実現することで、従来の商品企画とは別次元でサービスを検討できるのではないでしょうか?

生成AIの業界でも有名なUXデザイナーのしょーてぃさん(@shoty_k2)が生成AIとビジネスモデル変革のスライドでも紹介しています。今までの金融管理サービスが生成AIによって、毎日使いたくなる支出管理サービスに変革した話が解説されています。

このように、新たな価値の創造で活躍するAIは、意味を問い直すことで、新しいサービスとしてビジネス変革するチャンスがあります。

これは、既存のデザイン思考とは別の考え方です。
人の価値が多様化しているからこそ、AIを活用する際には、意味を問いただしてみてはいかがでしょうか?

ご意見などあれば、Xでもお待ちしております!
今後もAIエージェントの可能性について発信していきます。

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