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愛。またはそれに準ずる何か 3
目を覚ました時、私は冷たい床に転がっていた。後頭部がズキズキと痛む。かなり硬いもので殴られたみたいだ。あと、なんだろう、少しぼうっとする。脳に薄く靄がかかっているみたいだ。
そういえば、ここはどこだ?
まだ上手く働かない頭をゆっくりと持ち上げて立ち上がろうと試みる。多少もたついたものの問題なく立ち上がって、辺りを見回す。
広い部屋、高そうな調度品に、磨き上げられた床、柔らかい絨毯。ここはスラム街じゃない。こんなに綺麗な場所はあそこには無い。
友人は大丈夫だろうか。
私が殴られた時、友人はどうしていた?思い出せない。無事だと良い。
そんなことを考えながらジリジリと壁際へ下がる。この部屋は落ち着かない。
これからどうすれば良い?スラム街に……そうだ、スラム街に帰らないと。振り向いてドアを見つけると、飛びつくようにして開ける。そのまま飛び出そうとして何かにぶつかった。
後ろによろめいて、ぶつかったものを見上げると、赤い肌、裂けた口、黒い結膜に金の瞳、友人だった。
いつものボロ服でなくて、しっかりした生地の上等な服。
無事で良かった、なんて言葉が口をついて出た。
友人は薄く笑ったあと、私を殴ったのは自分の部下だと告白した。あぁ、どうりで、友人は殴られなかった。真剣味に欠ける考えが頭の中を渦巻く。
理解できないのではなく、理解したくないのかもしれない。
自体が呑み込めない私に友人は部屋の中心のソファに座るように勧めた。言われるがままに座ると、友人も私の前に座った。
よく分からない。何があったのか、処理しきれていない私に友人は質問はあるか?と聞いてきた。
質問。ある。
第1に、ここはどこか?自分の家だと友人は言った。
ここはスラム街か?もちろん違う。
あなたは、誰なのか?スラム街の外の、悪い人だ。
どうして私を連れてきたのか?面白そうだったから。
そこでふと、思い出したように友人は5年前、私の母と父を殺したのは自分の命令を受けた部下だと言った。
それを聞いた瞬間、ぼんやりしていた頭は覚醒した。血が上った。
私は友人に怒鳴りつけた。なぜ、2人を殺したのか、と。友人は一言、面白そうだったから、と。
私はそいつを殴りつけた。肉を叩く音が響いて、そいつの口内が切れたのか、血が拳に少し付いた。
こいつにとって、私たちスラム街のひとなどおもちゃでしかなかったんだ。「ひと」として認識していたかどうかすら、今となっては怪しい。
騒ぎを聞き付けたのか、化け物が数にん、入ってくる。
そいつらには目もくれず、私は再度、目の前の屑に殴り掛かる。屑はただ笑い声をあげているだけで、抵抗しない。それが腹立たしかった。入ってきた化け物が私を取り押さえると、屑はそいつを捨ててこい、と冷たく言った。
首筋に熱を感じて体が一瞬硬直し、また、私は気絶した。
最後の最後まで、私は屑を睨みつけ続けた。許さない。許さない。いつか、必ず!