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tomiehiroyuki
行動経済学の逆襲 要約⑥
同じものでも、場面によって支払う値段は変わってきます。
居酒屋でビール一杯700円で売っていたら、「ぼったくりだ!」と思うのではないでしょうか? 一方、野球場でビール一杯700円で売っていたら「まあ妥当だな」となりますよね。(ちなみに私はなりません。)
今回はこうした違いに関するお話です。第7章「お得感とぼったくり感」の要約です。
【全体の要約】
消費者は、消費から2種類の効用を獲得している。「獲得効用」と「取引効用」だ。「取引効用」は参照価格と実際の価格との差であるため、参照価格次第で、お得感やぼったくり感を与える。
1. 獲得効用と取引効用
機会費用の考えを理解している「エコン」ならば、1000ドルの使い道を選べと言われたときに、無限の可能性の中から最も幸せになる使い道を考えなければなりません。
現実の消費者は、どのように意思決定を行っているのでしょうか?
著者の疑問は「費用はいつ損失になるのか?」でした。100円のお菓子を買ったとき、私たちは「100円損した」とは考えません。だとすると、私たちは何を考えているといえるのでしょうか?
ここで登場するのが「獲得効用」と「取引効用」です。
「獲得効用」:財を消費して得られる効用から、財の消費のためにあきらめる機会費用を差し引いた残り
「取引効用」:通常支払うと予想される価格(参照価格)と、支払った価格の差
消費者は、消費からこの2つの効用を獲得していると考えられます。そして、取引効用が「お得感・ぼったくり感」を与えるのです。
冒頭で紹介したビールの事例も、この「取引効用」から説明されます。野球場で売られているビールと居酒屋で売られているビールに対しては、「参照価格」が異なるのです。
2. 希望小売価格
「取引効用」でお得感を出すために、長年使われている手法があります。それが、「希望小売価格」の表示です。
希望小売価格によって参照価格を操作し、消費者に正の取引効用を感じさせる工夫(罠?)がされています。
「いつでも低価格」路線はうまくいかないことが多く、消費者にいかにして「お得感」を感じさせるかが大事になってきます。
以上が第7章の要約になります。
次回予告
次回は、第8章「サンクコストは無視できない」です。