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行動経済学の逆襲 要約⑪

 私は、おやつが大好きなので、おやつを食べ始めるとついつい食べ過ぎてしまいます。そんな自分とどう戦うかは、「セルフコントロール」の問題と呼ばれています。
 今回は、第12章「自分の中にいる計画者と実行者」の要約です。

【全体の要約】
 2つの自己モデル、を用いることでセルフコントロール問題は説明でき、「計画者」が「実行者」の行動をどう管理するかという問題になる。
 セルフコントロール問題に対処するには、「コミットメント」と「誘惑に負けた時のコストをあげる」の2つの方法がある。
 コミットメントは、実現可能かどうかという問題が、コストを上げる方法には喜び自体が減ってしまう、という問題がある。

1. セルフコントロール問題に対する研究

 心理学者のミシェルは、次のような実験を行いました。

 4~5歳の子供に、「君にオレオを1つあげる。いつでも好きな時に食べていいよ。でも、先生が返ってくるまで待っていたら、オレオを3つあげるね」と伝える。
 子供はどうしても食べたくなったら、机の上にあるベルを押して先生を呼べばオレオが1つ貰える。押さずに我慢していれば、3つ貰える。

 この実験の結果は、「子供たちの待っている環境」によって変化しました。オレオが目の前に置かれている状況では、子供たちの待機時間は1分強でしたが、オレオを見せずに待たせると、結果は11分強になりました。
 また、違う遊びをするなどしてオレオのことを考えないようにすると、待機時間は伸びるという結果でした。
 
 さらに、この実験に参加した子供たちの追跡調査を実施しました。すると、オレオを食べるのを我慢した子供たちは、大学入試の点数が高く、薬物依存の割合が低いということが分かりました。

2.セルフコントロール問題の対処法

 セルフコントロール問題には、2つの対処法があることが知られています。
 
 1つ目は「自身の選択の制約(コミットメント)」です。例えば、オレオの実験では、「ベルを手の届かないところに置いておく」、「こどもが動かないようにずっとだきかかえる」などです。
 2つ目は、「誘惑に負けた時のコストを引き上げる」方法です。例えば、禁煙しようとしている人が、たばこを吸っているところを友達に見られたらその人に罰金を支払う、のようなルールを設定する、といった方法です。

3.2つ自己モデル

 著者は、セルフコントロールという問題を考えるにあたって、「2つの自己がいる」というモデルを考えました。
 1人は、常に先を見通す「計画者」で、意志が強く将来のことを考えます。もう1人は、今を生きる「実行者」で、その瞬間の欲求を満たすことを大事にします。
 この2つの自己の相互作用が、セルフコントロール問題だと考えたのです。

 計画者は、実行者を制御する2つのツールを持っています。
 1つ目は、実行者に報酬や罰を与えることで、実行者に裁量を残しながら影響を与える方法。2つ目は、ルールを課して行動を制限する方法です。
 
 「罰・罪悪感を与える」方法は、実行者の行動を制限できますが、その結果、実行者が誘惑から獲得する喜び自体が減ってしまうという問題があります。
 一方、ルールを課す方法は、実行者の意志力がいらないというメリットがある一方で、そもそもそのルールが利用できる状況じゃないと意味がありません。

 例えば、ダイエットしているときに、「おいしいお肉」の誘惑があるとしましょう。この場合、「毎日サラダを食べる」というルールを課したとしても、肉を完全に切り離すことはできません。なので、「お肉を食べることの罪悪感をかんじさせ、お肉を食べる喜びを減らす」という方法をとることになります。

以上が第12章の要約になります。

次回予告
次回は、第13章「行動経済学とビジネス戦略」です。


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