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アシナガバチとコガタスズメバチ

ここ数年は、庭のどこかにアシナガバチが巣をつくるのが当たりまえのようになっていた。それも一つではない。つるバラの葉裏が一番人気で、それから同じバラの細い枝につくるのもいて、近くの生垣を選ぶのもいる。巣が小さいうちに取っても、また同じところにつくるから困る。そのうえ女王バチがたったひとりで住まいをつくり、子育てする様子を見ていると、こちらが危ない目に合う前になんとかしないといけないのは分かるが、それでもかわいそうな気持ちになってしまう。冬眠から目覚めたばかりの女王バチは、なんとも弱々しく、花の蜜を求めているのか、春の庭をふらふらゆらゆら飛んでいる。

それがこの春は、いつもなら小さな巣を見つけているはずの6月になっても巣は見当たらず、アシナガバチの姿もなかった。どうしてなのか、つるバラはもうあきらめたのか?

高く伸びた山茶花を剪定しているときに、たぶんアシナガバチを見かけない理由が落ちてきた。なにかのハチの巣だと思ってとりあえず逃げる。調べてみるとスズメバチらしい。比較的小ぶりで、比較的狂暴ではないほうの「コガタ」がつくやつらしい。それでもやっぱりスズメバチといわれると怖い。うっかり巣のある枝を切って、落下させてしまったが、まだ小さい巣で働きバチもいなかったので助かった。

最近ころっとした黒いハチがブーンと音を立てて飛んでいたのに、てっきりクマバチかと思って、気にしないでいた。あのハチ、スズメバチだったのか。これまでスズメバチもその巣も実際には見たことがなかったから、こんな住宅地の庭に出現するなんてちょっと信じられない。でも、とっくり型の特徴的な巣の形状は、コガタスズメバチの住まいであることを示している。

それから数日は、巣をなくした女王バチが、困っているのか、怒っているのか、巣があったはずの場所やその周辺をブーンと飛んでいるのを見かけた。その間、外に出るのも恐る恐る、早く諦めてどこかの森か林へ行っておくれ、と願って過ごした。

それからしばらくすると、アシナガバチを見かけるようになり、7月半ばごろ、アシナガさんが獲物を捕獲して肉団子をつくる現場を目撃した。

鉢植えのピエールの周りをアシナガさんがふわふわ飛んでいる。枯れた細い枝が落ちたように見えた。アシナガさん、ヒューっと下降するとその枝のようなものを攻撃し始める。枝のように見えたものはシャクトリムシで、アシナガバチから逃れるために自ら落下した模様。攻撃から逃れようと身をくねらせてアシナガバチに絡みつくも、まもなく力尽きるシャクトリムシ。勝ち目はないだろうに、果敢に絡みつくその様はへびのようだった。自分より長いシャクトリムシを捕獲したアシナガバチは、ご丁寧に肉団子をつくって飛び去った。残骸はどうするのかしらと思っていると、またふわふわと戻ってきて、少なくとも三回に分けて団子をつくり、作業をしていたコンクリートブロックには何の痕跡も残さなかった。

別に虫が好きなわけではない。でも、ふわふわ飛んでアシナガさん何してるんだろう、と思っていたら、こんなことになってしまって、目が離せなくなった。ちょうどサンルームのガラス越しに見えたから、わたしの存在も気にされず、わたしも安心して観察することができた。

とっくり型の巣のあとは、庭でハチの巣はつくられていない。でもスズメバチかもしれない黒っぽいハチをいまでもときどき見かけるし、アシナガさんも相変わらずふわふわふらふら飛んでいる。あるとき花壇の手入れをしていると、くるぶしの辺りに何やら止まっているので、びっくりして立ち上がりジタバタしたら、アシナガバチがふわっと飛んでいた。わたしいじめてないのに刺してるの? いや刺されてないよ? アシナガバチは人にとまって一休みするの? わたしを自然の一部だと思っている? 疑問は増すばかり。

#夏の写真

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