介護には共同参画の精神が必要
65歳以上の高齢者世帯が増えていることは周知の事実ですが、その中でも単身世帯が増えているデータを基に介護には共同参画の精神が必要だということについて取り上げたいと思います。
高齢男性のおひとり暮らしが増えてきた
今現在、高齢のおひとり暮らしの割合は3:1で女性の方が多いのですが、厚労省の推計によれば、男性の割合も増えてくると言われています。
最近、高齢者のお宅を訪問し、家族構成について感じることは、男性の「おひとり様」が増えてきたと言うことです。また、生涯未婚であったり、お子さんがいらっしゃらない場合もありますので、緊急連絡先に遠縁のご親戚さんの電話番号が記されることが増えました。
高齢男性が育ってきた環境
65歳以上の男性の特徴についてまとめてみました。
ザ・企業戦士です。
家事、育児、介護に関わったことがある男性は少ないのではないかと思われます。
上のグラフ(同居の主たる介護者の続柄別年次推移)から読み解いていくと、
今から30-40年前、家庭内における介護の担い手のトップ1.2.3はすべて女性です。
男性は外で働き、女性は家庭を守るという文化が当たり前だったと想像できます。
私自身も3世代同居の家庭に育ちましたが、祖母の介護は嫁である母が主に行っており、父は祖母の入退院の荷物を運ぶ手伝いはしていたような気がしますが、それ以外には参加してなかったような気がします。そのくらい、私の記憶に父が介護や家事に参加する姿がないのです。
祖母も息子である父に手伝ってほしいという話をしませんでした。嫁にしてもらうのが当然であり、近くの医院に薬を受け取りに行くことができないときは、私の弟ではなく、私がお使いをすることになっていました。この女性だけが介護に関わるということに違和感のない時代でした。
その頃の働くことを中心に考えてきた男性たち、そしてその男性を見て育った子どもたちは家事を女性に任せたら良いと、自身の身の回りのことができない(技術的にできない、精神的にしたくない)という傾向にあります。
高齢男性とその家族が動揺するとき
しかし、いつまでもその価値観を通せるものではなく、その高齢男性とその周りの家族に必ず動揺が訪れます。
働くことを中心に考えてきた男性が現役を退いた後と、男性を支えてきた女性のサポートがなくなった時です。
退職後、固定観念に縛られ続ける男性は孤独
平成26年 内閣府男女共同参画局が「男性の相談」について調査を実施しました。その調査結果によれば、
「男はかくあるべき」という固定的な意識が強く、他人に相談することを拒む傾向にあると記されています。
男性を取り巻く社会経済的状況の変化が顕在化する中で、男性は「男は弱音を吐くべきではない」という意識から、悩み等をなかなか相談しない傾向にあるそうで、調査によると、「他人に弱音を吐くことがある」と回答した男性は男性全体(20 歳代 ~60 歳代)の3割程度であり、「悩みを気軽に誰かに相談する」と回答した男性は、2割程しかいません。
また、男性の規範的な意識として「男は弱音を吐くべきではない」と回答した男性は、約半数にのぼります。
「男は弱音を吐くといった行動をすべきではない」とする意識は、価値観が多様化した現代でも根強いものがあると言えます。
そして家庭や地域の外で働き続けていた男性にとって、仕事以外の人間関係の繋がりは薄く、すでに作られたコミュニティーに新参者として飛び込むことを得意としない人が多いと考えられ、社会から孤立し相談する相手がいないことが想像できます。
ある日突然、妻の家事を当てにできなくなった
高齢者のおひとり暮らしの1/3が男性です。その多くが、連れ添った妻を亡くしてしまったからだと考えます。
突如として現れた家事を高齢男性が受け入れ、できるのかという問題に対して、今までの弊社サービスを利用された高齢男性の様子からするとかなり難しいと思います。
・新しいことを覚えることが苦手。
・他人の目に留まりがちな買い物、その姿を見られるのが恥ずかしい。
・ヘルパーをはじめ他人が自宅に入ってくるのがイヤ。
孤立した生活が始まるとプチ引きこもりが始まります。
地域から遮断されると、心身的に刺激がなくなり、認知機能の低下、身体機能の低下に拍車がかかります。寿命も縮まる負のスパイラルに突入するのです。
老後の自立に備えて、既存の習慣に囚われないことが大切
すでに介護度が進行してしまわれた高齢者に、心の在り方を変えることは難しいことですが、今「介護予防を真剣に考えたい。引きこもりたくない。」と思ってくださる皆さんにお伝えしたいことがあります。
ご自分の老後に備えて「男性はかくあるべき。女性はこうあるべき。」という固定的な意識を捨て、性別関係なく家庭内の役割を双方に担えるように、日ごろから家事や日曜大工に親しまれることをお勧めします。
精神的な自立と役割を双方に担えることにより、共倒れを予防することができるからです。
また、ご近所さんもしくは、趣味や仕事などを通して人脈づくりを継続していくことを意識しながら生活することも大切です。
引き続き、介護業界のマネージメントプレイヤーとしての思いを綴っていきます。
コーヒーをいれる利用者男性の写真
※退職後、妻から家事全般を教わり、今は妻の介護を介護サービスを使いながら行っているという。
参考文献:
内閣府男女共同参画局地方自治体等における男性に対する
相談体制整備マニュアル(改訂版)平成 26 年5月
立命館大学産業社会学部 津山正敏教授 同居の主たる介護者の続柄別年次推移
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?