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山登りの話
登るより下るほうが大変で、危険が伴う。これは山登りの話で、人生の話でもある。高い山を登れば登るほど、下りる時は大変な思いをするものだ。
週末、山登りをした。
といっても都内の小さな山で、山頂にはちびっ子たちがいるような高さだ。
登り道の前半はコンクリートで丁寧に塗装された道が続き、登山というよりちょっとハードな散歩程度でしかない。
そんな小さな山でも、登ると気づくことがある。
歩きやすくなだらかだった道は、途中からゴツゴツとした山道に変わり、頂上が近づくにつれ、急な登り道が私たちを出迎える。
山頂直前は急勾配で段差の大きい階段が続き、あげる足が重たい。次の一歩を出すのがやっと。最後は足を前に出すことだけを考えて登り切った。
息切れしながら見下ろす景色は最高だ。
身体に入ってくる空気は冷たくて気持ちいい。
山を登り切った達成感と高揚感で、
しんどかった道のりは全て報われた。
解放感に包まれた、その後が問題だ。
山頂から風景を眺めながら持ってきたお弁当を食べる。ひとしきり写真を撮る。次第に身体が冷えてくる。登ってきた山を降りなくてはならない。
登ってきた道を、またひたすらに歩く。
その道のりが険しく、厳しいのだ。
すでに歩いてきたはずなのに、少しでも気を緩めれば足元を救われてこけて大怪我をしてしまいそうなほど厳しい。周りの自然に目をくれる余裕などはない。すでにもう見た景色だし。
歯を食いしばって、
一歩、一歩、慎重に歩みを進める。
ただそれだけ。登りつめた先の楽しみは忘れてる。
残されたのは果てしない帰り道への嘆きだけだ。
あとは帰るだけ。
でも用心しないと無事に帰れない。
生きて帰るために、歯を食いしばって、一歩一歩慎重に。
山は登った分だけ、降りなくちゃいけない。
高ければ高いほど、下りる道のりも長く、危険だ。
山の話だけど人生にも言えることだろうな。
山登りをして、そんなことを思った。
どんな山に登るかだけに目が行きがちだけど、
山頂に登りつめた後、
どうやって下りてくるかにも生き様が現れる。
人生は、長く続くのだから。